プロローグ
頭を空っぽにしてさらっと読めるお話を目指してます!
目の前に、神様がいる。
――どうやら召喚されたらしい。
「ようこそ勇者よ。君には異世界を救ってもらう」
「は?」
いや待て待て待て。
ついさっきまで俺は、普通にキッチンにいたんだが?
玉ねぎ刻んで、味噌汁作って、ついでに昨日の残りのカレー温めて――
「聞いてるか?」
「聞いてますけど、理解はしてないです」
なんでだよ。
なんで料理してたら異世界なんだよ。
せめて包丁持ったまま転生させろよ。なんで手ぶらなんだよ。
「安心しろ。君の適性はすでに見えている」
「いや不安しかないんですけど」
神様はニコニコしている。嫌な予感しかしない。
「君は前世で、非常に優れた才能を発揮していた」
「え、マジで?料理のこと?確かに自炊はしてたけど」
「うむ。ゆえに――」
神様が指を鳴らした。
空間が光る。
そして、俺の目の前に現れたのは――
「……スプーン?」
「うむ。君の最強武器だ」
「は?」
「スプーンだ」
「いや聞こえてるわ!!!」
なんでだよ!!!
「待って待って、料理ならさ、包丁とかあるじゃん!?フライパンとか!なんでスプーン!?一番戦闘向きじゃないやつじゃん!!」
「いや、スプーンだ」
「押し通すな!!!」
神様は満足そうに頷いた。
こいつ絶対ミスってる。
「では、健闘を祈る」
「待てや!!!!」
俺の叫びも虚しく、視界が白く染まった。
そして。
俺は、スプーンを握ったまま異世界に立っていた。
「……終わった」
――俺の勇者人生、始まる前から終わってないか?




