驚くロモント
本日3話目です!
俺が今度の、夕食はカレーよ。みたいなノリで次回の戦争について語ると、ロモントは懐疑的な目を俺に向けた。
「陛下は、レンブラント王国のビリアーズ伯爵と協力して国境常駐軍と傭兵団の合わせて5万の兵を率いてガラン皇国を打ち破った、と聞いておりますが…それに、ガラン皇国軍に情報を流し、軍が通るルートを限定させる策士ぶりという話も…」
なんだ、その情報は。それは情報じゃなくて噂だろうが。
「誰からの情報だ?」
俺がそう聞くと、ロモントはフィンクルを見た。
「…フィンクルからの情報ですが」
「な…お、俺の情報…? そんな馬鹿な!」
ロモントの台詞に、フィンクルはソファーから思わず立ち上がって怒鳴った。
「俺は、自らの意見や考察も書きはしましたが…きちんとレン国王陛下から聞いたその情報も書いていました!」
フィンクルはそう口にして、ハタと何かに気がついたような顔になってロモントを見る。
「…その情報は、どのルートから?」
フィンクルがそう聞くと、ロモントは苦虫を噛み潰したような顔で口を開いた。
「ガラン皇国を抜けるルートだ」
「…長兄が情報を…いや、違う」
ロモントの言葉を聞いたフィンクルは険しい表情で自らの顎を摩り視線を泳がせた。
「長兄はガラン皇国に掛かりきりのはずだ。皇国皇と直接面会が出来る立場なのだから、エインヘリアルから来た行商人と会うのは拙い。ならば、次兄が…」
フィンクルはソファーに座り込むと、一人で考えをまとめるように呟き始めた。
俺はそれを横目に見てから、ロモントに対して口を開く。
「兄二人がガラン皇国に擦り寄っているならば、フィンクルがどう動いても無駄だな。まあ、ガラン皇国の皇都とやらに行って、上空から城よりデカい岩でも降らせば戦争どころじゃ無くなるだろうが…一般市民も大量に死ぬからな」
「い、岩を降らす…? な、何の話をしているのですか?」
俺の言葉にロモントは引き攣った顔でそう聞いてきた。
空爆みたいなもんだが、空爆と言っても分からないしな。
あ、地面に落ちる前に岩を爆破すれば広範囲に被害を…。
と、変なことを考えていたせいでロモントの存在を忘れていた。
「ああ、戦術の一つだ。岩に限らず、上空から魔術による攻撃をする。飛翔魔術を使えれば珍しいことではあるまい?」
俺がそう答えるとロモントは呆れたような顔をした。フィンクルにそっくりである。
「飛翔魔術を戦争に使えるような魔術士など、かの500年生きたハイエルフと言われるラ・フィアーシュの白き魔女、アリスキテラくらいしか…」
「ほう。そんなエルフがいるのか。ハイエルフだったらどれくらい生きるといったかな?」
俺がそう尋ねると、ロモントは不思議そうに俺を見て口を開いた。
「およそ800から1000年と言われていますが、陛下の部下の方にもエルフの方がいらっしゃるのでは?」
ロモントはそう言いながら俺の後ろで用意してもらった椅子に座るサニーを見た。
「ああ、サニーか。サニーはハイエルフだが、俺が親みたいなものだからな。エルフの事情には疎い」
「は、ハイエルフですか! では、王族に連なる…」
俺がサニーのことを少し話すと、ロモントはかなり前のめりになって食いついてきた。
「確か、ランブラスにいたエルフも似たようなことを言ってきたな」
俺が、俺の城下町の冒険者ギルドにギルドマスターとしてやってきているエルフ、エルランドを思い出しながらそう返すと、ロモントは大きく頷いた。
「そうでしょう。エルフにとってみたら、ハイエルフというだけで王族の証みたいなものですから」
ロモントはサニーを時折見つつ、まだ話を続けようとした。
「それで、ハイエルフの話は良い情報となったが、そちらはどうするつもりだ?」
俺が話を本筋に戻すべくそう口にすると、ロモントは逡巡するように首を捻った。
「それは、ガラン皇国との関係、という意味ですか?」
「そうだ」
俺がロモントの質問に同意すると、ロモントは唸りながら背凭れに身を預けた。
すると、フィンクルが顔を上げてロモントを見た。
「父上。いえ、メーアスの代表の一人であるロモント殿へ進言致します。メーアスは、竜騎士様の国であるエインヘリアルと敵対してはいけません。例え、ガラン皇国に恨まれても」
フィンクルが厳しい顔つきでそう口にすると、ロモントは唸りながら俯いた。
「…正直、かなり難しいやもしれません。私はフィンクルを後継者にしても良いと思えるほど信頼しています。ですが、ガラン皇国との関係を白紙に戻すというのは…私が動いたところで、他の王家や、実の息子ですら止まるかどうか…」
ロモントが低い声でそう呟くと、フィンクルが奥歯を噛み鳴らしてロモントを見た。
「父上。止まるか分からないから動かないのでは意味がありません。せめて、我が王家はエインヘリアル側に立ち、メーアスの全てがガラン皇国に寄り添っているわけでは無いと公表していただきたい」
フィンクルが強い口調でそうロモントに言うと、ロモントはまだ悩むような素振りを見せつつ眉間にシワを寄せた。
そして、ロモントは俺を見る。
「フィンクルは、盲目的と言っても良い程レン国王陛下を信用し、エインヘリアルという新たなる国に脅威を覚えています。しかし、私は陛下の十万を200で殲滅したという話をどうしても信じられないのです」
ロモントの言葉に、俺は思わず噴き出して笑った。
「はっはっは。馬鹿正直なことだな。別に、俺はどうしてもお前に味方になれとは言っていない。ただ、敵対するならば容赦はしないぞ。まあ、今の話を聞いていたからな。お前とフィンクルはともかく、長男と次男はもしかしたら死ぬかもしれんが」
俺がそう言うと、ロモントの顔から表情が抜け落ちた。
強い覚悟を感じる顔付きで、ロモントは俺を睨む様に見据える。
「…例え、悪いところがあろうと、国にとって多少の不利益があろうと、長男のビタンと次男のドーブルは私の息子です。息子が殺されるなんて話を聞いて、父親が何もせずに傍観などできましょうか」
ロモントはそう言って、ソファーから立ち上がった。
「大変失礼なことを言わせていただきます。陛下。陛下の力を、私に見せていただきたい」
「ち、父上!」
ロモントの発言に、フィンクルは顔を青ざめさせて叫んだ。
というか、長男と次男の名前、ビタンとドーブルって言うのか。




