試しに城建設!?
土系魔術による土壁。
ゲーム中では魔術士が前衛代わりに設置して時間を稼ぐ魔術だったが、俺達は今、その魔術に新たなる可能性を見出している。
ジーアイ城から魔術士を5人呼びに行き、ついでに錬金術士であるミラにも来てもらい、早速建設に取り掛かってみようかと思った。
だが、一緒にしがみ付いてきたディグニティが土地に対して文句を言った。
建設に不向きな大地だそうだ。
文字通りブーブー文句を言うディグニティに、俺は魔術士達に地ならしを頼んだ。
土系魔術のサンドカッターで少し斜めに盛り上がっていた丘を切り裂き、真っ平らな大地を作ったのだ。
「お、おお…なんという…!」
見学している村人達が驚愕の声を上げるが、まだまだこれからである。
「次はまず一階の壁を作ってみるか?」
俺が真っ平らな大地を見てディグニティにそう聞くと、ディグニティは真顔で地面に横顔をくっ付けていた。
「…何をしてるんだ」
「大地の声を聞いているのよ?」
恥ずかしいので止めてください。
俺が疲労感と共にディグニティを眺めていると、ディグニティは立ち上がって両手を広げた。
「いいわ! 決まったわよ!? 作るのは天井を思い切り高くした三階建てね!?」
「なんだ、三階建てか」
随分と興奮しながら声をあげるディグニティに俺が軽くそう返事をすると、ディグニティは目を見開いて俺を見た。
「天井が高ーい三階建てよ? いい? 見てなさいね?」
ディグニティは念押しするようにそう言うと、魔術士達に目を向けた。
「いいわね? 20メートルの高さの壁を作るわよ? 厚さは錬金スキルを試すことも考えて、3メートルかしら? 長さは1枚目は100メートルね?」
ディグニティがそう言うと、魔術士達はそれぞれ返事をして言われた通りに土壁を作った。
急に巨大な壁が聳え立ち、村人達は声も出せないでいる。
そんな村人の反応なぞ歯牙にもかけず、ディグニティは出来上がった壁を見てから頷いた。
「いいわよ? さあ、次は反対側に回って左右をやってみましょう?」
そう言うと、ディグニティは魔術士達と連れ立って壁の向こう側に向かった。
俺はこちらに残っているミラに顔を向けて土の壁を指差した。
「ミラ、あの土の壁だと錬金スキルを使うとどうなる? そのまま建材として使えるようになるか?」
「あ、試してみますね」
俺が尋ねると、ミラは駆け足で壁に向かって走って行った。
そして、1番左端の部分に手を当てて唸る。
「ん〜…錬金すると…」
ミラは暫くそこにいたが、程なくしてまたこちらへ帰ってきた。
「レンガ、石壁が出来ますね。石壁よりもレンガ造りの方が硬度、粘りがある壁に出来そうです」
「じゃあレンガにしようか。やってみてくれ」
俺はミラの報告に軽く答えたが、ミラは一度壁を見上げて俺に視線を戻した。そして、もう一度壁を見上げてから再度俺に視線を向け、頷いた。
「…頑張ります!」
そして、ミラは頑張った。
もう1人くらい錬金術士を連れて来てやれば良かったか。
その日の夕方。
なんと、城の大まかな形が出来上がった。
高さは予定より低くなり50メートル。その代わり幅は300メートル、奥行きも300メートルである。
総レンガ造りの武骨な三角形となっている。
途中で村人達から差し入れなどがあり、休憩は何度か挟んだが、まさかの半日でこれだけ大きな城が建ってしまった。
ちなみに、流石にミラが可哀想になってきたので錬金術士を2人追加で連れて来ている。
「し、信じられません…まさか、城が出来上がってしまうとは…それも、こんなに立派な…」
村長が俺達の後ろからそんな感想を漏らした。
「いや、まだ壁と天井、柱の中身だけしか出来ていない」
俺がそう言うと、村長を含む村人達が揃って俺を見た。
「まだですか? これ以上って…ああ、装飾や窓とかですか?」
村人よりも城などを見慣れているのか、比較的冷静なシェリーが俺にそう聞いてきた。
俺はシェリーに顔を向けると、口の端を上げて頷いた。
「まあ、似たようなものだ」
俺がそう言って笑うと、何故かシェリーが固まった。
シェリーが口を半開きにしたまま動かなくなったのでどうしようかと考えていると、デンマが口を開いた。
「ささ、皆さんお疲れでしょう! 是非我が村にてゆっくり休んでくだされ!」
デンマが気合いの入った声で俺達ギルドメンバーを歓迎してくれた。
「ありがとう。俺達全員で大丈夫なのか?」
俺は護衛のサイノス達、魔術士達、ミラを含む錬金術士達を順番に見てから村長を見た。
俺とディグニティを入れれば総勢15人だ。
小さな村では中々大変かもしれない人数だが、村長は気合い十分といった面持ちだ。
「任せてくだされ! いずれ代行者様の城下町を預かる身ですぞ! このぐらい…」
「何を勝手に町長になってるんだ。それはレン殿が決めることだろうが」
「な、なな、何を言う! この村を見事に纏め上げて早15年! 私以外にそんな大役が務まるか!」
「だから、決めるのは村長じゃないだろう」
2人がまた言い争いを始めると、それまで静観していたミエラが俺を見て口を開いた。
「本当に申し訳ございません…少し失礼します」
ミエラはそう言うと2人の間に入るように立ち、2人の耳を片方ずつ指で摘み上げた。
「ぬぐっ!?」
「いっ!?」
ミエラは痛がる2人を横目に見て、小さな声で呟いた。
「王の御前でしょう? お静かに」
ミエラがそう口にすると、2人は何も言えなくなり静かに跪いて俺に頭を下げた。
俺よりも貫禄ありませんか、ミエラさん。
結局、俺達は村で夜食をご馳走されることになり、色んな意味で脈を速めながら食事を頂いた。
俺は異世界に来て、基本的には問題が無さそうな食事しか選んでいない。
こういう、料理人のおまかせコース的なものは意図的に避けてきたきらいがある。
何故か。
恐いからだ。
俺は東南アジアやアフリカなど、先進国以外での食事に若干の不安感を持っている。
焼いていても生焼けで、食べたら腹を壊すんじゃないか。
そんな失礼なことがどうしても頭を過る。
しかし、意を決してスープの無い麺類らしきものを食べてみたら、意外にも美味しかった。
少し甘辛い味付けだ。
次に大丈夫そうな見た目のスープに口をつけた。
薄い茶色の底の浅い皿に注がれたボルシチ風のスープ。食器をレンゲのようなスプーンがあった。
味は辛味が強いが美味しい。具は芋みたいだった。
俺達への歓待の為に貴重な材料を使っている可能性もあるが、案外、豊富な香辛料があるのかもしれない。
これは、是が非でも国を発展させて様々な品が国内に行き渡るようにしなければならない。
「どうですか、我が村の料理は」
国の将来に想いを馳せていると、村長が料理についての感想を求めてきた。
うむ、食べて押し黙っていたら失礼か。
「いや、美味いぞ。満足した。素晴らしい料理だ」
俺が一旦食器を置いてそう伝えると、村長も喜んで頷いた。
後から聞く話によると、料理はミエラが作ったらしい。
ミエラの厨房入りが決まった。




