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マイペース異世界災難記(仮)  作者: 紺(空想野郎)
ギルドと本と古き記憶
38/41

32話 揺蕩い流され

最早大掃除の一つと化してきました。

中学生の私は何を残してくれやがったんですかね。

 流れ込む霧に目を細める。

 いや、違う。


「何だ、これ……」


 空気の流れや冷たさ、湿度の高さ。この場にはそれらの一切が感じられない。

 鼻に意識を集中させるが、全く持っての無臭だ。何かの煙というわけでもないのだろう。


「いや、待てよ」


 この霧のようなものが無臭なのは問題ない。しかし、この場全ての臭いがないというのは異常だ。ここは古びた遺跡のような場所。埃であったり土であったり、そういう臭いがあってもおかしくないはずなのに。

 そう考えている間に、部屋は霧で満たされてしまい、何も見えなくなる。眼に入るのは白い何かだけ。目の前で手を往復させても光景は変わらない。頼みの綱のスキルも応答がない。これはまずったかもしれないな……。


「──」


 ネイリー、居るか。

 そう言ったつもりだった。しかし、自分の声も聞こえず、喉が振動した感覚もない。

 それどころか、立っている感覚も、心臓の鼓動も、体の全ての感覚が麻痺しているかのようだ。故に、焦りも緊張も自分で感じることができない。意識だけが世界に浮遊しているような、そんな感覚。原因はこの霧のような何かにあるとしか考えられないが、スキルも使えない以上対処法がない。

 意識は冴えている。感覚が消えた副作用か、こんな状況だというのに冷静だ。頭が回るのはありがたいが、だからといって解決策が出てくるわけでもない。


(さて、どうするか)


 呟いてみるが、やはり何も感じないし何か思いつくこともない。スキルは相変わらず応答がなく、ステータスを見ることも出来ない。お手上げだ。今まで化け物じみた成長をしてきたというのに、こうも容易く詰んでしまうとは。

 いや諦めている場合じゃないだろう。このまま感覚を失って何十年何百年と過ごすことになると考えたらぞっとしない……いや、そんな感覚すら覚えられないが、そうなったら正気ではいられないに違いない。一番良くて考えるのを止めた状態になることだ。そんなのはどっちも勘弁願いたい。


(本体ー! どうにかしろーっ!)


 果たして叫べているのか。感覚だけじゃなく、体そのものを失ったのではと思ってしまうが、そんな不吉な考えはよそう。そういうのはフラグになりかねん。そして要らないフラグは大体回収するんだから。

 とはいえどうするかねぇ。体があったとしても感覚がなければまともに動かせないし、スキルも使えない。出来るのは実質考えることだけとなると状況を打破する手段はないわけで。

 としたら取れるのは待つの一択だ。そもそも本体はこうなることを予測しているはずだし、どうにもならんということはない、はず。もしかして捨て駒にされたとかありますかね。いやいや、でもジョマノが言うにはまだこの世界でやることがあるという話だし。

 しかし、過去に行った時みたいにその場に居ればいい、みたいな話だったら?

 あり得る。というか本体が何考えてるか俺にはわからないしなぁ。もはや恐怖すら感じられない身ではそうでないことを祈るばかりだが。というか五感がなくなっても感情が消えるわけじゃないし、恐怖とか不安は感じてもおかしくないはずだが。この霧にそういう効果があるのか? 

 もしかしたら、五感を失うということをファンタジーに考えすぎているのかもしれない。何かを感じているのは結局脳なわけで、そこに異常をきたしているとしたら。

 下手すると思考すら不可能になる恐れもあるな。それはヤバい、がヤバいという判断しか出来ない。さっきからないないづくしでどうすればいいのやら。


 そうだ、ジョマノとのパスがあるじゃないか。時間を移動してるわけだし、繋がるかはわからんが連絡くらいは取れるかもしれない。

 意識を集中させる。頭の中で、自分以外との繋がりを探るように。

 しかしどうも感覚がないせいか上手くいかない。パスに問題があるんじゃなくて、そもそもそこまでたどり着くことが出来ていないようだ。ただ、今はこれしか宛がない。

 どれだけ時間をかけてもいい。というか当然時間感覚なんてものは狂ってるし、何かやることがあった方が気がまぎれる。駄目で元々、どうにかなれば──


「……」


 捕まえた。恐らくジョマノのパスではないが、自分とは違う何かに繋がっている『糸』だ。そこに意識を流し込むようにすれば……。


 目を開く。埃がたまった、倉庫のような場所だ。


『ここは?』


 機械のような、反響した声が出る。明らかに自分の声ではない。というか、感覚は戻ったもののどこかおかしい。というかどういう状況だこれ。

 誰かと連絡が取れれば、と思ったんだが……純粋に外に出れたわけじゃないみたいだしな。

 とりあえず自分の体を見渡してみる。それは、見るからに人間のそれとは異なっていた。


「これ、見覚えが……あぁ、そっか」


 ソウルマリオネットドール、だったか。そういえば詳しく聞いた覚えがないが、響きからして魂で操る人形みたいなもんか? だから俺の魂がこの中に入って動かせている、と。

 何で?

 いや、この人形がそういうものだとして何で俺との繋がりがあるんだ? そりゃ何も出来ないよかありがたいが、魂だけここに飛んでるんだとしたら結局事態は変わってないだろうしなぁ。


『あ』


 あんにゃろう、さては本体の仕業だな? そうじゃくともこうなることは織り込み済みだろう。何か任せるなら事前に情報が欲しいところだがまぁいい。これが想定内というのであれば、状況を打破する手段が何かあるはずだ。

 何にせよ、ここから出ないことにゃ始まらないか。

 とはいえなぁ、この体は魔道具、恐らくここに収納されてたはず。それが勝手に動きだしたとなれば警戒されかねないし、魂が関わってるかもしれないってことは破壊されたらまずいだろう。通常の体以上のスペックは出ないだろうし……。

 いや、そういえば俺が破壊した時は透明になってたんだっけか。しかもそこそこ高性能の。それが標準装備機能だとすれば、何とかなるかもだが……。


『よいしょ』


 手を見てみる。透明ですね。割とどうにかなるもんだなぁ。それとも意識まで化け物性能になってるのか。いや、ソウルうんたらだし魂スペックが高いんだろう。なんだそれは感があるが。

 ま、それは置いといて、透明になったにせよ壁がすり抜けられるわけではなさそうだし、出る時は気を付けなきゃいけないな。扉を若干開けて、隙間から外の様子をっと。


『……誰も居ないか』


 埃もたまってるし、忘れ去られた場所なのかもしれない。その割には接続時に声が聞こえた気がするが、気がするだけだし何ともだな。もしかしたら見張り番が居なくなったタイミングという可能性もあるし、とっとと出てしまおう。

 倉庫を飛び出て扉を閉める。念のため周りを見渡すが、やはり人気はない。

 それは良かったとしても、一体ここは何処なんだろうな。石造りの地下に水路、見る限りでは下水道みたいな場所だが、この世界にそんなものがあるのか知らないし。下水道だとして何でそんなところにこいつが置かれてたかという話もある。そもそも本体がやったことなら辻褄もクソもないしな。

 どのみち動いてみるしかない、か。


◇◆◇


 どれくらい経ったかはわからないが、しばらく歩き回って上に繋がる梯子を見つけ、外に出ることが出来た。様子を見るに、ここはサムトル王国のようだ。過去改変とか色々あったが、俺が知っている光景からかけ離れた部分はない。

 まぁ住人というわけでもないからある程度変わっててもわからないが、滅びていたり全く別の国になっていたりということはなさそうだ。

 と、なると俺が知っている人、キラさんや他の地球人が居る可能性もなくはない。そもそも過去が変わってないってこともあり得るし。そこら辺に関してはほとんど情報ないもんなぁ。


 まぁ行動してみれば何が変わったか変わってないかはわかるはず。この国トップクラスであろうキラさんが気づかない性能という話だし、城に忍び込んでも大丈夫だろう。というか下手に人が通る場所にいる方がぶつかったりして危険かもしれないし。ぶつかっただけで壊れたり、ってことはないだろうけども、騒ぎになっても怖いしな。

 というか城内の方が知ってること多いし、変化とかを探すならそっちの方が手っ取り早い。場合によっては知り合いに声をかける手もある。賭けにはなると思うが。


 ということで城まで来たわけだが、門、閉まってますねぇ。

 これは何処からかよじ登るしかないか? それとも誰か来て開くのを待つか。無難なのは後者ではあるが、時間がどれくらいかかるかもわからん。まぁ、登りやすくなってるはずもないし、時間がかかるのは前者も同じだが。というか何なら後者の方が確実性は高いだろう。

 さて、どうするか。スキルが使えれば手っ取り早いんだけど、流石にこの体じゃ厳しそうだ。

 魔法とかも使えないだろうし。

 いや、魔力は通ってるっぽいしいけるか?

 指先に魔力を集めて……


 ぼんっ!


 小さく炎がはぜる。出来たは出来たが、考え無しにやりすぎた。


「そこに誰か居るのか!」


 門の前で悩んでいたということは近くに門番が居るということで。

 何もない所に火が上がったとしたら?


 門番が槍を構える。見えてないだろうに切っ先がやけに正確だ。


 いやいや。指先にちっさい火が出ただけですよ? 日中なら見逃すでしょうに。

 全く、優秀な門番だなぁ! 俺は逃げるぞ!

読んでいただきありがとうございました。

何を考えて書いていたかも、この先の行方もわかりませんが、読んでいる方が居るならお付き合いお願いします。

いや、やっぱりこんな船降りた方がいいですよ。

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