表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/243

レンレンなりの優しい裁き

罪を暴かれまいと喚き散らすナイディルと、怒りに燃える目でナイディルを睨むタージ。


その2人を遠巻きに見て成り行きを見守る商人達。


舞台は整った。


「ナイディル、黙れ」


俺が低い声でそう口にすると、ナイディルは引き攣った顔になり押し黙った。


俺は静かになったことを確認すると、タージに向かって口を開いた。


「タージ、ナイディルに何を指示された」


俺がそう聞くと、タージは身体を震わせて俺を見上げた。


タージは地面に両膝をつき、祈るような姿勢で俺に向き直り口を開いた。


「申し訳ありません、竜騎士様。実際に盗んだ俺も死んで詫びます。ですが、ナイディルの野郎が無実になるのだけは耐えられません」


タージは怒りを押し殺しながらそう訴える。


ナイディルはタージの言葉に血相を変えるが、隣にいたローザに拘束されていた。


「ナイディルは俺にミスリルの壁を剥いで来いと言いました。なので、俺は最初外壁の破片でも良いから見つけようとしました。ですが、全く見つかりませんでした」


タージはそう言うと、俺に深く頭を下げて額を地面に擦り付けた。


「…それで俺は、廊下にあった彫刻や花瓶などから1番小さい物を選んで持って行きました。いや、小さいなんてのは言い訳にもなりません。ただ、その素晴らしい、見るだけで心が動くような置物に惹かれて…」


タージは血を吐くような悔恨の思いを口に滲ませて、床に額を押し付けたまま背中を丸め、泣いた。


あれが欲しかったか。


日本で大いに売れたゲーム機の最新機種型の置物が。


やはり、直感的にワクワクしてしまうものなのだ。


俺は満足気に頷くと、泣き咽ぶタージを見下ろした。


「中々良い目をしている。あれは、もう使う事は出来ないが、素晴らしいアイテムだったものだ」


俺がそう告げると、商人達が騒めきだった。


「まさか、神話級のマジックアイテムか?」


「それを盗ろうとしたのか…」


「やはり極刑は免れまい」


そんな商人達の声が聞こえてきたが、俺はタージに視線を向けたまま笑みを浮かべた。


「タージ。お前がしたことは許し難いことだ」


俺がそう言うと、タージは肩を震わせて顔を上げた。


涙に濡れたタージが鼻をすする音が聞こえてくる中、俺はタージに裁きを言い渡す。


「だが、盗んだ物もその日の内に発見され、場所も城内を出ていない。奴隷という立場も鑑みて、罪の多くは主人であり主犯のナイディルにあるとする。償う方法は、この城での奉仕活動だ。朝から夕方までの労働をしてもらおう」


俺がそう言うと、商人達の一部は釈然としないのか、厳しい顔つきになった。


当のタージは目を丸くして身動き出来ずにいたが。


俺はその様子を確認して、ローザに取り押さえられているナイディルに視線を向けた。


「ナイディル」


俺が名を呼ぶと、ナイディルは身体を震わせて目を下に向けた。


「ナイディルは今回の窃盗騒動の主犯である。だが、先程も言ったように盗んだ物はその日の内に見つかり、城内から出てもいない。なので、命までは奪うまい」


俺がそう言うと、それまで静観して裁きを聞いていたクビドが思わずといった様子で呻いた。


「そ、それは中々寛大な処分ですが…」


クビドが歯に物が挟まったような物言いでそう呟く中、1人の商人が強い目で俺を見た。


あの、馬車の馭者をしていた者だ。


男は俺を見上げながら、静かに口を開いた。


「失礼ながら陛下、1つお聞きしたいことがあります」


その商人が突然そんな言葉を発した為、皆がその商人を見た。


その商人は周りからの視線に動じることなく、目を隠すように伸ばした黒髪越しに俺を見ている。


「ふむ。その前に、悪いが名前を教えてくれ」


昨日の夕食時に会話はしていないからな。


俺がそう聞くと、その商人は頷いて名乗った。


「商売の国メーアスより来ました、フィンクルと申します」


その商人はフィンクルと名乗ると、改めて質問を切り出した。


「陛下。私は今朝まで、この地に骨を埋めても良いと思えるほどの感銘を受けて参りました。様々な国を見て回り、この国ほど未来に希望が持てる国はありませんでした」


そこでフィンクルは言葉を区切ると、ナイディルを一瞥する。


「しかし、そこの奴隷に対しての、罰とは到底言えない温情。更には卑劣なるナイディルへも温情を与えようとされております。陛下のお優しさは尊いものかと思いますが、厳罰をもって維持される秩序もあるかと愚考致します」


フィンクルがそう口にすると、曖昧な顔で成り行きを見守っていたヴィアンが口を挟んだ。


「そうですわね。せっかく、今この場にはこれから諸国を回る行商人も、多くの国に拠点を持つ商人ギルドの者もおりますわ。陛下、恐れながら申し上げます。ナイディルは厳罰に処して見せしめにすべきでしょう」


ヴィアンがそう口にして俺を推し量るように見てきた。


俺は頷くと、商人達の顔を見回して口を開いた。


「ふむ。ならば、ナイディルの四肢を切り落として処罰としよう」


俺が簡単にそう言ってのけると、商人達は一斉に顔を引き攣らせて息を飲んだ。


クビドは顔面蒼白になったナイディルを横目に、冷や汗を流しつつ口を開く。


「それは…陛下、確かに間違い無く厳罰ですが、いささか重過ぎるようです…それならばまだ一思いに死刑とした方が良いかと思いますが…」


クビドがそう言うと、ヴィアンも複雑な顔で何とか笑みを作り頷く。


「そ、そうですわね。我々も城内で盗みを働いた者が処刑されたと言う方が言いやすいですわ。流石に、四肢を切り落とされてまで生かされるのは…諸国に無用な恐怖心を植え込むのではないでしょうか」


2人がそう言うと、後ろの商人達も何度も頷いた。


俺は皆を見回すと、口の端を持ち上げて口を開く。


「安心しろ。四肢を切り落とされて生きろなどとは言わん。だが、四肢は切り落とす。見せしめに必要なのだろう?」


俺がそう言うと商人達は言葉の意味を推し量れずに黙り込んでしまった。


その様子を見つつ、俺はローザに視線を向けた。


ローザは頷いてナイディルを解放する。


「はっ、は、へ、陛下! な、何卒お赦しを! 私は…!」


ナイディルが必死に己の無実を訴えようとまた口を開いたが、俺は軽く首を振って隣に立つカルタスに声をかけた。


「カルタス、やれ」


「御意」


俺の端的な言葉にカルタスは二つ返事を返してその姿を消した。


次の瞬間、カルタスはナイディルの後ろに現れた。


そして、その手前には四肢を切り落とされたナイディルの姿があった。


思ったより血が飛び散ったりはしなかったが、その場に倒れこむナイディルの周りに血溜まりが広がっていく。


「う、うぁ…」


その凄惨な光景に誰かが呻き声を上げた。


手足を根元から切り落とされたナイディルはショック状態になって白目を剥いてしまった。


さあ、出血量から見てもナイディルはこのままだとすぐに死んでしまうだろう。


それならそれで問題無いが、俺の目論見から外れてしまう。


俺は護衛として連れてきたサニーを見て口を開いた。


「サニー、手足をつけてやれ」


「うん、マスター」


サニーは俺から指示を受けてすぐにナイディルの傍に近寄り、回復魔術を唱えた。


強い白い光を発しながら、ナイディルは見る見る間に切り落とされた腕をサニーにくっ付けられていく。


まるで粘土で出来た人形の手足が勝手に付いていく様な出来の悪いホラー映画のような光景だ。


それを見ていた商人達も絶句して身動ぎ一つせずに固まっていた。


僅か数秒で、ナイディルは表情こそ虚だが切り落とされた四肢は元に戻り、意識を取り戻した。


ナイディルが辺りを見回し、暫くしてハッとした顔で自らの手足を見る。


「わ、わた、私の腕が…!?」


ナイディルが顔色の悪い顔でそう口にして自分の手足を確認するが、そこには傷跡一つ無かった。


「ま、まさか…あの状態から…」


「ば、馬鹿な! そのようなことが出来るわけ…」


一時して、目の前で何が起きたか把握した商人達が蜂の巣を突いたように騒ぎ出した。


そんな中、青白い顔をするナイディルを見下ろして、俺は低い声で最後の脅しをかけた。


「ナイディル」


「は、はひ!」


「もし、次に同じような事態を起こしたら、今度は一度灰になるまで焼き払ってから再生してやろう」


俺がそう口にすると、ナイディルは腰を抜かして俺を仰ぎ見た。


そして、ナイディルの周りに血以外の液体が混じる。


そんなナイディルの恐怖に打ち震える姿を確認し、俺はクビドと、フィンクルの顔を見た。


「どうだ? やはり、無傷で終わりは甘いか?」


俺が尋ねると、クビドは頬を引き攣らせて息を漏らした。


「は、はあ…いえ、陛下にしか出来ぬ、見事な処罰かと…」


クビドはそう言って愛想笑いを俺に返した。


少し怖がらせ過ぎたか?


これで戦わずとも我らの実力を知らしめることが出来たと思うが、怖がらせ過ぎると周辺諸国から人がやってこない。


早まっただろうかと自問自答していると、フィンクルが笑みを浮かべて大きく頷いた。


「お見事です。命までは奪わない温情と、法と秩序を守る厳しい罰が両立されておりましたように思います」


「そうか、なら良かった」


俺は俺の裁きを肯定するフィンクルに頷き、返事を返した。


俺の様子を見て、珍しく顔を青くしていたヴィアンが俺を見上げてきた。


「陛下…陛下は、死んだ者を生き返らせることがお出来に…?」


ヴィアンの何かしらの強い想いが滲む声に、俺は不敵に笑いながら口を閉じた。

















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ