31話 消滅と改変と情報量
お久しぶりです。久しくしてくれる相手は果たしているのかわかりませんが。ということで最早不定期から一周回って定期更新になったわけですが、もはや終わるが早いか死ぬが早いかという状況な気がしないでもないです。
それはともかく、いよいよ、というかさらに混沌の様相を呈してきたこの小説ですが、話半分にお楽しみください。
「は?」
それは今起こった現象に対して向けられたものではない。突如現れた魔法陣に対し、反射で発せられた一文字の疑問と驚愕。そのたった一文字の間に、あっけなく一つの存在が消し去られたという事実を飲み込むのにまず数秒を要する。そしてさらに数秒の後、ようやく正常に作動し始めた脳に与えられた情報は、後頭部に響く鈍痛と床の冷たさだった。
「っ」
混乱と痛みでふらつく頭を抱えながらその場を飛び退き、いつでも動き出せるように腰をかがめてジョマノを睨む。理解が及ばなければ、相手の実力もわからない。だからこの臨戦態勢は、戦おうという意思ではなく、突如現れた危険に対し本能がもたらした行動だった。
「何すん「こっちの台詞だっ!」お、おう」
「この世界にまだ妖精は存在しねぇって言ってんだろ! 何そんなたやすく紹介してんだ少しはパラドックスとか考えやがれこのポンコツが! 存在が重しになるって説明したばっかだろうが、過去視くらいの干渉ならまだしも過去改変は馬鹿にならねぇんだっての、そらお前が対処するってなら話が別だけどよ、今のお前じゃそれもままならねぇだろ、力がないんだったらせめて頭を働かせろよこの脳足りん! 大体な」
「わかった、わかったからステイ」
「フゥ、フゥ」
何だろう、威嚇する猫みたいだな。
じゃなくて。
「何か頭痛いんですけど」
「あんたがああいうことするから」
「えっと物理的な痛みじゃなくてですね、なんか声が反響してる感じといいますか」
「あー、そういうこと。微弱ながらにパスが繋がってんのか。ってことはこれをこうして……どうだ?」
どうだと言われても、と思ったがなるほど理解した。
どうやらジョマノと思念経由のやりとりや軽い力の受け渡しが出来るようになったようだ。本体の秋原純也と元々繋がっていたものが改変の介入によって再度繋がったがどうのこうのということらしい。なるほどわからん。
パスと合わせてネイリーの件もついでに説明してもらったが、どうやら彼女を消した殺したとかそういう話ではなく、一時的に別時空間に飛ばしただけという話だった。まぁ怒りちらしてた時点である程度察してはいたよね。
「まぁ、そういうことだから。ここからどうする? 未来に戻りたいならあの妖精ごと送り返せるけど」
「あ、出来るんだ」
「さっきまでは怪しかったけど今はパスが繋がってるからね。で、どうするの」
「どうすっかなぁ」
そもそもここに来たのもよくわかってないしこのまま帰ってもいいのかどうか。ん? 帰る、帰るか。そういや時空を超えたりネイリーが現れたり消えたりするもんだからごちゃごちゃしていたが、そもそもここに来たのは遺跡から飛ばされたからで、遺跡に行ったのは日本に帰るためだったわけで。
「もしかして日本に送れたりとかは?」
「んー」
ジョマノが眉間に皺をよせながら空中に複数の魔法陣を展開する。それは徐々に光を増し、目の前が見えなくなるくらいの光量になる、それと同時。電撃音とガラスが割れるような音と共に魔法陣と光が消え去った。
「無理そうね」
「今の行ける雰囲気では?」
「十中八九、本体の仕業でしょうね。まだこの世界でやるべきことがあるってことじゃない?」
「やるべきことねぇ」
心当たりはないが、結局今までも流されて何かしら起こってるからなぁ。自由気ままに異世界生活を送ればそれでいいのだろうか。いや、勝手に問題が起こるってなると俺的には全然よくないわけだけども。
「ちなみに未来に送るのは問題なさそうなのか?」
「そっちは大丈夫そう。過去の改変で仕事は終わりってことかもね。私とパスを繋ぐところまで想定してたのかも知れないけど」
「本体って割と考えて動いてるんだな」
「は? あいつが?」
「あ、はい、なんかごめんさい」
パス越しにも憎悪というか嫌悪が伝わってくる。地味な精神攻撃よりも嫌だなこれ。純粋なダメージならまだしもなんかキモイんだよなこれ。虫が体を這いまわる感じが一番近いかもしれない、実際そんな体験したことないからわからないが。
「じゃあ元の時空に戻せばいいわけ?」
「んー、何か忘れてる気がするけど、まぁわからんし頼みますわ」
「何その口調……まぁ、わかったわ」
彼女が指を鳴らすと、先程とは違って俺の下に魔法陣が浮かび上がる。さっきは世界が違う分複雑な術式みたいなのが必要だったのだろうか。いや、そもそもここがどういう空間かわからないわけだけども。
「あ、そういえば。あんたはそういう存在だから直接的な影響は受けてないだろうけど、間接的なことは流石に対処しきれないと思うから気を付けて」
「え、どういうこと?」
「仮にでも過去……まぁここからすると未来なわけだけどそれは置いといて、過去改変をしたわけだから、元の時空間がどうなってるのかはわからないでしょう」
「でしょうと言われても」
いや、確かに当然と言えば当然だけれども。
「そこら辺本体がどうにかしてたりしませんかね」
「しないでしょうね。世界崩壊とかに繋がるなら何らかしかのフォローは入るでしょうけど。ま、正直私には預かり知らないことだから。それじゃあ、ね」
「ちょ」
っと待て、と発する頃には辺りは遺跡のそれへと変わっていた。というか遺跡はあるんだな、整合性のためかそれとも今回の改変とは関係ないのか。それとも本体が作ったから改変の影響を受けてないという説もある。考えてもわからんな、これ。
問題を一つ解決しようとする度に複数の問題を持って帰ってきている気がするが大丈夫なんだろうかこれ。いや大丈夫もくそもないんだけど。過ごした時間に比べて情報量が多いから混乱してるな……。
「死んだかと思った」
「あ、ネイリー」
「何その顔。まさか忘れてたわけじゃないでしょうね」
「正解」
いやだってしょうがないじゃん。こちらとら情報整理で精一杯なわけで。そりゃね? 本当に消えてれば焦っただろうけど俺は別時空間に飛ばされてただけって知ってたし。頭の奥底に封印されるのも致し方ない痛い痛い髪を引っ張るな。
「あ、そうだ」
「何よ」
「過去改変による変化って妖精側からしてどうなん?」
「えぇ……そんな当然のように聞かれても」
「でもあの時間軸に来たってことはそこら辺の対応もあることにはあるんじゃないのか?」
「あれは特例みたいなものだから。そもそも改変が可能な存在自体少ないし」
「あー」
別時間に干渉できても改変が容易なわけじゃないんだっけか。そもそも過去を視るだけで干渉として扱われてる上、ネイリーの反応的に特殊な事例っぽかったし。冷静に考えればそう簡単にタイムスリップの類が出来てたまるかって話だよな。
こんな単純な話が冷静に考えないと出てこない俺is何。巻き込まれたことが巻き込まれたことだし正直仕方がないとは思うけど。なお正確に言うと発端は自分の模様。もうわけがわからん。
「とはいえ妖精は一応この世界の存在じゃないわけだろ?」
「そうなのよね。でもこの世界に住み着く妖精もいるから、個体によって影響の差があったりはしそうだけど」
「推測なんだな」
「そりゃそうよ」
でも話によると妖精は本体とジョマノに作られた存在だってことだし、時空間の移動や改変が出来るやつらが生み出した存在が、その対処法について説明されてない何てことがあるのか?
「正直帰って確認してみないとわからないわね」
「確かに」
大元には伝えられていても全員が知っているわけではないのかも知れない。よくよく考えてみれば妖精のことについてあんまり知っていることがない。調べたことがあるわけでもなければ詳しく聞いたわけでもないし当然なんだけれども。
「じゃあ帰ってもらって」
「こんな状況じゃそういうわけにもいかないでしょ」
「だよなぁ」
一応監視だかなんだかが目的って話だし。
「じゃあとりあえず遺跡から出てみますか」
「正直なにが起こったのか説明してほしいところなんだけど」
「あー、かくかくしかじか」
「だからそれわからないんだって」
「じゃあまるまるくるくる?」
「そういう話じゃない……っていうかかくかくしかじかってそういう物なの?」
「いや?」
ちなみに元は斯く斯く然々なのでそれっぽいけど四角の何かが関係しているわけではないらしい。
「ああ、そういうこと」
「ちょっと待て今どこに何を理解する要素があった?」
「かくかくしかじかについてかしら」
「何そのタイムラグ」
ああ、いやわかったぞ。これジョマノのパスの影響だ。それがネイリーとも干渉してるっぽいな。
「つまりこれからはかくかくしかじかで通じる……?」
「そもそも通じなくても使ってるし、というかそれでいいのかあんたは」
だから伝わる奴がいるのが悪い。
「状況説明も済んだわけだし、外に出ますかね」
「やっぱり出るんだ」
「そりゃ出ないと始まらないし。ん、いや?」
そういえば全能眼があるから外の状況を確認するくらいは出来るのか。
「どうかしたの?」
「別に、本体を少し憎く思っただけ」
あんにゃろう、ここから外を視るのにロックかけてやがる。いや、ここがそういう場所なのか? でもここから過去は視えたわけだし、外を視るだけの方が難易度が高いとは思えない。何よりどっきり箱を開くのを見守られているかのようなむずがゆさがある。
なぁ、本体そんないたずらしてる暇あるなら問題全部解決してくんない? というか本当に動けない状態なのか本体。なんか自分のことなのに信用できなくなってきたぞ。
「わけわかんないけど、出るの? 出ないの?」
「出るしかないだろうなぁ」
正直スキル変にスキル使おうとして出来なかったもんだから、最初より外に出たくない気持ちが大きい。何かあるかもしれない、が何かありますけどなんでしょうね? に変わった状態だもの。
「よし」
ただ出ないわけにもいかない。ちなみに転移の類も当然のようにロックされていた。ここから出れば使えるだろうし何かあったらそれに賭けるしかない。
意を決して、帰ってきたときには既に閉じていた門に手をかける。
「そこまで意地悪くいてくれるなよ本体!」
合言葉無しでも確かな感触と共に門は開いていく。
そして。
押し寄せてきた霧によって、視界は白く染められるのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。そんな人が存在するか疑問は尽きないのですが。ということで、何かない限りはまた来年の12月31日に、ですね。読んでる人が居るなら頑張って書くのもありですが、最早私の制約のためだけに存在しているような気もするので……。




