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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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フィンクルの義理

城下町の中で、まだ住人が住んでいない空いた家屋に詰め込まれたレンブラント王国の兵士達を集めて、俺たちは城下町の外に並んでいた。


昨夜は余程美味しい食事にありつけたのか、兵士達は皆生き生きとした顔で整列している。


さて、この人数だと少し厳しいか。確か、2000人はいると言っていた筈だ。


俺はアイテムボックスからオリハルコン製の杖を取り出した。


賢者の杖。


かなり製作に時間と手間がかかるうえ、素材も課金しないと集めるのに相当な時間がかかる最上級アイテムである。


だが、その能力は破格であり、他の杖や指輪と違って威力の向上が無い代わりに、唱えた魔術を重複させる効果がある。


つまり、複数の魔術を同時に行使することが出来るのである。


まあ、魔力は普通に使うからどうしても上級者向け装備にはなるが。


俺はその杖を手にして、整列した兵士達から視線を外し、クレイビスに顔を向けた。


「クレイビス王。今日は純粋な魔術士がいなくてな。兵士の内200人ばかりを選んでくれ。残りは明日送迎しよう」


俺がそう言うと、クレイビスは一瞬目を瞬かせたが、すぐにユタに言って動き出した。


軍の士官としてなら優秀そうな男である。


俺は2人が動き出したのを確認して斜め後ろに立つラグレイトを振り返った。


「ラグレイト、ドラゴンを…」


「はい、我が主。肉のある限り!」


俺が指示を出し終わる前に、ラグレイトはいつに無い元気の良さで返事をし、すぐに飛翔魔術で飛んで行った。


まったく、現金なものである。


そうこうしていると、クレイビスとユタも戻って来た。


「レン国王陛下様。兵士と魔術士合わせて200名選別してきました」


「お、早かったな」


俺がそう言って見てみると、クレイビスとユタの後ろに綺麗に整列して立っていた。


僅かな時間で並び直せるとは、中々の練度なのだろう。


俺が感心しながら兵達を眺めていると、遠くから歓声が聞こえてきた。


顔を歓声のした方向に向けると、城の方向からドラゴンの姿になったラグレイトが飛びながらこちらへ向かってきていた。


「よし、役者は揃ったな」


俺はそう言って、皆を振り返った。





大量に空を舞う兵士と魔術士の群れ。


皆が同じ体勢ならばもしかしたら、もう少しまともな見た目になるのかもしれないが、現実は違った。


失神して糸の切れたマリオネット状態の兵士、何かしらの液体を垂れ流す兵士、興奮のあまり絶叫する魔術士、気が狂ったように笑い出す魔術士…そして、咽び泣く国王。


「一種の地獄絵図だな」


俺がそう口にすると、フィンクルがため息混じりに口を開いた。


「それはそうでしょう。殆どの者は空を飛んだこともないのですから。それが、いきなり竜騎士様と一緒に空を舞うことになるとは…」


フィンクルにそう言われて周りを見てみると、クレイビスとユタですら感動しているのか遠くを見つめている。


「やり方はともかく、ただ家に送ってやるだけだがな」


「誰が家に送る為に空を飛んで帰ると言うんですか。そんな突拍子も無いことをする人がいたら見てみたいですね」


フィンクルはそう言いながら俺を見た。


「はっはっは。中々言うじゃないか」


俺が笑っていると、フィンクルは表情を無くして口を開いた。


「全てバレているんでしょう? 俺を公に処刑して見せしめにしますか?」


フィンクルは低い声でそう口にした。


俺は面白いものを見るような気持ちでフィンクルを眺めると、腕を組んで頷いた。


「さて、全てと言うとどれくらいか…自白するならば、そして、その自白が俺の知る情報よりも深いならば、見逃しても良いぞ」


俺がそう告げると、フィンクルは眉間に皺を寄せて歯を噛み鳴らした。


「舐めてもらっては困るな。俺にも意地がある。自分から話すようなことは死んでもしないさ」


フィンクルは口調を変えてそう言うと、俺に向き直って胡座をかいて座った。


「ただ、一言だけ言わせてもらうが、あんたに損はさせていないし、敵対もしていない」


フィンクルはそれだけ言って、俺を見上げた。


俺はフィンクルの前に座り、サイノスに視線を向ける。


「サイノス。フィンクルの後ろに立て」


「はい」


俺がそう言うと、サイノスは返事をしてフィンクルの後ろに立った。


フィンクルは無言で身動き一つしないが、額には汗が一筋流れていた。


俺は数秒、フィンクルの目を見ていたが、喋る様子は見られなかった。


「…強情な奴だ。お前も手足を失うかもしれない。そうは思わなかったか?」


俺がそう聞くと、フィンクルは肩を僅かに揺らしたが、口を一文字に結んで俺を睨むだけだった。


そのフィンクルの姿を見て、俺は溜め息を吐いて苦笑した。


「ならば、俺が知る情報を話そう。違うならば違うと言え」


俺がそう言うと、フィンクルは無言ながら戸惑う様子を見せた。


「まず一つ目の情報だ。お前はこれまで3回、他の行商人に取引を持ちかけている」


俺がそう言っても、フィンクルは反応しなかった。


「二つ目。これまでに4回、他の行商人がお前を探して何かしらの取引をしている。そして、その際にお前は必ず小会議室にて顔を合わせているな」


やはり、反応はない。


「三つ目。お前を訪ねてきた最初と2人目の行商人は通常通りの入国だったが、その帰り道。我が国を出た後で、馬車を街に預けて戻って行っている。荷物も無く、馬一頭に跨って走る行商人だ。随分と目立っていたぞ?」


この情報を俺が口にすると、フィンクルに僅かに反応があった。


「四つ目。それらの行商人の半数がガラン皇国を通過してメーアスへ。もう半分はレンブラント王国を通過してメーアスに帰っている」


俺の情報に、フィンクルは目を伏せて顎を引いた。


「五つ目。メーアスに帰った行商人達は、全員がメーアスの中央都市とかいう大きな街の商人ギルドに帰った。寄り道も無しだ」


フィンクルはまた身動き一つしなくなった。


「六つ目。商人ギルド内には幾つか会議室があり、商人達は最も小さな会議室を使っていた。そして、何かしらの会合が終わると、商人達はまた我が国へ。そして、商人達と会っていた者はメーアスの代表がいる建物へ」


俺はそこで言葉を一度切り、フィンクルを少し眺めた。


フィンクルは動かない。動かないが、額からはまた汗が流れていた。


「メーアスは昔、小さな国が点在する地方だったらしいな。その国々が、急激に力をつけていくレンブラント王国、ガラン皇国、インメンスタット帝国に危機感を持って作り上げた、いわば連合王国だ」


俺がそう言うと、フィンクルは薄目を開けて俺の足の辺りを見つめた。


「最後の情報だ。現在、連合王国メーアスを纏めるのは3つの王家であり、主導権を握る王家には5人の男と3人の女が王位継承権を持っている」


俺がそこまで言うと、フィンクルが俺を見上げた。


「フィンクル。お前は王位継承権を持つ、三男坊だな」


俺がそう言って笑みを浮かべると、フィンクルは冷ややかな目つきで俺を見た。


「…陛下。随分と性格が悪いですね。そこまで調べ上げたのなら、わざわざ俺に自白を迫る必要は無かったでしょう?」


「馬鹿言え。自分から口を割るか割らないかで話は変わる」


俺はフィンクルの文句にそう反論すると、深い溜め息を吐いて口を開いた。


「お前の評価は、味方ならば問題は無い…が、メーアスへの忠義が厚く、自国に不利になりそうな話があれば確実に俺の敵となるだろう」


俺がそう言うと、フィンクルは口の端を上げて笑みを形作った。


「正解ですね。ただ、1つ付け加えさせてもらいます。俺は、絶対にメーアスが陛下の国と敵対しないように奔走しますよ」


フィンクルはそう言って俺を見た。


俺はフィンクルの言葉に鼻で笑って口を開く。


「知ってるよ」















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