あれから1週間…(急に!?)
朝が来た。
国造りをしていたから時間の感覚が違うのか。
あっという間に20日目の朝を迎えた。
1週間くらい平和過ぎてあっという間に過ぎた気がする。
気のせいか。
隣を見ればいつものように美しい金髪を顔の半分を隠しているエレノアがいる。色白である。
よく見ればエレノアと俺の間には布団に潜り込むようにしてサニーが寝ている。位置がマズい。
反対側を振り向けば、セディアの豊満な胸が目の前にある。少し目を下に向ければそこにはミラの黒い頭が見える。位置が非常にマズい。
俺はまた身体を捩り、天井を眺めた。
よし、動けない。
新手の捕縛術か、コレは。
朝食を食べ、今回は護衛以外にエレノアも連れてヴァル・ヴァルハラ城へ来た。
護衛にはサニー、サイノス、セディアである。
サイノスとセディアを連れてきたので、必然的にダン一家も付いて来ている。
今回は珍しく人数が多いが、理由はシンプルである。
単純に城下町がかなり完成したので、俺が皆に御披露目したかっただけだ。
城を初めて見たダンの驚きっぷりも面白かったが、城下町を見たエレノアとダン、シェリーの反応は愉快だった。
それもそのはずである。
何しろ、僅かな間に城から城壁までのメインストリートは全ての建物が埋まっていたからだ。
城から見ていくと、新たに来た住民の情報を集める為に戸籍を発行する役所があり、病院、衛兵の詰所、宿屋、武具屋、鍛冶屋、飲食店、服屋などが建ち並び、城壁の正門前にはまた衛兵の詰所、冒険者ギルドがある。
ちなみに、来るのが遅れたせいで一つ奥の裏通りに魔術師ギルド、錬金術士ギルド、回復魔術師用の教会などがある。
娯楽施設はまだ楽器演奏が出来る者が来ていないので後回しである。
学校は建物は完成した。勿論、隣には保育所と孤児院も出来ている。
しかし、意外というべきか当たり前というべきか、まだ出来たばかりのこの国まで来れるのは行商人や冒険者、傭兵などがメインであり、移住者も健康な人のみである。
たまに酷い扱いを受けている奴隷は解放しているが。
そう言った事情もあり、現在は学校も孤児院も使われていない。
だが、城下町はもうかなりの賑わいを見せていた。
グラード村の住人は役所など国に関わる部分で働いてもらっている。
冒険者ギルドにはランブラスからかなりの数の冒険者が来ており、職員にはミリアとラン、そしてギルドマスターにランブラスにいたエルフのエルランドが就任した。
既に生活が生まれているこの城下町を、エレノアは目を輝かせて、ダンとシェリーは唖然呆然とした表情で眺め、街中を歩いた。
「素晴らしいです! これがご主人様の国の姿なのですね!」
エレノアは恍惚とした表情で街を見回しそう言った。
「静かにしろよ。俺が国の代表だと知らない人が殆どなんだからな。それに街もまだ半分程度だな」
俺はそう言って苦笑した。
俺は大々的な国王の挨拶などはしていない。
ただ、役所で手続きをした住人はなんとなく竜騎士の国の国民になった気がしている程度だろう。
城主として定期的に見回りしているカルタスが国王と思っている者が1番多いだろう。
このままいければ1番気楽だが、ギルドメンバーの為にも、ビリアーズ伯爵が戻ってきたら建国宣言を改めてしなければならないかもしれない。
俺はその時のことを考えて少々億劫になったが、一度やってしまえば後はもう良いだろう。
そう思って切り替えることにした。
だが、中々思い通りにいくことは稀らしい。
俺は城門の方からこちらへ向かって配下の騎士団と共に歩いてくるビリアーズ伯爵を見てそう思った。
俺たちがいる場所は城に戻ろうとしていた為に、城下町と城を繋ぐ橋の前だ。
まるで、ビリアーズ伯爵がこのタイミングを狙って準備していたかのような絶好の機会だ。
いや、王都から帰ってきたばかりの割には随分と綺麗な服装と気合の入った騎士団との行進だ。
本当に狙っていたのかもしれない。
後でカルタスに聞いておこう。
俺がそう思っていると、ビリアーズ伯爵は俺の前まで来て立ち止まった。
城下町の住人達が好奇の視線を向けてくる中、ビリアーズ伯爵を筆頭に騎士団も整列し直し、その場で跪く。
よく見れば、騎士団の最前列にはボワレイ男爵もいた。
伯爵は跪いた状態で顔を上げると、息を大きく吸った。
「竜騎士、レン様! レンブラント王国辺境領領主、ビリアーズ・セント・ワームズ・フィツィ! 只今戻りました!」
「…ご苦労」
本当に只今戻ったんだろうな。
俺が訝しんでいると、伯爵は大袈裟な動作で頭を深く下げ、言葉を続ける。
「これより、私が受け持ってきた辺境領はレンブラント王国より独立し、陛下の御国に献上させていただきます!」
「…わかった。ならば、今まで領土を守ってきたビリアーズ伯爵がこれからも領土を盛り立ててくれ。我が国エインヘリアルにおいて、ビリアーズ伯爵は右大臣とする。我が右腕として、これから宜しく頼むぞ」
俺がそう言うと、ビリアーズ伯爵は一瞬動きを止めたが、すぐにまた口を開いた。
「…ありがたき幸せ! 私はこれから右大臣を名乗り、竜騎士レン様の御国、エインヘリアルを全身全霊をかけて盛り立てることを誓います!」
ビリアーズがそう叫んだ直後、騎士団が顔を上げて大歓声を上げた。
それにつられるように、集まって眺めていた住人達からも拍手喝采が巻き起こり始めた。
そんな中、ビリアーズは俺を何とも微妙な顔で見ていた。
口約束でしかなかったNo.2のポジションを確定させる為にやったのだろうが、俺はNo.2のポジションが一つとは言っていないからな。
「そういう訳で、我らの国エインヘリアルを、俺が国王として発展させていくつもりだ。皆、手伝ってくれるか」
その日の夜、俺は急遽ギルドメンバーを集めて改めてそう口にした。
そして、隙間が無いほど埋め尽くされたジーアイ城の玉座の間で、今日最大の大歓声が起こった。
その怒号のような大歓声の中、俺は少しホッとして背凭れに身を預けたのだった。
さあ、これで城下町だけじゃなく、辺境領の全てを見なくてはならなくなった。
忙しくなるぞ。




