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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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商人達の関心?

俺の裁きをその目で見た商人達は、明らかに今朝よりも距離感を持つようになった。


それは未知なる存在に対する畏れであり、その未知なる存在に対する期待でもある。


利益に聡い商人という人種の場合、利益の期待値によっては多少のリスクなど度外視するだろう。


そして、竜騎士の国エインヘリアルの期待値は少なく見積もっても生涯に二度とない規模のものであろう。


王侯貴族か一部の豪商しか手に出来ないとされるミスリル。


そのミスリルがまるで湯水の如く使われたヴァル・ヴァルハラ城。


これだけで十分に商売の匂いを嗅ぎ付けることが出来る。


なればこそ、その商売人達を上手く援助し、焚き付けてやらねばならない。


そんな思いを胸に、俺は商人達と共に朝食を共にした。


城の使用人として雇うことになったタージはいないが、罪は裁かれたことになっているナイディルは同じく食堂にて席を並べている。


ただ、一緒に来た商人達からは距離を置かれているが。


「しかし、最初はどうしても信じられない部分があったものですが、こうも現実を突きつけられると否定のしようもありませんね」


「本当に。まさか、神の代行者様に生きている内にお目にかかれるとは思いませんでした」


商人達の会話は殆ど竜騎士とその国に関してだった。


そして、今後の展望だ。


「商人ギルドとは別に個人の店も出して良いとのことですぞ」


「しかし、やはり正門からすぐの大通りに出したいがすぐに埋まってしまうだろう」


「陛下は店舗の種類にも言及なされておられましたな」


「我々は商品を用意して人員を確保せねば店はすぐに運営出来ません」


「宿屋と飯屋はやりたい人間が来ればすぐにでも建ってしまうぞ」


商人達は昨日の食事の時とは真逆で、各々が具体的な商売の話を周囲の商人達と話し合っている。


少しでも優位に立てるように牽制する者、商品や人員がすぐには用意出来ないから援助を求める者、商店の種類が被らないように話しながら調べる者など、様々だ。


俺は経済が発展する未来が見える気がして笑みが溢れたが、酒を呑むことで誤魔化した。


「陛下」


そこへ、フィンクルが真面目な顔で歩いてきた。


「なんだ?」


俺が返事をすると、フィンクルは周りにいる俺のギルドメンバーを見つつ、口を開く。


「陛下は、これから陛下の御国をどうされるおつもりか。良ければお聞かせ願えないでしょうか」


フィンクルは、行商人とは思えない雰囲気を滲ませてそう言った。


「フィンクル。お前は何者だ。商人という肩書き以外はどんな肩書きを持つ?」


俺が気になったことを単刀直入に聞くと、フィンクルは眉間に皺を作り押し黙った。


フィンクルが口を開かない間、俺はゆったりと酒を呑んでいたが、フィンクルは口を開かなかった。


これは、独断で話せることでは無いということか。


国が絡むのか、それとも周囲の商人達には聞かせられない内容があるのか。


俺はそう考えて、沈黙するフィンクルを横目に口を開く。


「噂を聞いてるなら知ってるだろうが、ビリアーズ伯爵が一部周辺の領主と共に我が国の下へ来る予定となっている」


俺がそう言うとフィンクルは片方の眉を上げて唸った。


「…陛下。噂では、ビリアーズ伯爵様は自領を陛下に献上してとり入ったとか。事実はどうであれ、レンブラント王国側はあまり良い印象を受けないのでは?」


フィンクルは言葉を選びながら俺にそう尋ねると、俺たちの会話に聞き耳を立てる商人達を一瞥した。


「ふむ、印象は良くないだろうな。そして、ガラン皇国も同じくこちらへの印象は良くないだろう。さて、両国は我が国を見て、生意気な、とでも癇癪を起こすだろうか。どう思う、クビド」


俺が目立たないように話を盗み聞いていたクビドの名を呼ぶと、クビドは困ったような笑いながら顔を出した。


「いや、私は1商人でしかありませんから、そのような様々な国が絡む情勢の推移などは中々…」


クビドは白々しい態度で明言を避けた。


つまり、俺に言いたくない予想をしているということだ。


「まあ、通常ならばこんな小さな新興国なぞ踏み潰してやる、となるだろうな」


俺がそう言うと、居並ぶ商人達は急に黙り込んでしまった。先程まで別の商人と歓談していた商人まで静かになったところを見ると、皆が密かに俺達の会話を聞いていたのだろう。


「さて、一部の民衆は竜騎士の噂を聞いているが、その状況下でどう難癖をつけてくるか」


静かになった食堂で俺がそう呟くと、ヴィアンが口元に手を添えて胸を反らせた。


「まあ、陛下…押しも押されぬガラン皇国と、弱体化しても尚巨大なレンブラント王国を相手に大変剛毅な自信をお持ちですわね。そういった力強さ、頼もしさが陛下の魅力を更に際立たせているのでしょう」


ヴィアンはそう言って言葉を止めると、目を僅かに細めて口を開いた。


「しかし、大国は大国ですわ。陛下は、大国二つを相手取る覚悟で国造りを…?」


ヴィアンがそう言って俺の様子を窺う中、フィンクルが感情の読めない顔付きで同意した。


「ビリアーズ伯爵様の領土は守りやすい形ではありますが、それでも広大です。辺境を守ってきただけあり、兵の練度も高いと聞きます。しかし、二つの大国に北と東から同時に攻められたならば、どうあっても守る手勢が足りず、少しずつ領土を削られていくのではありませんか?」


フィンクルは、まるで商人らしからぬ話しぶりでそう言うと、水を口にして喉を潤した。


俺は皆の注目を気にせずに肉を一口食べると、肩を竦めて口の端を上げた。


「俺は領土を侵されるか、配下の者からの救援の申し出以外では兵は動かさん。だが、もしも、ガラン皇国とレンブラント王国が兵を進めてくるならば」


俺はそこで言葉を切り、皆を見回してからまた口を開いた。


「神話の戦いというものをお見せしよう」












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