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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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Sランク冒険者、ブリュンヒルト

いつも飄々とした雰囲気を崩さないローレルが怒りを露わにしている。


正直、剣を向けられていなくても怖いです。


俺は引き攣った笑みを浮かべ、ローレルを見た。


「まあ、そう怒るなよ。言い方はアレだったが、多分お前の為を思って助言のつもりだったんだろ。なあ、ブリュンヒルト」


俺がそう言ってブリュンヒルトを見ると、ブリュンヒルトは小刻みに頷いていた。


ローレルはそれ見て、短い息を吐いて剣を下げる。


「ま、旦那がそう言うなら我慢しやすよ。次からは気をつけな、姉ちゃん」


ローレルがそう言って俺の後ろに戻り、ブリュンヒルトはやっと息を吐いた。


「…わ、悪かったわ。そんなに大事な剣とは知らず…だけど、不意を突いたとはいえ、私のミスリルの剣を弾くとは…さては貴方も名のある人物とお見受けするわ」


ブリュンヒルトはそう言ってローレルを見たが、ローレルは肩を竦めて自分の名を言うに留めた。


「ローレル…いや、自分が知らないだけで必ず何処かで名が通っているはず…」


ブリュンヒルトは考え込むように顎に手を当てて首を捻っている。


おい、お前のミスリルの剣が村長の家に刺さったままだぞ。


俺はそんなことを思いながら考え込むブリュンヒルトを眺めていた。


「あのさぁ、ローレルに用事があって来たんならもう僕たちも帰るよ? いい?」


暇を持て余してきたラグレイトが横からそう言って口を挟むと、ブリュンヒルトはハッとした顔になって俺を見た。


「そ、そうだったわね。それで、レンって言ったかしら。ランブラスで活動するBランク冒険者。まだ冒険者登録して数日とかいう驚異の新人…」


「冒険者ギルドで聞いてきたか? まあ、もう少し暇になったら冒険者活動を再開するぞ」


「国を作ったって聞いたけど、冒険者活動なんて出来ないんじゃないの?」


俺がブリュンヒルトの台詞に肯定を示すと、ブリュンヒルトは胡散臭そうな顔で俺を見た。


「俺には優秀な部下がたくさんいるんでね」


俺がそう答えると、ブリュンヒルトは腕を組んで俺を見据える。


「そう、それよ。竜騎士という噂が本当なら、その国には何人も英雄がいるはずよ。私はそれに興味があるの」


「ああ、なるほど。それで、英雄がどれくらい強いか戦ってみたいと?」


俺がブリュンヒルトの言いたいであろうことを先に口にすると、ブリュンヒルトは不敵に笑った。


「まずは、やはり竜騎士様ご本人と戦いたいわ」


「やだよ、面倒臭い」


「はっ!?」


ブリュンヒルトの如何にも脳筋な台詞に俺は思わず本音が口から出てしまった。


ブリュンヒルトはそんな俺を見て肩を怒らせる。


「臆したわね! 私の力を確かめもせずに退くとは…やはりただの馬鹿だったわけね?」


ブリュンヒルトは見え見えの挑発をすると、俺を嘲笑うように顔を歪めた。


いやいや、もう少し頭を捻って挑発しろよ。


俺はそんなことを思いながら溜め息混じりにブリュンヒルトを見ていたのだが、1人だけブリュンヒルトの挑発を真っ向から受け止めた奴がいた。


サニーだ。


「と、止まれ、サニー! 撃つな!」


高位魔術の気配に慌てた俺が声を荒げると、サニーは炎の纏いつつ右手の手の平をブリュンヒルトに向けていた。


「な、に…無詠唱!?」


ブリュンヒルトは驚愕の表情でサニーを見てそう口にすると、背中に括り付けていた盾を取り出した。


「だけど、今撃たなかったのが運の尽きね。この盾には魔術刻印という失われた技術が詰め込まれているわ! 詠唱を破棄した速度重視の魔術じゃあキズ一つ付けられないわ!」


ブリュンヒルトがそう口にすると、サニーから魔術とは別の炎が湧き上がった気がした。


「アブレーションレーザー」


サニーが一言そう口にすると、一瞬サニーに眼から赤い線が疾ったように見えた。


同時に、ブリュンヒルトの持つ盾が半分に切れて地面に落下する。


切断面は焼け溶けたような見た目だった。


ブリュンヒルトは何が起きたのか頭で理解出来ずに固まってしまい、サニーはそんなブリュンヒルトに冷笑を向けた。


「低位の魔術刻印…弱い」


サニーは言葉少なめにそう呟くと、ハッとした顔になって俺を見上げた。


俺は怒りを顔で表現し、無言でサニーを見下ろし続ける。


やがて、サニーは悲しそうに項垂れると、静かに一番後方、ラグレイトの向こう側まで戻った。


「…諦めろ。お前はまだまだ実力が足りていない。大体、お前の特技はなんだ? 剣だろう? その剣が無い状態でよくそんな台詞を口に…」


俺が説教紛いの台詞を口にしていると、ブリュンヒルトが肩を小刻みに震わせて顔を上げた。


「わ、私は魔法剣士よ! 剣は攻撃手段の一つでしかないわ!」


「…何?」


俺はブリュンヒルトの言葉に思わず目を尖らせた。


魔法剣士は比較的条件の優しい最上級職だ。


だが、第一条件に剣士と魔術士の習熟度を最大にするというものがある。


まさか、本当に不意を突かれただけで、実力的には我がギルドメンバーとも戦えるくらいの力はあるのだろうか。


「…興味が湧いた。俺が戦ってやろう」


俺がそう言うと、ブリュンヒルトはぐっと歯を食いしばり顎を引いた。


「よし、ちょっと待っていなさい!」


ブリュンヒルトは力の籠った目で俺にそう言うと、走って村長の家まで向かっていった。







ブリュンヒルトが体勢を整えてミスリルの剣を構える。


場所はグラード村の正面だ。


俺も一応愛剣のクーポン剣を取り出して構えている。


「さあ、いくわよ」


「ああ、いつでも来い」


俺はブリュンヒルトに応えながら無詠唱で結界を張っていく。


三重に張れば大丈夫か?


俺はそんなことを思いながら多重結界を自分の周りに張った。


「まずは、これよ! 来たれ大地を焼く地獄の炎…」


ブリュンヒルトは素早く動きながら炎系魔術の詠唱を口にする。


だが、撃とうとしているのは初級の中で強い程度の炎の球をいくつか撃ち出す魔術だ。


それでは結界を1枚たりとも破れないだろう。


「いや、決め付けるのは早いか…」


同じ魔術であっても威力が違う可能性はある。


俺はそう思い返し、全力で相手をする為に走るブリュンヒルトに剣の切っ先を向けた。


「ブレイジングフレイム!」


俺が剣先を動かすのとほぼ同時に、ブリュンヒルトの魔術が発動した。


直径50センチ以上はありそうな炎の球が二つ、燃え盛りながら俺に迫る。


が、俺の張った結界の一つ目の結界に触れた瞬間霧散した。


「なっ!?」


ブリュンヒルトの魔術が消し飛んだと同時に、俺は走り回るブリュンヒルトの背後をとった。


そして、片手でブリュンヒルトの剣を持つ手の手首を握り、捻り上げた。


「い、いつの間に…!?」


俺に手首を極められつつ背後をとられたブリュンヒルトは力無く剣を地面に落とすと、肩を落とした。


「…参ったわ。完敗よ」


え、弱くない?












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