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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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メーアスの協力

ロモントが項垂れる中、フィンクルは俺の商談の有用性に気が付き、感嘆の声を洩らした。


「革新的だ! 飛翔魔術を使える者が多く必要という前提条件はあるが…こんなやり方があるとは…! 流石はレン国王陛下! 誰も思い浮かばなかった一大事業ですよ!」


「…ああ、どうも」


俺は興奮するフィンクルにそう返事をした。


いや、地球のシステム丸パクリだからな。


むしろ、聞いただけで理解してしまったフィンクルが凄いのだが。


こいつをメーアスの代表にしようと考えていたが、こいつがメーアスを率いると危険な気がする。


「…まぁいいか。構想としては、まずは各国の首都に支店の設置。そして、奴隷の中から魔力の高い者を選んで俺の城で研修を受けてもらい、魔力の無い者は各支店で働く」


そして、世界で唯一の空輸を成功させたなら、我が国がどの国よりも最新の情報を得ることが出来るだろう。


俺がフィンクルに展望を話しながらそんなことを思っていると、フィンクルが大きく頷いた。


「飛翔魔術で素早く荷や人を運び、国際同盟としての情報交換も密に出来ますし、同盟相手に敵対する者が現れても素早く援軍を送れますね…そして、情報の全ては一度必ず陛下の元に集まる」


と、フィンクルはあっさり俺の思惑を見透かしてしまった。


「…そうだな。俺もそう思っていたよ」


俺が不貞腐れながらそう口にすると、フィンクルは目を瞬かせて俺の反応を見た。


「陛下のお話に比べると規模はかなり小さいですが、世界屈指の行商人による物流を持つ我が国です。これまではその情報収集力は世界一であったと自負しています…身内に歪められてしまいましたが」


フィンクルはそう言って自嘲気味に笑った。


「なるほど。それなら俺の考えも見透かされるか。もし空輸が出来たら各支店を結ぶ経路での複雑な情報収集が可能だから、今までとは比べものにならない情報精度になるぞ。やるか?」


俺は観念して、フィンクルを単刀直入に勧誘した。


ロモント相手の方が楽にコントロール出来た筈だから、やはり上に据える相手を間違えたようだ。


俺が困ったように笑いながら片手を差し出すと、フィンクルは力強く俺の手を握って頷いた。


「はい! この話に乗らない商人はおりませんよ! 見ていてください。此度の損など、一瞬で取り戻して見せます!」


「だ、そうだ。良いか、ロモント?」


俺がフィンクルと握手を交わした状態でロモントに顔を向けると、ロモントは力無く頷いた。


「…我が王家が御取潰しになるどころか、間違い無くこれまでよりも栄えるだろうお話です。文句などつけられませんよ。陛下のお優しい心遣いに感謝致します」


ロモントはそう言って、細い息を吐いた。


やはり、フィンクルの兄2人が心配で仕方ないようだな。


「安心しろ。逆らわなければ殺しはしない。出来るならばお前の最後の力で投獄して来い」


俺がそう言うと、ロモントは奥歯を噛み締めて、項垂れるように頷いた。


「話は聞いていたな…急ぎ少数の精鋭を率いてガラン皇国に行き、息子達を拘束して来なさい。あちらで活動する行商人達に奴隷達を買い戻すように伝えて、渋るだろうから犯罪奴隷以外の奴隷は倍の値段で買い戻すと」


ロモントがそう指示を出すと、ロモントの護衛をしていた2人の女は直ぐに動き出した。


おい、2人とも行くのかよ。


当主交代を確信したからか?


俺が足早に姿を消した2人の去っていった方向を見ていると、ロモントが力無く笑った。


「あの2人は我が王家に仕えてきた二つの家の娘です。私に仕えていたわけでは無いので、帰ってきた時にはフィンクルに仕えることになるでしょう」


そう言って、ロモントは深い溜め息を吐いた。


「殿。そう言えば、拙者、お願いしたいことが…」


その時、話がまとまったと判断したのかサイノスがそう言って俺に話し掛けてきた。


「なんだ?」


サイノスからのお願いなど中々珍しいことである。


俺は興味を引かれてサイノスに聞き返した。


サイノスは恐縮した様子で床に片膝をつけて跪くと、俺に頭を下げて口を開いた。


「あの、先程戦った猫獣人の少女を拙者にくだされ!」


「…は?」


サイノスの台詞に、俺は思わず固まってしまった。


すると、サイノスが不安そうに尻尾を揺らしながら俺を仰ぎ見る。


「い、いえ…今修行をつけているダンを放置するわけでは無く、2人を同時に訓練致しますので…あの少女を弟子にですね…」


サイノスは消え入りそうな声音になりながらそんなことを言ってきた。


「弟子に? それは構わんが、そんなに気に入ったか?」


「殿が仰っていた英雄になれるかもしれない人材かと…」


サイノスは俺の質問にそう答えて頭を下げた。


英雄?


ああ、この世界の人間が強くなるか試すというやつか。


ミスリル装備とマジックアイテムで固めているとはいえ、ダンが中々強くなっているようだし、もう1人くらい並行作業で育成しても良いか。


「分かった。とりあえず連れて帰るか」


「はい!」


俺が了承すると、サイノスが喜んで返事をした。


俺はサイノスの返事を聞いて頷き、フィンクルを見た。


「さあ、時間が勝負だ。フィンクル。今からの数日から数週間で、メーアスを牽引する存在になれるかが決まる。ガラン皇国がどれだけ集めたら動くつもりかは知らんが、あまり時間は無いだろう」


「分かってます。直ぐに動きますよ」


そう言うと、フィンクルはロモントの方に向かって歩いた。


「父上、当主の証をお願い致します」


フィンクルがそう言うと、ロモントは浅く頷いてフィンクルの右手の手首を握った。


「インヘラタンス・コントラクト」


ロモントがそう言うと、フィンクルの手首が眩い青い光を発した。


そして、光が収束した頃、フィンクルがゆっくりと服の裾を捲りあげた。


そこには青い文字と記号で出来た腕輪のようなものがあった。


腕輪はまるで吸い付くようにフィンクルの手首に隙間無く装着されているようだ。


「王位継承、ありがとうございました」


フィンクルは、そう言ってロモントに頭を下げて、俺を振り返った。


「さあ、行きますよ! 他の王家にも話を通してきます! 陛下にも協力してもらいますよ!」


フィンクルはそう言って部屋を出て行った。


「おいおい、やる気になるのはいいが…」


俺が気負いの見えるフィンクルに苦言を呈そうかと口を開いたが、すぐにフィンクルは走って行ってしまった。


俺が苦笑しつつサイノスに追いかけるように言おうとすると、部屋に残ったロモントが静かに口を開いた。


「…レン国王陛下。いえ、竜騎士様…息子をお願い致します」


ロモントは、誰がとは言わずに、息子を、と言った。


俺はそのことに気が付いたが、特に言及せずに口の端を上げて頷いた。


「任せておけ」



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