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『Echoes of Logos ― 夢幻令嬢、迷宮に堕つ。―』  作者: ちょいシン


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第39話:契約の原点、日本の成り立ちと三種の神器

歴史の闇から妖怪と神の深い関係が紐解かれる。だいだらぼっちによる日本誕生の裏話、天津神=仏法、そして三種の神器の真実―空海と大元帥明王法、モンゴル襲来の奇跡も明かされる。常識を超えた古代の契約に、世界が揺れる。

霧深い庭園に佇む旧家の座敷。五人――真観、紗雪、縷々、みより、隼人――は正座し、畳の冷たさを忘れるほどの息詰まる空気の中、だいだらぼっちを迎えた。


小さな少女がすっと深々と頭を下げ、「お越し下さり誠にありがとうございます」とだけ言う。その静寂を破って、長身の老妖怪・だいだらぼっちが微笑みを浮かべた。


「真観殿以外の方々にも、人と妖怪との古の契約を聞いていただきたく、この縁を設けました。久しく新たな理解者に巡り会えぬゆえ、嬉しく存じます」


みよりが眉を寄せ、「人と妖怪の契約…?」と呟く。



だいだらぼっちが話し始める。


「生命が芽吹いた頃より、我ら妖怪は存在してまいりました。様々な動植物と融合し、やがて知性を帯びる。が、統制のない力は争いを生み、地上は混沌の海と化す」


静かに間を置き、「そして、人が“天からの光”を見いだした。それこそ天津神、すなわち仏法の始まりでございます。これにより我らは、下照る国の神——国津神となり、共に平和と秩序を築いたのです」


──緊張を孕むその口調は、異界の歴史を人間たちに伝える神聖な説法だった。


「信仰こそが人と神(=妖怪)を結びつける絆。神武陛下はそれを天と地をつなぐ橋と見なしました。その証が、『三種の神器』です」


みよりが息を飲んで訊ねる。「それって、まさか…本物の神器が…?」


だいだらぼっちは優しく笑った。


「一つ目――八尺瓊勾玉は、慈悲と繁栄の力を宿す妖怪たちによって変化したもの。二つ目――草薙剣は、八岐大蛇が自ら剣になったもの。悪を悔い改め、神となった証です。三つ目――八咫鏡は、雲中の妖怪(雲外鏡)が本性を映し、人と未来を照らす鏡」


縷々が目を輝かせて言う。「そんな…すごい…!」


だいだらぼっちがくすりと笑う。「一般に知られているのは、人が作ったレプリカ。それは人びとの信仰の象徴に過ぎません」


だいだらぼっちは涼やかに続けた。


「平安を経て、新たな理解者が現れました。それが空海、弘法大師です」


縷々は驚いた顔で叫ぶ。「弘法大師=空海って…同じ人だったの?」


一同がどっと笑いをこらえ、だいだらぼっちは咳払いをして乗り切る。


「空海は遣唐使として唐に渡り、密教を日本へ導入しました。嵯峨天皇もこの話を聞き、仏法を盤石にしようと…。その結果生まれたのが、妖怪たちが心を合わせて化身となる『大元帥明王法』なのです」


隼人が静かに頷く。「モンゴル帝国襲来の際に発動されたと…信じがたいが真実のようですね」


だいだらぼっちは重々しく肯いた。


「ええ。モンゴル帝国の襲来で日本国全体が危機に陥った際、日本中の仏法に帰依する妖怪たちが一時的に合体し、大元帥明王として変貌しました。彼らは敵を退け、再び平和を取り戻したのです」


それを聞いたみよりが顔を輝かせる。「本当に、神風が吹いて勝利したという伝説は本当だったんですね。…!」


だいだらぼっちは優しくうなずいた。「そういうことです。妖怪と人は表裏一体。信仰という絆がありさえすれば、強大な力を共に発揮できるのです」


語りを終えただいだらぼっちは微笑んだ。


「人と神(妖怪)は信仰により支え合う盟約――それがこの国の原型です。この契約を忘れず、大事にしなさい」


真観が静かに言う。「これは古い伝承です。しかし、現代こそが再び妖怪と人、信仰と祈りの関係を築く時代。だいだらぼっち様には、さらに深い知恵をいただきました」


みよりが感想を求める。「真観さん、本当に信じて良いんですね?」


真観は目を閉じ深く頷いた。「ええ。古より受け継がれた約束こそが、我々の道標です」


縷々も横で頷き、「本当に、信じる。この状況、これまでの経緯、信じるしかないよ…」と呟くと、沙雪がそっと微笑んだ。


その時、真観が静かに微笑を深めた。

「先程、だいだらぼっち様を私の家系では妖怪の長である。と言いましたが理由があります」

「一般的に“だいだらぼっち”と呼ばれていますが、本当の名がございます」


大曼荼羅法師だいまんだらほうしと言う名前が本名です」


紗雪、縷々、みより、隼人の四人が同時に声を上げた。

「……大曼荼羅法師……!」


だいだらぼっちは涼しげな笑みを浮かべ

「ホホホ――久しくその名前で呼ばれていないかったので、こそばゆいですな」


微笑むだいだらぼっちを横目に真観はさらに続ける

「お名前から分かるように妖怪の中で一番仏法。――密教を理解し、見識が深い方であるのです」

「ちなみの現在の天皇皇后様もご承知であり、いずれお会いになる期会も在るやもしれません。」


一同、顎が外れんばかり。一瞬の静寂が場を支配する。

「……!」


古代と現代が交差し、妖怪と信仰の源流が明らかに。三種の神器と密教、空海の教えに、大元帥明王法の奇跡まで。一枚の契約書の如き、日本という国の成立に刻まれた信仰の輪郭――全ては“祈り”と“約束”が紡ぐ絆だった。

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