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『Echoes of Logos ― 夢幻令嬢、迷宮に堕つ。―』  作者: ちょいシン


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第48話:火力信者、剣を構えてログインす。

五人で《Echoes of Logos》をプレイすることにした面々。これは単なるゲームではなく、精神鍛錬と武術のイメージトレーニングの一環。ログイン先で“例の火力信者”とマッチングした真観。果たしてゲーム内での再会が、新たな縁を呼び込むのか――。

「やれやれ……まさか、俺がまたこの世界に戻ってくるとはな」


夕暮れの空が茜に染まりゆく中、剣持次郎――通称ケンジは、静かにログインゲートの前に立っていた。


現実世界では数ヶ月ぶりの起動だった。

《Echoes of Logos》の最新アップデートを確認し、躊躇いがちにログインを選択したのは、単なる気まぐれだったはずだった。


……だが、気まぐれにしては理由がある。

それも、現実世界の――師匠からのメッセージが決定打だった。


「ケンジどの、そろそろ精神修行の一環として再び《Logos》の火力に頼るのは如何かな?」


そんな口調のメッセージが来たのだ。しかも、添えられていたのは三人の女子高生キャラクターのスクリーンショット。それが強烈だった。


「くっそ……やっぱ、ちょっとでも期待しちまった俺がバカだった」


苦笑しつつも、指は確かに“ログイン”のボタンを押していた。



――ログイン完了。


ケンジの意識がデジタルの深層へと没入し、彼の視界はかつて幾度も戦い抜いた草原へと変わっていた。


「おっ……」


見慣れた景色。変わらぬ音楽。HUDの表示もそのまま。

Lv62の火力信者ケンジ、装備は相変わらず重火器と炎属性の両手剣。火力に全振りした攻撃バカ。


そこへ、黒いローブ姿の僧――真観が、突然音もなく現れた。


「おお、やはり来たか、ケンジどの。ご機嫌麗しゅう」


「……ご無沙汰っす。相変わらず胡散臭いっすね師匠。」


「ハハハ。それは貴殿も同じではないか。さて……今回は頼みたいことがある」


真観の口調は相変わらずだが、その隣には三人の少女――紗雪、縷々、みよりが現れた。


「はじめまして、ケンジさん! 私、九重紗雪です」


「槍使いの縷々です。あなた、強いんだって?」


「みより。体術やってる。火力馬鹿って聞いてるけど、ほんとなの?」


ケンジは一瞬絶句した。アバターながら本物の女子高生が三人、自分に向かって話しかけている。その事実に、軽く昇天しかける。


「……入る。いや、仲間にする。いや、させてください」


「はやっ!」


紗雪が笑い、縷々が呆れ、みよりは冷めた目で睨む。

だが、それこそが《Logos》という世界の妙だ。現実では得られない繋がりが、ここにはある。


集会所に移動した四人と真観。

《Logos》の中で、作戦会議という名の“精神鍛錬”が始まる。


「……今回は、各自の武術の“意識連携”をこの世界で深めておきたいのだ。現実世界での修行の効率も上がる」


「ん? どういう意味だよそれ」


「つまり、イメトレと連携訓練だよ」


みよりが口を挟む。

「この世界では、感覚の反復と応用が現実にもフィードバックされる。真観さんいわく、“意念即行”……だったっけ?」


「うむ。まさにそう。“意識が動けば、肉体もそれに呼応する”という法則だ。これを《Logos》で習得させたい」


「で、俺の役割は?」


真観は目を細めた。

「棍術、そして投擲術の実践担当。君の“火力”は、その破壊力以上に“集中力”が試される武術に繋がる」


「……火力で、武術?」


「火を制する者は、爆ぜる瞬間の一点にすべてを懸ける。それは投擲と同じだ。火球を投げる感覚で“心”を撃て」


「お、おう……?」


この“坊主めいた武術理論”に戸惑いながらも、ケンジはどこか心地よく感じていた。

現実とリンクする“精神的な導き”を、かつてのゲーム仲間ではなく、“現実の仲間”が与えてくれているのだ。


◆  ◆  ◆


ケンジは後日、現実世界での“稽古”にも参加することになる。


真観いわく、武術体系「手空忽(てくうこつ)」の中で、彼は棍術・投擲術・応用体術の基盤を習得することになる。


縷々とは槍と棍のスパー。

隼人とは刀術と投擲術の連携。

みよりとは体術からの崩し合い。

紗雪とは……精神集中と集中砲火の回避。


ケンジはその全てを、火力の理に置き換えながら理解していく。


「……何か、変わってきたかもな」


彼の言葉に、真観はただうなずく。


「変化とは、燃えるようなものである。だが、それがただの炎で終わるか、灯火となるかは“縁”次第だ」


「その灯火ってのが……今の仲間たちか」


「そうだ。そして、君自身でもある」


ケンジは、ログイン時の自分を思い出す。

女子高生目当てだったと笑い飛ばせるくらいには、今の“縁”に救われているのかもしれない。


◆  ◆  ◆


《Logos》の夜空に火球が打ち上がる。


それはケンジが放った、単なる攻撃ではない――決意の爆発だった。


「……よし、次は炎の中で避ける訓練でもすっか!」


「燃やすな、燃やすな!!」


紗雪が叫び、みよりが飛び蹴り、本日からログインしてる隼人は無言で避け、縷々は笑いながら回復魔法を投げる。


その中心で、ケンジは笑っていた。


“火力信者”という異名が、初めて誇らしく感じた瞬間だった。

棍術と投擲術――真観の望む武の継承者にふさわしい人材として浮上したのは、まさかのケンジ。偶然か、因果か。ゲームの中ですら結ばれる縁に、誰もが少しずつ抗えなくなっていく。

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