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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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建国アピールの為に

雲と並ぶ高度で飛ぶドラゴン形態のラグレイトの上でソアラが俺の肩を揉んでいた。


「我が君、本当に見事な勝利でした。流石でございます」


「まあ、俺は大したことはしてないが。ん、そこがいいな。うん」


俺はソアラの労いに曖昧に答えながら丁度良い塩梅の肩揉みを満喫していた。


「大将。伯爵には何て言うの? 流石にどうやってあの大軍勢を…って話になるでしょ?」


セディアが俺の隣にきてそんなことを聞いてきた。


「そうだな。竜騎士というのが随分と喜ばれそうだ。派手に戦った跡地は出来たし、それなりに後世に残りそうな戦争に整えるとしようか。召喚とかは言わない方が良いか」


「私も竜騎士になりたい」


「サニーは無理だろ」


俺はセディアと会話中に顔を出したサニーの希望に優しく返事を返すと、サニーが頬を膨らませた。


「今日はまたマスターに乗」


「ぬあぁあっ!?」


俺は爆弾発言をしようとしたサニーを後ろから羽交い締めにすると両手でサニーの口を封じた。


セディアからは冷たい目で見られている気がするが、俺はそちらを見ないようにしてサイノスに声をかけた。


「伯爵の城は見えたか?」


「もう目の前です、殿!」


「よし、さあ国興しだ! 今日は忙しいぞ!」


俺がそう言うと、ラグレイトが僅かに速度を落として地上へ降下し始めた。


ドラゴン形態のラグレイトを連れて竜騎士のような形で降下するのは初めてになるので、伯爵の居城では蜂の巣を突ついたような騒ぎになっているようだ。


下方から聞こえてくる様々な声を聞きながら、俺達は伯爵の城の中庭の部分に着陸した。


明るい茶色の土肌が見えるその中庭は、普段は鍛錬場にもしてあるのかもしれない。端には木が並ぶが、中央は広くスペースを確保されていた。


俺達が降り立つと、遠巻きにかなりの騎士や使用人が顔を出してくる。


「れ、レン殿!? そのドラゴンは…」


僅かに遅れてビリアーズ伯爵が中庭に姿を現した。


「俺の部下だ」


俺がそう説明すると、周囲の人集りの方から騒めきが聞こえてくる。


「な、なんと…いや、ボワレイ男爵から聞いてはいましたが…」


伯爵は言葉も最後まで出てこないほど驚きながら黒い龍に目を奪われていたが、ふと思い出したように顔を上げた。


「おお! そのドラゴンを操り、あのガラン皇国の軍と交戦するのですな!」


伯爵がそう言うと、俺は他の者の目を意識して口を開く。


「いや、もう全滅させたぞ」


俺がそう答えると、伯爵は愕然とした顔を浮かべて俺を見上げた。周囲の人々も口々に驚きの声を上げている。


「ま、まさか…ガラン皇国軍は十万近くいたのでは? それをこんな短時間で…」


「八万だったな。今は国境に配備されていた常駐軍の将軍であるデニスとかいう者に伝えて確認してもらっている。明日にはこちらにも情報が届くだろう」


伯爵の質問に俺があっさりとそう答えると、周囲の人々の声は一段と大きくなった。


そこで、伯爵は俺の意図を理解したのか、周囲の人々を横目で一瞥して俺を見上げた。


「どうやってそんな偉業を? 八万などという大軍勢相手に此れ程の短時間で壊滅的打撃を与えるなど、倍以上の数で挟撃でもせねば不可能でしょう」


伯爵にそう言われ、俺はラグレイトの頭に手を置いて頷いた。


「普通ならばそうだろう。ガラン皇国軍は随分と長い槍を使って盾で体を隠しながら向かってきた。まともに当たれば中々潰すのに時間が掛かる。だが、俺にはこいつがいる。真正面から飛び、上空からブレスでガラン皇国軍の真ん中を一直線に切り裂いた。指揮官も多く失っただろうな。その混乱の最中、仲間の魔術士と俺で空中から炎の塊を無数に降らした。敵が逃げられないように地形も多少変えたが、一度見てみると良い」


俺がそう戦争の内容を脚色して伝えると、周囲からは歓声すら混じり出した。


話を聞くだけなら完全に物語に出てくる英雄譚の一節だ。


地球の神話に出てくる英雄も味方から見れば英雄だが、戦う相手から見れば虐殺者だからな。


昔のヨーロッパではギロチンによる処刑は市民が喜ぶようなショーになっていたと聞くし、こういう英雄譚は人気が出るだろう。


なにせ、これからはその英雄が王になるかもしれないのだから。


「何という…流石は竜騎士、いや、流石はレン殿ですな。国を興すと聞いておりますが、そのお名前を聞いても?」


伯爵にそう聞かれ、俺はふと正気に戻った。戦争の開始前から随分と緊張し、頭には熱が篭っていたらしい。


国の名前を決めていなかった。


伯爵の質問は最高のセリフ、最高のタイミングだった。


だが、俺がそれに応えられない。ここで伯爵に建国宣言をして、一気に新しい国の情報をレンブラント王国に広めてもらわねばならないというのに。


まさか、レンレン王国なんて、楽しい動物園みたいな名前にするわけにはいかん。


と、そのゲーム用に作った名前を思い出して俺は口を開いた。


「エインヘリアル」


俺がそう呟くと、伯爵は片方の眉を上げて俺を見た。


「エインヘリアル…竜騎士の国、エインヘリアルですか」


伯爵が俺の言葉を復唱すると、辺りから次々と同じ単語が聞こえてくる。


ゲームのタイトルなのだが、俺からしたら聞き慣れた名前だから馴染みやすい。


この世界では竜騎士は神の代行者の1人であり、神話や英雄の物語に出てくる登場人物なのだ。


地球のものではあるが、こちらも神話だ。


北欧神話の中に出てくる、死せる戦士達とも訳される神の宮殿にて戦い続ける不死身の戦士達。


まさに、俺が誇るギルドメンバーに相応しい名前だ。


その場合はその国の王である俺が主神オーディンとなるわけだが、 流石に神は名乗れないので却下だな。


俺がそんな無意味なことを考えていると、伯爵が俺に頭を下げた。


「新たなる国、エインヘリアルの国王陛下に敬意と謝辞を。我が領土を護っていただき、感謝の念に堪えません」


「気にするな。では、俺達は一度ガラン皇国に赴く」


俺が伯爵にそう伝えると、伯爵は目を丸くした。


「な、それは…いや、レン殿ならば大丈夫なのでしょうな。自殺行為であるとお諌めしようかと思いましたが、余計な危惧でありましょう」


伯爵はそう言うと、また深く一礼した。


大国、レンブラント王国の大貴族が敬意を表し、新たなる国の王であると明言したのだ。


これほどセンセーショナルなニュースが立ち消えることは無いだろう。


これでレンブラント王国の方は伯爵に任せて問題無いはずだ。


俺は伯爵と一言二言別れの挨拶をしてラグレイトにまた飛んでもらった。


次は今日の最後の仕事、ガラン皇国に建国を伝えに行かねばならない。








ガラン皇国、レンブラント王国と接する防衛都市アルダ。


町民はレンブラント王国と正式に開戦するかもしれないなんて知らないのだろう。街は夕方ながら良く賑わっている。


威勢の良い商人の声を聞きながら、俺達はアルダを治める代官であるトゥランの屋敷へと向かった。


トゥランの屋敷の前には2人の門番が立っていて、近付いてくる俺達の姿を観察するように見た。


そして、右側の門番が浅く頷いて俺の顔を見た。


「確か、ボワレイ男爵殿の護衛の者ですな? 何かご用でも?」


「トゥラン代官に用があるが、いるか?」


俺がそう聞くと門番は眉間に皺を寄せたが、また無表情に戻り頷いた。


どうも、この世界に来て目上でも関係なく丁寧な言葉遣いが出来ない。


いや、したくないというべきか。


何故か丁寧な対応をしようということさえ思い浮かばず、今の門番がしたように態度に出ると気がつくといった始末だ。


俺が自身の変化に首を傾げていると、門番は咳払いを一つして口を開いた。


「一度トゥラン様に聞いて参るので暫く待たれよ」


門番がそう言うと、左側の門番が屋敷へと入っていった。


暫くして、門番が出てくると俺に向き直って口を開いた。


「トゥラン様がお会いになるそうだ。こちらへ」


門番はそう言うと俺達の返事を待たずに背を向けて先を歩き出した。


俺達はその後に続きトゥランの屋敷へと入った。


執務室に入ると、トゥランが先日と同じ感情の読めない笑顔を浮かべて待っていた。


さあ、建国宣言だ。



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