第九〇話 面倒ごと
数日後、、、
砂を巻き上げて止まったのは王都からの伝令馬だった。
騎士が一人、急いで降りる。
「アレン殿!」
息が少し上がっている。
だが礼は崩さない。
「王都より正式な招待状です!」
差し出された封書。
厚い紙。
王家の紋章入り。
レオンが横から見る。
「今度は何だ」
アレンが封を切る。
中の文面を読み、少しだけ眉が動く。
ユウが覗き込む。
「面倒そう?」
「……王都だ」
「行かない」
即答だった。
「最後まで読め」
アレンは短く息を吐く。
「復興視察と騎士団再編成。ついでに――」
一拍置く。
「お前とレオンを指南役として招待だそうだ」
沈黙。
ユウが紙を見る。
「俺も?」
「名指しだ」
「なんで」
レオンが横から淡々と言う。
「壊した本人だからだろ」
それは否定できない。
かつて王都はユウの戦闘で大半が消えた。
城壁も街区も広範囲で崩れた。
今、その跡地は復興中だ。
新しい石壁。
再建された通り。
まだ工事途中だが、人は戻り始めている。
伝令騎士が続ける。
「陛下は、現在の騎士団では次に備えられないと」
「次?」
「教団壊滅後、周辺国の動きも不穏です」
レオンが腕を組む。
「まあ妥当だな」
ユウはまだ納得していない。
「俺、教える側向いてない」
「壊す側だな」
「そう」
アレンが紙をたたむ。
「だから呼ばれてる」
伝令騎士が少し困った顔になる。
「実際、騎士団内でも……昨夜の黒い竜の件まで広まっておりまして」
ユウが止まる。
「もう王都まで行ってるのか」
「かなり」
「早いな」
「黒い竜百体、氷の塔、白い閃光、と」
レオンが無言になる。
盛られている。
かなり盛られている。
アレンが少しだけ遠い目をした。
「誰が百体にした」
「百二十万より少ないから誤差」
「基準が狂ってる」
伝令騎士は真顔で続ける。
「ですので、ぜひ」
風が少し吹く。
礼拝堂跡の石片が転がる。
アレンは二人を見る。
「行くか」
レオンは即答した。
「王都の復興は見ておく」
ユウは数秒考える。
「……飯うまい?」
伝令騎士が即答する。
「かなり」
「行く」
判断が早かった。
アレンが少し笑う。
「決まりだな」
遠くで職員たちがざわつく。
王都。
壊れた都。
そこが今、立ち直りつつある。
そしてその中心でまた新しい話が始まろうとしていた。




