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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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ガラン皇国軍の壊滅

俺が地上に降り立った時には、炎の竜巻も、降り注ぐ氷塊も、周囲を切り刻む風の刃も、全て消え去っていた。


残ったのは荒れ果てた大地とガラン皇国軍の兵士達の無数の死体だ。


想像を絶する惨状だが、そのあまりの光景に俺は現実感が全く湧かないでいた。


「御見事です、お屋形様。まさか、八万にもなる大軍を殲滅とは…私の計算では相手の兵士達の実力次第では突破される可能性も考えていたのですが」


ミレーニアにそう言われて、俺は曖昧に笑って首を傾げた。


「お前の想定はギルド対抗戦を元に考えていたんだろ? それなら仕方ないさ。最悪の事態を想定するのは悪くない。まあ、確かに想像を超えた弱さだったが…」


俺はミレーニアにそう返事を返すと、集まっているギルドメンバーを見た。


一部の気配察知スキルを持つメンバーは周囲の警戒と生き残りがいないか探索に向かっている。


「皆、ご苦労。これから俺、サイノス、セディア、サニー以外はジーアイ城に戻っておいてくれ。エレノア、俺のいない間のジーアイ城を頼んだぞ」


「はい!」


俺がそう言うと、エレノアはやけにしっかりとした返事を返した。


思わず、俺がエレノアの顔を怪訝な顔で見ていると、ラグレイトが片手を上げた。


「龍人の僕も連れて行っておくと便利かもしれないよ、我が主」


「ふむ、そうだな…伯爵もドラゴンに敏感に反応していたからな。連れて行こうか」


俺がラグレイトの意見を採用すると、ラグレイトは金髪を揺らしてガッツポーズをとった。


「我が君、回復魔術士はいかがでしょう?」


「ん? サニーが上級までは使えるが…まあ戦争中だからな。よし、ソアラも来い」


狐の耳を揺らしたソアラがラグレイトに続いて同行を求め、俺は思案しながらも同意した。ソアラは静かに耳を揺らして口元を緩めている。


「よし、じゃあラグレイトにドラゴン形態になってもらおうか。イメージ戦略だ」


「イメージ? ああ、僕を広告塔に使うのか。よし、炎か雷を纏っていくかい?」


「止めろ、皆逃げるだろ」








遠く、舗装の行き届いてない街道の向こう側で、大地を揺るがすような轟音が鳴り響き、部下達は足を止めて背後を振り返り、戦列を乱す者が多く出た。


「足並みを乱すな! 前を向き前進するのだ!」


私が周囲を一喝しても、兵士達の混乱は収まらない。


「し、将軍! しかし、あのた、たた、戦いは!? まるで神々の闘争ではありませんか!」


「千人長! 勝手な発言は厳罰に処すぞ! 黙って進め!」


私は部下に怒鳴りながら、馬上から背後を盗み見た。


先程まで、空は赤く染まり、炎の竜巻が巻き起こっていたが、千人長の発言の前に起きた一際大きな地鳴りの後は何も聞こえなくなっていた。


あの戦いは我々、ヒト族もエルフも獣人もドワーフも関係無く、全ての人類が触れてはならない類のものだ。


例え、あのガラン皇国の大軍勢であろうと、直様壊滅するだけだろう。


いったい、彼らは何者なのか。


あのような、恐ろしい魔術はレンブラント王国には、いや、この世界の何処にも存在しないはずだ。


ならば、あれをやったのは、装備が統一されていない冒険者風の姿をしていたあの一団によるものだろう。


私が畏怖と何か期待のようなものが綯い交ぜになった感情を胸の内で持て余していると、後方の兵士達からどよめきが伝わってきた。


「なんだ! どうした!?」


私が怒鳴り声を上げて背後を振り返ると、軍の隊列は大いに乱れ、口々に何か訳の分からないことを叫ぶ兵士達の姿があった。


「隊列を揃えろ! 貴様ら、落ち着…っ!?」


私が部下達に向けて再度怒鳴ろうとしたその時、私の周囲を巨大な影が覆った。


皆が上を見上げる姿を視界に入れつつ、私も天を仰ぎ見た。


「ど、ドラゴンだ…」


太陽の光を鈍く反射する黒いドラゴンが空を優雅に飛んでいたのだ。


私も初めて見たが、その威容はやはり、生物の頂点とも言われるだけの迫力に満ちていた。


ドラゴンは私達の頭上をグルリと周ると、我らの先頭へ向かって降りてきた。


「た、隊列を組め! ファランクス! い、いや、左右に別れろ! ドラゴンの正面に立つな! ブレスが来るぞ!」


呆然としていた私だったが、ドラゴンが近付いて来るのを確認して速やかに指示を出した。


初めてのドラゴンとの遭遇でありながら、私は自分の冷静沈着ぶりを自ら賞賛する。


素晴らしい指揮だぞ、私。


そんな私ならば、必ずやドラゴンとの闘いにも生き残れる!


いや、もしかしたら討伐も出来てしまうかもしれない!


どうしよう。妻もいるのに、ドラゴンスレイヤーなんて呼ばれていると王国中の女性が私を放って置かない。仕方ない、第5…いや、第8夫人くらいならば良いだろう。


仕方ないのだ。私は英雄なのだから。優秀な私が1人しか妻を持たぬなど、世の女性が自殺してしまうかもしれないのだ。


しかし、妻はドラゴンより怖いし…。


「…ぐん! 将軍! ど、ドラゴンに人が! 将軍! 聞いておられますか!?」


煩いな、この千人長。降格にしてやろうか。


私がこの国の未来を憂いているというのに、空気を読まない古参の千人長が大声を出してきた。耳がキーンとする。


「ドラゴンは人を喰うのだ。知らないのか」


「違いますよ、馬鹿野郎! 竜騎士です! ドラゴンを操る人間がドラゴンの背に乗って地上へ!」


「なに? 竜騎士だと?」


それは困る。ドラゴンが退治出来ないではないか。


私が地上へ舞い降りたドラゴンに目を向けると、そこには確かに5人の人影があった。


え? 竜騎士?


「馬鹿者! 早くそれを言わんか、千人長!」


私が正確な報告をしなかった千人長に怒鳴りつけると、千人長は凄く嫌な顔で私を見た。


なんだ、この不敬な奴は。降格にしてやる。


一瞬そんなことを考えた私だったが、今はそれどころではない。


「竜騎士ならば最大級の厚遇で迎えねばならん! 太古の時代、竜騎士は常に神の代行者だった! 知らんのか、千人長!」


「知ってるに決まってるだろ!」


「なんだ、その言葉使いは!?」


私は元千人長と文句を言い合いながら大急ぎでドラゴンの下へ馬を走らせた。


兵達の隊列が乱れて左右に分かれている為走りやすいが、何故こんなに隊列が乱れているのか。


仕方ないことだろうが、皆が私のように冷静沈着にはなれなかったのだな。


程なくドラゴンの前に辿り着くと、ドラゴンの背に乗った眉目秀麗な黒い髪の男が…。


「む、その方ら…いや、貴方方は、先ほどの」


私がそう言って馬から降りると、ドラゴンの背に乗った、エルフと見間違うばかりに美形な男が地面に飛び降り、これまた美男美女ばかりの獣人とエルフも地面に降りた。


「ガラン皇国軍を殲滅してきたぞ」


「…今なんと?」


先頭の男が発した台詞が唐突過ぎて、私は思わず聞き返してしまった。


すると、男は腕を組んでもう一度口を開いた。


「ガラン皇国軍は壊滅した。まあ、恐らくだが1人も逃していないはずだ。一応確認しておいてくれ」


男はそう言うとまたドラゴンの背に飛び乗った。


「あ、貴方様はいったい…」


隣に立つ新百人長がまたも勝手に言葉を発した。


馬鹿者めが。竜騎士に決まっているだろう!


私が内心憤慨していると、ドラゴンに乗った男は愉快そうに笑って口を開いた。


「新しく国を興し、王を名乗らせてもらう、レンだ。ビリアーズ伯爵の辺境領も俺の国に入る予定だからな。もしかしたら、お前達も我が国の民になるかもしれんな。その時は宜しく頼む」


「な、なんと! 竜騎士様の国が建つと!?」


男は我々の驚く様を見ると楽しそうに笑っていた。


ドラゴンが翼をはためかせて浮かび上がる中、我々は混乱から抜け出すことは無かった。


だから嫌なのだ、僻地勤務は。


情報が古いままでいつも取り残される。


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