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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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初めてのメーアスへ向けて

俺達は一先ずレンブラント王国王都の前の街道に降り立った。


クレイビス帰還を知らない王都の住民や兵がパニックを起こさないように配慮したのだ。


やはり、俺は気配りが出来る男である。


ちなみに、地上に降りると兵士達は地面に崩れ落ち、国王は立ったまま涙を流し、宰相は疲労の滲む顔で王都を眺めていた。


レンブラント王国王都。大国であり歴史も長いだけに巨大な街だった。


城壁も綺麗に見える。先ほど斜め上から見た時は街は五角形か六角形に似た形だったはずだ。地形に合わせて増改築したのだろう。


「初めてレンブラント王国の王都を見たが、中々大きいものだな」


俺が無意識にそう呟くと、フィンクルが俺を振り向く。


その顔は信じられないものを見るかのようだ。


「…五大国の1つを、王都に訪れもせずに落としたのですか…」


「落としてない。同盟だ」


フィンクルの台詞に俺が突っ込むと、クレイビスが涙を拭いながら俺の前に歩いてきた。


「レン国王陛下様!」


「陛下で止めてくれ、クレイビス王。様はいらん」


俺が苦笑しながらそう言うと、クレイビスは恐縮して頭を下げた。


「は、はい! レン国王陛下! この度は同盟を結んで頂き、誠にありがとうございます! つきましては、レン国王陛下が必要とされる物資がありましたら、定期的にレン国王陛下の御国エインヘリアルへお送りさせて頂きたいと思います!」


「お、なら今度必要な物を洗い出してリスト化しとこう。助かるぞ、クレイビス王」


「あ、有難き幸せ!」


俺はそんなやり取りをして、クレイビス王達と別れた。


クレイビス王達を見送る俺の後ろから、フィンクルの呆れたような声が聞こえてきた。


「落としてるじゃないか…不平等な同盟間の取引が…」


何が不平等条約だ。


完全に相手側からの厚意で…あれ、何故か政治家の言い訳みたいに聞こえるな。






1つ用事を済ませた俺達は、早速メーアスに向かう。


現在はドラゴンの姿になったままのラグレイトの上でフィンクルを尋問中である。


「結局、メーアスはどうするつもりなんだ?」


俺が首を傾げながらそう聞くと、フィンクルは複雑そうな顔で首を左右に振った。


「メーアスは1つの国を名乗ってはいますが、内情は3つの勢力が権力を取り合っているのが今の状況です。なので、ガラン皇国、レンブラント王国、インメンスタット帝国…それぞれと繋がりの深い王家が存在します。得意な商売の商品も勿論違いますが」


フィンクルはそう言って浅く溜め息を吐いた。


何故こんなにフィンクルが素直に口を割るようになったのか。


答えは簡単である。


脅したのだ。


フィンクルは出来るだけ我が国と敵対したくないと言った。


ならば、敵対したくなければ協力しろ、とこちらも言うだろう。


その流れを予測していたフィンクルが折れるのは早かった。


「なら、メーアスが自分からどこかへ総攻撃を仕掛けるとか、そんなことはまず起こらないということか」


「可能性は低いですね。しかし、国の性質上、各王家の派閥同士が競い合うような形になっているだけに、利益には貪欲であり、どの国よりも早く、確実な形で利益を得るでしょう」


一長一短か。


だが、一枚岩で無いのならば、メーアスはある意味で最も簡単に崩壊してしまう国なのかもしれない。


さて、ならば、切り崩すとしたら足掛かりのあるフィンクルからか…。


俺が何気無くそんなことを考えてフィンクルを見ると、フィンクルは眉間に皺を作った。


「メーアスが損を被る話にはのりませんよ」


心を読まれた。


いや、別にメーアスを瓦解させても仕方が無いからしないが。


何となく考えてみただけだ。


「それで、各王家の派閥ごとで取り扱う商品が違うと言ったな。お前のところは何を取り扱っている?」


俺がそう聞くと、フィンクルは目を細めた。


「…食料や武具、マジックアイテムも扱いますが…まあ、色々ですよ」


「奴隷もか?」


フィンクルの上辺だけの回答に被せるように、俺は一言そう聞いた。


俺の質問に、フィンクルは肩を竦めて俺を見た。


「やはり意地の悪い方だ。奴隷は扱っておりますよ」


既に情報は調べていたのだから、フィンクルに聞く必要は無い。


だが、この情報を元にフィンクルに聞かねばならないことがあった。


「建築物に関連する材料や職人に強い王家、食料と薬や錬金術に強い王家、そして、戦争関連の商品に強い王家…この中で、最も力があるのは武器商人でもあるバーランド家だ」


俺がそう口にすると、フィンクルは押し黙った。


「フィンクル。それで、お前はガラン皇国に奴隷を何人売りつけた?」


沈黙するフィンクルに俺がそう尋ねると、フィンクルは視線を俺から外さずに口を開く。


「犯罪奴隷を150。元傭兵や冒険者の借金奴隷を100」


フィンクルはそう言って1度言葉を切ると、息を細く吐いた。


「全て、前回のガラン皇国のレンブラント王国への侵攻軍に組み込まれていましたがね」


そして、フィンクルはそう呟いた。


「なるほど。じゃあ、お前は早々にガラン皇国軍が壊滅したことを知っていたのか」


俺が納得してそう返事をすると、フィンクルは僅かに動揺した顔を見せたが、すぐに表情を隠した。


「…別に恨んでいるわけではないんですよ。ガラン皇国からは前払いで金は貰っていたし、渡したのもただの奴隷ですからね。ただ、気分は良くないですよ。顔だって見たし、何人かとは会話もしてるんですから。それが1人残らず皆殺しにあうとは…」


フィンクルはそう言って俺から視線を外した。


遠くを見つめるフィンクルの横顔を見て、俺は1人頷いた。


「お前はあまり奴隷商人には向かんな」


「皆から同じことを言われますね」


俺の台詞に、フィンクルは苦笑混じりに頷いた。


さて、それならば、フィンクルは俺に協力してくれるかもしれない。


「フィンクル。ガラン皇国に物資と人材を売り渡しているのはメーアスだ。そして、最も動きの良い商品は武器商人バーランド家が抑えている。つまり、お前の兄弟がガラン皇国に力を貸しているわけだ」


俺がそう言うと、フィンクルは溜め息を吐いた。


「そうですね。長兄と次兄でしょう。後は、一番上の姉が食料や武具を扱います」


「その3人、説得出来るか?」


俺がそう聞くと、フィンクルは首を振る。


「協力を止めろ、と? 無理ですよ。メーアスやガラン皇国は竜騎士と英雄の物語は子供用の絵本として豪商の間で流行っているくらいです。大変申し訳ありませんが、陛下のお言葉だと伝えても相手にされないでしょう」


フィンクルは困ったような顔でそんなことを言った。


「違う。武具や食料は売っていい。だが、奴隷はダメだ」


俺はフィンクルの言葉を途中で遮り、怪訝な顔つきになったフィンクルを見て、口を開いた。


「また殲滅することになるだろうからな」


俺が真顔でそう言うと、フィンクルの顔が引き攣った。













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