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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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レンレン劇団(ジロモーラ視点)

メーアスの首都は大陸の北東に位置する。


メーアスが北東から中央南部に向けて斜めに伸びる国の形をしているという事もあるが、北東に主要な王家が集まっていたという理由でもある。


つまり、最初は北東の小国が集まって出来た国だったのだ。


後に中央に近い小国もメーアスに吸収されていき、メーアスは斜めに長い国土を持つことになった。


これは世界中の多くの国と接することが出来る為に、商売をするには良い環境となる。


しかし、国土を守る戦いにはあまり向いていないのだ。


上下左右に対して防衛の為の兵を常に配置しておかねばならず、国防費は馬鹿のような額が動く。


自国の兵では足りないから傭兵も使うし、奴隷も常に補充しているからだ。


陰で黒い商人と揶揄される武器と奴隷商人のバーランド王家は、その状況を打開する良い機会と判断したのかもしれない。


何しろ、もしも本当に出来たばかりの小国がガラン皇国を打ち破るような強靭な国ならば、戦には強くても資源も人材も全く足りないだろう。


そんな国がガラン皇国の軍を退けて、反対に領土を奪いでもしたらどうなるか。


物資、人、食料、様々な物が不足してしまうのは必然だろう。


我がメーアスが援助せねば、それだけで瓦解するかもしれない事態になる。


だが、明らかに新たな五大国になる勢いがある。


10年だ。


通常なら絶対に無いと断言出来ることだが、ガラン皇国を打ち破るような国であれば、メーアスが補助をすれば有り得る話となる。


10年で、世界一の大国と言われる国となる。


ならば、その大国の庇護に入るのは中々良い策だろう。


カレディアの暴走かと思ったが、こうなって見れば結果はメーアスにとって良い話になったようだ。


私はそう思って、まだ出来たばかりの弱小国の国王であるレンという若者を見た。


レンは先頭を歩いているバーランド王家の倅の後をゆったりと歩いている。


まだ二十代前半にしか見えない青年だが、大国であるメーアスの代表3人を相手に堂々とするどころか、明らかにこちらを格下として扱っている。


果たして、このレンとかいう青年は大言壮語の馬鹿者なのか。


はたまた…。


私が様々な想像を膨らませていると、先頭を歩いていた一行が立ち止まった。


街の外に出たのだ。


場所は最も人の出入りの少ない北の門である。


こちらは北上して山を越えたら獣人族の国に辿り着くが、通り道の山は雪が降るし、魔物も上位の魔物が出る。


そんなこともあり、基本的に北の門はあまり人の行き来が少ない。


その北の門を出て、レンは我らを振り返った。


我ら、と簡単に言ったが、我々代表や護衛兵以外にも街の住人や他国の商人、冒険者など、大勢の人々が見物に来ている。


ガラン皇国とメーアスは竜騎士という存在を信じない人の方が多い。物語として認識しているから、竜騎士が本当にいるなどと言うと変人扱いが普通である。


だが、今やその物語の中の人物が目の前に現れたのだ。


よく偽者は今までにも現れてきたが、今回のように実際にドラゴンを連れてきた者はいなかった。


民は気楽に祭り気分で、商人は大きな商売の匂いにつられて、冒険者は英雄に憧れて、今この場に来ている。


そんな大勢の人々の視線を一身に受けながら、レンはごく自然な態度で頷いた。


「さて、それでは何かやってみようか。あの山には誰か住んでいるか?」


「上位の魔物が出る山ですので、その魔物を狩る冒険者か、もしくは山の反対側にある獣人族の国を行き来する旅人や行商人がいるかもしれません」


「ふむ、そうか」


レンはよく分からない質問を口にすると、バーランド王家の倅が返答し、その答えにレンはさして残念そうでも無く頷いた。


この大観衆の前で随分と落ち着いている。むしろ、慣れているはずのバーランド王家の倅の方が不安そうな顔を浮かべたくらいだ。


中々、器は大きいらしい。


私がそう考えてレンを観察していると、レンは仕方なく少し離れた平野部を見た。


「あそこら辺は? 何かあるか?」


「いえ、そちらは街道から外れているので特には誰も居ないと思いますが」


レンは返ってきた答えに満足したのか、頷いてからエルフの少女と獣人の男を振り返った。


犬の獣人のように見える男は猫の獣人を背中に背負っていたが、レンの視線を受けて、背中に背負っていた猫の獣人をそっと地面に寝かせた。


レンは犬の獣人の行動を眺めた後で、我々に顔を向けて両手を広げて微笑み、口を開いた。


「さあ、皆にはこれから演武を披露しよう」


レンの声は、怒鳴ったり声を張り上げたりしたようには見えなかったが、不思議とやけに声が通った。


直後、街の住民達から拍手と歓声が響く。


お祭り気分で来ている者達には良い催しだが、私達にとっては理解が出来ない話だ。


案の定、カレディアも不思議そうな顔をしてレンの顔を窺っている。


だが、場の空気はもう出来上がってしまった。演武と聞いて、住民だけじゃなく冒険者や兵士達も興味をそそられている。


私はこちらを見たカレディアに頷いてから腕を組んでレンを見た。


素晴らしい剣舞でも披露して場を盛り上げ、その後で何か別のものを見せる気かもしれない。


一先ずは、その演武とやらを見学するとしよう。


私がそう思っていると、レンがエルフの少女と犬の獣人の男と何か話し合っていた。


そして、レンが我々の方へやってきてエルフの少女へ振り返る。


「それでは、始め!」


良く通るレンの声で合図があり、私の後方では住民達が必死に演武を見ようと押し合う声が聞こえてきた。


見辛いだろう。何となく私がそう思った直後、エルフの少女が一言口を開いて何か呟き、空へ舞い上がった。


「…馬鹿な、無詠唱の飛翔魔術だと…?」


私がそう口にするや、今度はエルフの少女の周囲に青白い大きな光の球が幾つも出現した。


2メートルはありそうな、明らかに少女よりも大きな光の球だ。


その青白い光に見惚れて言葉も出せないでいると、エルフの少女が地面の上で刀を持って屈伸運動をしている獣人の男へ向かって光の球を一つ落とした。


次の瞬間、眼前、約100メートルほどの場所に雷が落ちた。


そうとしか思えない衝撃だった。


耳が完全に聞こえなくなるような轟音が鳴り響き、その閃光によって視界は白に染まる。


一体、何が起きたのだ。


その時の私には何が何だか分からなかった。



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