表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫プレイネタ戦艦で殺伐宇宙世界来てしまったんですが!!??  作者: 御蔭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/55

第55話 接触

 

 港に立ち寄ったのは、燃料補給のためだった。積み込み作業をシャルロッテに任せて、ケイトが管理棟の窓口で手続きをしていた時だった。


 隣に、人が立った。


 気配があった。ただ、声をかけてくるまで少し間があった。急かさない間だった。


「プリンセスお護り隊の艦長さんですよね」


 振り返ると、30代くらいの男が立っていた。地味な格好。目立たない顔。ただ、立ち方が妙に落ち着いている。港の喧騒の中で、一人だけ別の空気を纏っていた。


「そうだが」


 改めて人から言われると、激烈にダセェな


「少しお時間をいただけますか。取引の話があります」


 笑顔だった。感じのいい笑顔。ただ、目だけが笑っていなかった。


「聞くだけ聞くよ」


「ありがとうございます」


 男は静かに言った。


「オーブをお持ちですよね。それを返していただけると、旅団の皆さんの安全を保証できます。シルバーアッシュとして、正式に」


 シルバーアッシュ、という名前を、男は隠さなかった。


「考える時間をくれ」


「もちろんです」


 男は名刺を差し出した。


「3日後にまたここに来ます。その時にご返答いただければ」


 受け取ると、名前だけが書いてあった。所属の記載はない。


 管理棟を出てから、旅団に繋いだ。


「シルバーアッシュのエージェントが接触してきた。オーブを返せば旅団の安全を保証すると。3日後に返答を求めてる」


 しばらく、誰も何も言わなかった。


「殴りに行くか」


 ガルドが言った。

 こういう時に、脳筋バカを存分に発揮してくれる。


「交渉役を出してきた」


リーネが端末を叩きながら返す。


「今すぐ力で来る気はない。殴ったら逆に手札を晒すだけよ」


「ヴェルナーはどう見る」


「組織の本気度を測っている可能性があります」


 ヴェルナーが答えた。


「交渉を持ちかけてくるということは、力だけでは解決できない事情があるのかもしれない。あるいは——こちらの出方を見ている」


「なぜそこまで返してほしいのか、って話ね」


 リーネが言った。


「エネルギー増幅装置なら、別のルートで手に入れればいい。わざわざ交渉してくるのは、変」


「そうだな」


 ケイトは名刺に目を落とした。名前しか書かれていない紙切れ。


「3日、時間がある。その間に調べる。リーネ、シルバーアッシュの内部通信を傍受できるか」


「試してみる。保証はできないけどね」


「頼む」


 * * *


 2日後の夜、リーネから通信が入った。


「引っかかった」


 声のトーンが、いつもと違った。今回は、違う種類の重さだった。


「シルバーアッシュの内部通信か」


「暗号化されてたけど、軍にいた頃に使ってた解析ツールが使えた。完全じゃないけど、断片的に読めた」


 リーネが少し間を置いた。


「ケイト。これ、全員に共有した方がいい」


「繋いでくれ」


 旅団の通信が繋がった。リーネが解析した内容を読み上げ始める。声が平坦だった。感情を抑えているのが、通信越しでも伝わってくる。


「シルバーアッシュの内部記録に、実験の記録がある。6ヶ月前、ゼクス外縁部の無人星系でオーブを使った実験を行ったっていう記録。結果の記述は——対象星系のエネルギー吸収を確認。恒星の冷却速度、想定値の1.3倍。惑星環境への影響、完全」


 誰も、何も言わなかった。


「完全、というのは」


 ヴェルナーが静かに聞いた。


「全滅、ということだと思う」


 リーネが答える。


「無人星系だから被害者はいない。ただ、実験は成功している。3個揃えれば、有人星系でも同じことができる」


 ガルドが黙っていた。珍しいことだった。


「星ごと、死滅させられる、ってことか」


「そういうことだと思う」


 しばらく、誰も何も言わなかった。


 ガルドが最初に口を開いた。


「……政府を脅す道具じゃないな、これ」


「本当に使う気がある」


 リーネが答える。


「脅しだけなら実験まではしない。成功を確認してから交渉に来た。つまり——」


「つまり、渡したら使われる可能性がある」


 ヴェルナーが静かに言った。


「旅団の安全を保証する、という言葉の意味も変わってくる」


「保証の意味がわかった」


 ケイトは言った。


「俺たちを生かしておく代わりに、オーブを使って星系を一つ潰す。それで政府が従う。従った政府の下で、俺たちは生かされる」


「……最悪の保証ね」


 リーネが端末を閉じた。


「渡す気はない」


 ケイトは続けた。


「ただ、どう動くかはまだ決まってない。3日後の返答は保留のままにする。向こうが交渉してくるなら、こちらも交渉で時間を稼ぐ」


「その間に」


 ガルドが促す。


「2個目のオーブの情報を集めるぞ。向こうが持ってるなら、俺たちが待つ理由はない」


リーネが端末を開き直した。


「仕事が増えたわね」


「そうだな」


 通信を切って、ブリッジに静寂が戻った。


 コンソールの横でオーブが淡く光っていた。変わらない光だった。こいつが何をするものか、今はわかっている。ただ光り続けている。何も語らない。


 星系を一つ潰せる。実験済みだ。政府を脅すための道具として、すでに完成している。


 ケイトはしばらくオーブを見ていた。手に取る気にはなれず、そこに置いたままにした。


ーー世界の半分くれねぇかな…なんて、邪な考えは宇宙の深淵に溶けていった。


 端末に、次の輸送依頼の通知が入っていた。マルダ方面、精密機器。いつも通りの仕事。明日の朝、出発にする。


「面倒なことになった」


 独り言だった。いつもより少し重かった。追われるのは今に始まった話じゃない、と前に言った。ただ、追われる理由がこういうものだとは思っていなかった。


 稼ぎのために動いてきた。生き延びるために動いてきた。それは変わらない。ただ、オーブを手放さないということは、その先にあるものを引き受ける、ということでもある。


 まあ、それでいい。


 今は、飛んでいるだけでいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ