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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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城が出来た! 今日はパーティーだ!

城造りを始めて3日目。


城が完成した。


うん、何かおかしな気がするが、間違いではない。


城が完成したのだ。


俺は陽の光を浴びて煌めく白銀の城を見て小さく頷いた。


めっちゃカッコいいです。


「お、おお…なんという城だ…」


「あれが、神の代行者様の新たなる城…」


城を見上げる俺やギルドメンバーの背後ではグラード村の村人達が感嘆の声を上げていた。


「満足いく出来ね、ボス? ところで、この城の名前はなんて言うのかしら?」


ディグニティが嬉しそうに体をクネらせながら俺にそう尋ねると、自然と、まるで声が波が引くように収まっていった。


静かに俺の言葉を待つギルドメンバーと村人達を前に、俺は何となく決めていた名を口にする。


「ヴァル、ヴァルハラだ」


ちょっと恥ずかしかった為、俺は大事なところで噛んでしまった。


「ヴァル・ヴァルハラ城ね? 良いんじゃないかしら?」


「ヴァル・ヴァルハラ城! 素晴らしい名前です、殿!」


「ヴァル・ヴァルハラ城…」


「おお、な、なんと神々しい名だ…ヴァル・ヴァルハラ城…」


ちょっと待て。それは正式に発表した名前では無い!


俺は発言を撤回して改めて名前を発表したかったが、もはやそんな空気では無くなっていた。


皆が俺にとって恥ずかしい名前になった城の名前を連呼する中、俺は現実逃避の為に白銀の城を遠い目で見つめる。


まあ、ゲームのノリでアシタノ城とかにしなかっただけ良かったとしておこう。


城の名前には問題があったが、新たなる城は完成したし、夕方にはグラード村と城を繋ぐ橋も含めて三つの橋が水路に架かった。


「皆、ご苦労! 今日の作業はここまでだ。後は、ここに残る村人を除いて全員を我らが拠点に案内するとしよう。村長、村には何人残すんだ?」


俺が聞くと、村長は村人を見回して口を開いた。


「そ、そうですな。やはり、半数は残さないと村を守るといった部分もありますから…60名ほど行かせてもらいたいと思いますが、大丈夫でしょうか?」


村長は申し訳なさそうにそう言って俺を見た。


まあ、今回は飛翔魔術を使えるメンバーが多くいるから全く問題は無いだろう。


俺は頷くと、村人達を見た。


「今回は60名を招待するとしよう。残りはまた次回に必ず招待するから安心して待つといい」


俺がそう言うと、集まった村人達から歓声が上がる。


「前半と後半に分けて交互に連れて行けば1日で全員を招待出来るんじゃないの?」


俺の斜め後ろからラグレイトが小さな声でそんなことを言ってきた。


何を言っているんだ、こいつは。


俺は眉間に皺を寄せて首を横に振ると、ラグレイトを横目に見て口を開いた。


「8時までに帰らないと、門限を過ぎてしまう」


「へ?」


俺の発言に何を思ったのか、ラグレイトは間の抜けた顔で疑問符をあげた。







飛翔魔術で村人達をジーアイ城まで運び、俺達は皆で揃って食堂に移動した。


途中、初めて空を飛ぶ体験をした村人達の何人かが気絶してしまうハプニングはあったが、概ね問題は無かった。


ちなみに、ジーアイ城についてからも村人達は驚き続けていたので、食堂にミエラとシェリーが料理を運んできた時には驚きが一周回ってしまって冷静になったのか、普通に料理を受け取っていた。


「美味い!」


「お、美味しい…これ、なんのお肉?」


村人達からそんな、料理を絶賛する声が聞こえてきた。


勿論、俺も分からない。


以前に出て来た猪とか鹿らしき動物の肉とは違うようだが。


「何の肉だ?」


俺がこっそりと隣に座るエレノアに尋ねると、エレノアは口元をハンカチで拭いてから口を開いた。


「ワニラクダの肉のようですね。部位はコブの部分と聞いております」


「…ああ、あの謎の生物か。そうか、あいつ、美味かったのか」


俺は何とも複雑な気分で皿に乗った肉を見下ろした。


味付けも薄味ながら複雑で肉の旨みを引き出すようなソースがかけられているが、単純にこの肉は美味しかった。


米が欲しい味だ。


仕方ないので、村人達にも配っている蒸留酒に口をつける。


度数が20を超える蒸留酒だが、一応果実水も横に並べている為、皆が美味しそうに呑んでいる。


これがこの世界のカクテルの起源になったりしたら嬉しいものだ。


俺がそんなことを考えていると、蒸留酒を片手に持った村長が足元をふらつかせて歩いてきた。


「代行者様! このような宴を催していただき、感謝が溢れて参りまーす!」


「村長、酔い過ぎだ」


俺が顔を顰めてそう言うと、村長は胸を張って自分のその胸を叩いた。


「ぐふっ! わ、私はグラード村の村長、デンマですぞ! 酒に溺れるような根性無しでは村長は務まりませんからな! さあ、一緒に一杯付き合ってくだされ!」


「おいおい、大丈夫か? もう止めておけよ」


俺がそう言ってデンマの持つ酒を奪い取ると、デンマは歯を見せて笑った。


「おお! 流石は代行者様! 丸ごと一気飲みですな!? さあ、皆で手拍子だ、手拍子! へい! へい!」


と、デンマは酒瓶を持った俺を見ながら両手の掌を頭の上で合わせ始めた。


異世界にも飲みハラがあったらしい。


ちなみに、村長ほど酔っていなかった他の村人達は一様に村長の暴挙を見て青ざめてしまっている。


空気が冷え込む気配に俺がどうしたものか思案していると、横から男の手が伸びて村長を羽交い締めにした。


「止めんか、村長」


現れたのはダンだった。


ダンはいつもの服装ではなく、なんと下位の竜種であるレッサードラゴンの鱗の軽鎧に身を包んだ姿だった。


しかし、顔は生傷だらけである。


「むぐ…は、離せ! 私は代行者様と楽しく酒を、酒を呑みまーす!」


「いつもながら酒癖の悪い…レン様、この馬鹿は俺が引き取ります」


「ああ、頼んだ」


俺がダンにそう言うと、ダンは頷いて泥酔した村長を肩に担いだ。


まるで大きな枕でも担ぐように軽々と村長を運ぶダンを見て、俺は首を傾げた。


「なんか、ダンの力が随分と増しているようだが」


俺が呟くと、エレノアが頷いた。


「はい。まだ今は自主訓練とその辺りのモンスターを狩ることで練習としていますが、それでも実力不足の為に装備品で補っております。能力アップのバングルと指輪をつけたおかげで、それなりの力と反射神経、速度を得ました」


「ああ、あの余ってるやつか。それだけで随分見違えたな」


俺はエレノアの説明に感心の意を示した。


正直、この世界にゲームの時のようなレベルアップや、もしかしたらステータスという概念自体が当て嵌まらない可能性も考えていた。


だが、ダンのあの様子ならば成長次第では検証実験を行っても良いかもしれない。


城下町建設を完了した後に、異世界人の成長強化の実験を行うのも楽しいかもしれないな。


酔っ払いが退場して宴はまた平和になったのか、ゆるゆると夜まで続き、村人達をグラード村に送り届けたのは夜中になってからだった。


泥酔したままの村長は他の村人に引っ張られて村長の家に転がされていた。


呑み過ぎには気をつけよう。


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