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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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行商人の情報

あのビリアーズが起こした茶番劇から数日。


「りゅ、竜騎士様! おはようございます!」


「竜騎士様、良かったら是非こちらでお食事を…」


「竜騎士様はご結婚されないのですか!?」


俺は城下町を歩けば必ず声を掛けられるようになった。


ゆっくり街作りが出来ないではないか。


俺は住人に挨拶を返しながら、冒険者ギルドに顔を出す。


「れ、レンさん!」


「ミリア! 陛下でしょ!?」


受付のミリアとランが1番に俺に気が付き、声を上げた。


そのせいで建物内の視線が全て俺に向かうが、段々と慣れてきた俺は無視して受付に向かった。


「おはよう。何か事件とかあったか?」


俺が聞くとミリアが嬉しそうに首を振る。


「いえ、平和ですよ! こんなに衛兵が警備している街は無いですから、泥棒騒ぎも殆ど無いですし乱闘も起きません。ところで、噂は聞きましたか?」


「噂?」


ミリアの言葉に俺が身を寄せてミリアに近づくと、ミリアが顔を赤くして頷いた。


「そ、そうなんですよ。さっき私も聞いたんですけど、ガラン皇国側から来た行商人がガラン皇国内で不穏な動きがあるって話してて…」


ミリアがそう言うと、隣に立つランが神妙な顔つきで頷いた。


「その商人さんはまだ商人ギルドにいると思いますよ」


「あ、ちょっとラン!?」


ランがもたらした情報に不満があるのか、ミリアが非難の声を上げた。


「ありがとう。行ってみよう」


情報が気になった俺は揉める2人にお礼を言って冒険者ギルドを後にした。


まだ然程時間は経ってないが、もうガラン皇国は軍を編成して侵攻を開始したのか。


俺は頭を傾げながら商人ギルドに顔を出した。


「あら、陛下じゃありませんか。どうなさいましたの?」


商人ギルドに入ると、受付の前にいた商人ギルドの幹部、ヴィアンが俺を見つけて微笑んだ。


俺はヴィアンの方に近づき、見ない顔の商人がいないか辺りを見回しながら口を開いた。


「ガラン皇国が不審な動きを見せていると聞いたが…」


俺がそう口にすると、ヴィアンが目を丸くして俺を見上げた。


「まあ、陛下…本当に耳がお早いのですわね? その情報を持ち込んだ商人はついさっき此処へ顔を出しましたわ」


「今は?」


「行商人仲間と小会議室を借りて商談か何かしているようですわね」


「そうか、ありがとう」


俺はヴィアンに礼を言うと、商人ギルドの二階に作った小会議室へ向かった。


「付いてくるのか?」


二階に上がる階段を上る時、何故か俺の護衛の後ろにヴィアンが付いてきていた。


「いけませんですの?」


「さて、それを決めるのは相手だからな」


ヴィアンが笑顔で聞いてくるが、俺は曖昧に言葉を濁してヴィアンの同行を黙認した。


まあ、ヴィアンがいた方が別の視点からの情報と考えを聞けるかもしれないからな。


と、そんなことを思う間に俺達は小会議室の前に立った。


なにせ、二階に上がって最初の左右の部屋。右が大会議室、左が小会議室である。


俺が無言で小会議室の扉をノックすると、暫くして、中から扉が開かれた。


顔を出したのは俺の知らない顔だった。


「…どちら様で?」


落ち窪んだ目の痩せた男だった。痩せた男は俺にそう尋ねてきた。


「この国の王だ。少し話を聞かせて貰えるか?」


「お、王…竜騎士…様…?」


レンと名乗るよりも早いかと思ったが、俺の声が聞こえたのか、小会議室の中から声が響いてきた。


「ご入室されてください」


「あ、ど、どうぞ!」


入室を促す声がして、惚けていた痩せた男は慌てて俺を招き入れた。


中に入ると、中には商人らしき姿の3人の男があり、真ん中にはあの行商人フィンクルの姿があった。


「ようこそ。こちらへわざわざ陛下が来られたということは、私に用事ですか?」


俺と護衛、ヴィアンが入室すると、フィンクルは鋭い眼光でそう尋ねてきた。


俺は扉を閉めて扉の前から動かない痩せた男を横目に確認しつつ、フィンクルに対して口を開く。


「さて、俺は妙な噂を聞いてきただけだがな。何やら、ガラン皇国内で不審な動きがあるとか。知っているか、フィンクル」


俺がそう聞くと、フィンクルは僅かに目を見張った。


「もしやとは思いましたが、陛下はどんな情報網があるのですか…私とて今時分に聞いたばかりですが…」


「たまたまだ。そこの扉の前の男か?」


俺がそう言うと、フィンクルは呆れたような顔つきになって頷いた。


「はい、そうです。彼は私と同じくメーアス出身なのですが、ガラン皇国で商いをしてからこちらへ来たようです。その際に、物の動きに違和感がある、と」


「物の動き、か。戦争の準備でもしているみたいか?」


俺が確認すると、フィンクルは複雑な面持ちで頷いた。


「さて、ガラン皇国のどの辺りに食料が運び込まれている? 大量ならば必ず痕跡は残るんじゃないか?」


俺がそう尋ねると、フィンクルは口を開くのを躊躇うような仕草を見せて顎を引いた。


俺に対して不利になることか、もしくは…。


「こちらが対応出来ない数で来るか、複数箇所から同時に攻めようとしているか…それとも、ビリアーズ伯爵、いや、ビリアーズ大臣の協力者だったどこぞの領主が内通したか?」


俺がそう告げると、フィンクルは浅い溜め息を吐いて頷いた。


「今のところガラン皇国の商人の間での噂に過ぎません。ですが、ガラン皇国は五箇所の街に食料と奴隷を集め、傭兵団を雇用しているようです。その中で他国との国境に位置するのはこの陛下の国と接するアルダ、そしてレンブラント王国の中央北部に接するエムレスです」


フィンクルはそう言うと、顎を指で撫でて視線を下方に向けた。


「まさか、陛下の国とレンブラント王国の両方に兵を差し向けるような真似はしないでしょう。ならば、片方には牽制、片方には侵攻軍を派遣するというのが、1番ありえることではないでしょうか?」


フィンクルがそう言うと、俺の後ろでヴィアンが口を開いた。


「ちょ、ちょっとお待ちなさい。貴方は皇国と王国に店を持つ大商人などでは無く、ただの行商人でしょう? 沢山の行商人仲間がいたとしても、その複数の街の情報はどうやって調べたのかしら?」


ヴィアンはそう言うと疑惑の眼差しでフィンクルを見つめた。


フィンクルはヴィアンのその視線に苦笑すると、両手を広げて顔を上げた。


「私は一介の行商人ですよ。ただし、経済大国であるメーアスの行商人です。五大国の中で最も多くの行商人を持ち、独自の物流の流れも持つメーアスの行商人ですから、その情報量は五大国の中で1番だと思っています」


フィンクルがそう抗弁すると、ヴィアンは腕を組んで首を傾げた。


「我が商人ギルドも国を越えて繋がる情報網を持つ巨大な組織ですわ。しかし、我々が把握しているのはアルダとエムレスに傭兵団が集まっているという情報だけですのよ?」


ヴィアンがそう言うと、フィンクルは曖昧に頷いて視線をヴィアンから外した。


「…中々興味深い話だ。ヴィアン、悪いが今から時間はとれるか?」


「え? わ、私ですの? ちゅ、昼食でしたらまだ予定も決まっておりませんですわ。へ、陛下が誘ってくださるなら夜…いえ、朝に帰っても全く問題は…」


俺がヴィアンに今日の予定を聞くと、ヴィアンは両手で自分の頬を隠すようにして身を捩り、何かブツブツ言いだした。


「そうか。後、フィンクル、お前も予定が無ければ同行しろ」


俺はヴィアンに簡単な返事を返し、今度はフィンクルにそう告げる。


「……ご一緒させていただきます」


フィンクルは僅かに表情が陰ったが、すぐにその感情の色は消え去り、そう言って頭を下げた。


「へ? フィンクルもですの?」


ヴィアンは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして俺とフィンクルを交互に見てきたが、放置した。


今の話の流れでデートの誘いなんぞするわけがないだろう。










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