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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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朝、クレイビス帰宅の日

朝がきた。


何故か今日は息苦しい。


これは、昨夜の国王接待という大仕事のストレスか。


いや、あいつは国王の威厳が無かったからそれはない。


俺は唸りながら顔を持ち上げて掛け布団を見た。


見れば、あり得ないくらいに布団が膨らんでいた。


おかしい。朝だとしても大き過ぎる。


俺は胸の上を這うような指の感触を感じて息を呑む。


これは、アレですよ。


日本ホラー界に燦然と輝く一大作品。


ジュ・オーンである。


ジュ・オーンは呪われし家に憑く悪霊っ娘、カイヤン・コーというタイ人女性によるムエタイ殺法で…


「あ、おはようございます、マスター」


俺が固まっていると、布団から寝惚け眼のミラが顔を出して挨拶をしてきた。


し、知ってたから。


驚いてないからな。


俺が自然な笑顔でミラに挨拶を返すと、何故かミラが布団をかぶり直して顔を隠してしまった。


な、何か見たわけじゃあるまいな。


お、俺の背後とかに…。





「あの、ご主人様? 昨夜は良くお眠りになられていたと思っておりましたが…」


「やつれてる?」


玉座に座った俺に、エレノアと呼びつけた護衛の1人であるサニーが口々に俺にそんなことを言った。残りの護衛はサイノスとラグレイトである。


そんな2人に曖昧に頷いていると、サイノスが階段下から笑顔で俺を見上げて口を開いた。


「何か見てはならないモノでも見てしまったのではないですか、殿?」


「サイノス、そこで正座」


「なにゆえっ!?」


余計なことを言い出したサイノスに罰を言い渡すと、正座しようと腰を下ろすサイノスの隣でラグレイトが口を開く。


「我が主。今日は龍にならなくて良いよね?」


ラグレイトはそう言って腕を組んで小首を傾げた。


「そうだな。城下町に行って…もしかしたら遠出するかもな」


俺がそう言うと、ラグレイトが唇を尖らせた。


「龍の姿になると、ご飯食べさせて貰えないからなー。僕、生肉なんて食べないし」


「焼いた肉を持って行ってやろうか?」


「タレは? 塩胡椒だけだと嫌だよ?」


「プラウディア特製の焼肉のタレ」


「良し、竜騎士の威厳を見せつけてやりましょう!」


報酬の内容を知らされたラグレイトが調子良くそんなことを言って笑った。


「しかし、城下町は分かるのですが、遠出とは? クレイビス王を送迎でもなさるのですか?」


と、俺とラグレイトのやり取りの終わりを見計らってエレノアがそんな質問をしてきた。


俺はエレノアを見てから頷き、城下町にいるであろう人物を思い出しながら口を開いた。


「クレイビスはついでだ。最近は俺も街作りを楽しみ過ぎて近隣諸国の情勢に流されていたからな。そろそろ好き勝手に動き回るとしようか」


俺はそう言って皆を見回して口の端を上げた。


「策を弄するとしよう」


俺がそう言うと、正座したサイノスが顔を上げた。


「おお、頭を使われるのですな!」


「サイノス、パンツ一丁で正座に変更」


「なにゆえっ!?」





俺とサニー、サイノス、ラグレイトとグラード村出身の部下、ダンを連れてヴァル・ヴァルハラ城へ来た。


ダンを連れて来た理由は、戦闘を行えるタイミングがあればダンの様子を見てみたかったからだ。


ジーアイ城で夕食の時に見かけるダンは生傷が絶えない姿だったが、今回は外出なので傷を全て癒してもらっていた。


ちなみに、今回のダンは特別にミスリルのフル装備である。


本当なら1ランク上のオリハルコン装備でも良いのだが、ミスリルの方が一目置かれるからだ。


「おお、おはようございます! レン国王陛下!」


朝から元気なクレイビスはハキハキした様子で俺にしっかりとした挨拶をしてきた。


俺は気合いの入った新入社員を見る気持ちでクレイビスを見ると、後ろに控えるユタと見比べながら口を開いた。


「おはよう、クレイビス王。今日は王都に帰るだろう? 俺が送迎でもしてやろうかと思ってな」


俺がそう言うと、クレイビスは泣きそうな顔になった。


「か、帰りません!」


何故かクレイビスは帰国拒否して首を振った。背後にいたユタも肩を落として溜め息を吐いている。


いや、帰れよ。


国王と宰相がいないと国が大変だろうに。


「竜騎士に送迎された国王…神話みたいだな」


俺がそう言うと、クレイビスはハッとした顔になって頷いた。


「帰ります! 送迎、よろしくお願いします!」


「陛下…」


単純なクレイビスを見て、ユタが嘆きの声をあげた。


さあ、これで一つは問題が片付いた。次は城下町である。






城下町に行き、住民から声をかけられながら俺とクレイビス、ユタと護衛達は一路商人ギルドへ向かった。


「おお、この商人ギルドの建物も見事ですな」


ユタが建物を見上げてそう感想を口にする。ユタはバロック様式が好きなのかもしれない。


「ここに誰かいるのですか?」


急に連れて来られ、まだ困惑気味のダンが俺にそう聞いてきた。


「まぁな。ああ、ダン、ちょっと行ってフィンクルという者を呼んできてくれ。多分まだいるはずだ」


「はい、分かりました」


俺の指示を聞き、ダンはすぐに商人ギルドの中へ消えた。


ミスリルの兜までしているせいで声を聞かないと誰か分からないな。


俺がそんなことを思っていると、クレイビスがそっと俺に近付いて質問を口にした。


「あの方は、もしやレン国王陛下の配下で最強の英雄なのではないですか?」


クレイビスはワクワクした顔で俺にそう言ってきた。装備を見て判断したのだろう。


「いや、この街出身の一般人だったからな。弱いからそれなりの装備で固めている。まあ、もっと良い装備でも良いが、ミスリルが軽いしな」


俺がそう説明すると、クレイビスは驚愕に目を見開いた。


「ミスリルより、良い装備があるのですか…!」


俺はクレイビスの台詞に頷き答える。


「ああ、神の金属と云われるオリハルコンだ。後は、龍王以上のドラゴンの鱗と皮を使った装備とかな」


俺がそう言うと、クレイビスの後ろで盗み聞きしていたユタまで変な声をあげて吃驚していた。


「りゅ、龍王ですと!? それは、まさか…龍の谷の王である聖龍王のことでは…」


「聖龍王に鱗や皮を貰ったという…」


「いや、同じ種族かは知らんが、一応ドラゴンの中では最強の一角ではあったか。強いぞ。各属性ドラゴンの頂点のカラードラゴンも同格だがな。エレノアでも狩るのに2時間はかかる」


俺が何となくゲームのノリでそう答えてしまったが、2人は途中から茫然自失に陥っていた。


一瞬、オリハルコンの剣で魔法剣士のスキルでも使って見せようかと思ったが、2人の精神が崩壊しそうなので止めた。


タチの悪いドッキリみたいなものだろうし。


「あ、ダンが帰ってきたよ」


俺が変なことを考えていると、ラグレイトがそう言って商人ギルドの建物を指差した。


見れば、扉を開けてダンとフィンクルが顔を出していた。


「おはようございます。何か御用と伺いましたが」


フィンクルは開口一番にそう言って俺の前に立った。


そして、今頃になってクレイビスに気がつく。


「これはこれは…もしやレンブラント王国国王陛下ではありませんか?」


フィンクルが恭しく頭を下げてそう尋ねると、クレイビスは鷹揚に頷いてフィンクルを見下ろした。


「うむ、レンブラント王国国王、クレイビスだ。お前は行商人か? レン国王陛下と面識があるようだが」


クレイビスはまるで王様か何かのように威厳深くそう口にした。


「なんだか、偉そうだな」


「はっ!? す、すみません、レン国王陛下様! 思わず普段の口調になってしまいました!」


俺が自分のことは棚に上げて無意識に漏らした呟きに、クレイビスは慌てて謝罪を口にして俺に頭を下げた。


これには見ていたフィンクルが驚愕する。ちなみに商人ギルドの前だから大通りを歩く住民まで吃驚である。


「…れ、レン国王陛下。まさか、エインヘリアルはレンブラント王国を吸収なされたので…?」


フィンクルは何処か緊張した面持ちで恐る恐るそう聞いてきた。


だが、俺はそれに首を左右に振って答える。


「同盟だ」


「ど、同盟…レンブラント王国の領土を奪った形になる陛下の国がレンブラント王国と同盟を…?」


フィンクルは怪訝な顔付きでクレイビスを見たが、クレイビスはフィンクルに大きく首肯した。


「うむ。私はレン国王陛下様の部下になりたかったのだが、うちの我が儘宰相が煩くて…」


「陛下っ!」


クレイビスが国王として恐ろしい心情を暴露しかけて、ユタが凄い形相で止めに入った。


タイミング的に間に合っていないが。


クレイビスの説明を受けて、フィンクルは乾いた笑い声をあげて俺を見た。


「は、はは…可能性としては考慮しておりましたが、まさか現実にこんなことが起こるとは…それも、どう見てもエインヘリアル上位の同盟…あ、私は少々用事があったのを思い出しました。申し訳ございませんが、本日のところは…」


フィンクルは何かをブツブツと呟いたかと思えば、突然忙しそうな素振りを見せて商人ギルドの建物へ戻ろうと振り返った。


俺は苦笑してフィンクルの背中に声を投げ掛ける。


「珍しく驚き過ぎて言い訳が下手になっているぞ。フィンクル。今日は残念ながらお前を連れて行く用事があるんだ」


俺がそう言うと、フィンクルは強張った表情でこちらを振り返った。


俺はそのフィンクルの顔を見て、口の端を上げる。


「居留守を使えば良かったな」















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