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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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王国東部の様子を見に行きたーいのに行けなーい

フラグを立ててしまったので、そのフラグを自らヘシ折らねばならない。


まずは万全を期す為に敵情視察である。


俺はそう判断し、連れて行く予定のメンバーを呼んだ。


サイノス、サニー、セディアはもう居るが、他のメンバーがまだ来ていない。


と、正門前で待つ俺の元へ、ダンとシェリー、ミエラの親子が現れた。


相変わらず、ダンは輝いている。鎧のせいで。


「レン様。何卒、俺とシェリーをお連れください。必ず役に立って見せます」


「が、頑張ります!」


二人はそう言ってこちらを見た。


だが、今回の相手は少々薄気味悪い。果たして、この二人が戦える相手なのか。


俺がそんなことを考えていると、ミエラが俺を見つめ、口を閉じたまま頭を下げた。


それを見て、俺は溜め息を吐いて頷く。


「ミエラに頼まれたら仕方がない。いつも美味しい食事を用意してくれているからな。それじゃあ、二人とも気を引き締めて付いて来い」


「は、はい!」


俺の了承に二人が威勢良く返事を返していると、丁度残りのメンバーもこちらへ到着した。


ラグレイト、ソアラ、イオ、ローレルである。


ローレルはダン親子を見て声を上げた。


「お、ダンとシェリーっちも行くのかい? 奇遇だねぇ。こっちも折角だから実践投入といきやすぜ、旦那」


ローレルがそう言って笑うと、ローレルの背後から小柄な人影が姿を現した。


オリハルコンの軽鎧に身を包んだ赤茶色の髪の少女だ。


艶やかな髪をしっとりと下ろし、何処か気負いを感じさせる程の強い眼をこちらに向けている。


メーアスでサイノスの弟子にした奴隷の少女、アンリだ。


「アンリか。いけるのか?」


俺がそう聞くと、ローレルは不敵に笑った。


「まあ、見ててくださいな、旦那。まだ俺とサイノスが動きを教えて、マジックアイテムとオリハルコンの装備一式で強化しただけですがね。元からの素質からか想像以上に強くなってますよ」


ローレルがそう言うと、アンリは一歩前に出て、口を開いた。


「…力を尽くします」


そう口にすると、アンリは一瞬サイノスに目を向けて、顎を引いた。


…サイノスの為に、か。


俺はアンリの内心が少し見えた気がして口元を緩める。


「よし。じゃあ、アンリはサイノスの援護だ。サイノスの指示に従えよ?」


俺がそう言うと、アンリはハッとした顔で俺を見上げ、すぐに目を下に向けて頭を下げた。


アンリの耳が赤くなっていることには気づかないフリをしてやるのが武士の情けである。


「じゃ、出発するとしようか。ラグレイト、変身」


「はいはい」


俺が指示を出すと、ラグレイトは雑な返事をしてさっさとドラゴンの姿へと変化してみせた。


すると、ラグレイトがドラゴンになれることを知らない一部の者が声も出せずに固まっていたが、俺達は気にせず身体を伏せたラグレイトの背に乗った。


全員が乗ると、合計で十人がラグレイトの背に乗ることになるのだが、ラグレイトの唸り声が若干面倒臭そうに聞こえるのが面白い。


そんなこんなでヴァル・ヴァルハラ城に舞い戻ったのだが、城に戻った途端ダークエルフの長、カナンに詰め寄られた。


「れ、れれれ、レン様!? か、各国の長を集めて会議をなされたと聞きましたが…!?」


カナンは顔面蒼白でそんなことを言いながら俺の目の前まで走り寄ってくる。


あ、各国の代表を呼んだのにカナンを呼んで無かったからか。


でも、ダークエルフはダークエルフの国と呼べる規模じゃない上に、今やエインヘリアルの国民だからな。


俺はそんなことを思いながら、カナンに顔を向けた。


「カナンには忙しく働いて貰っているからな。今回の会議にまで呼ぶのは可哀想かと思って…」


俺が曖昧な理由で言い訳しようとすると、カナンは目を潤ませて俺を上目遣いに見上げた。


「昨日の夜からお休みを頂いておりましたが…」


藪蛇だった。


下手な言い訳をしたせいで、俺がカナンのスケジュールに全く興味を持っていないように聞こえてしまったかもしれない。


もしや、此処で俺はフラグを回収してしまうのかもしれない。


俺はそんな恐ろしい想像をしつつ、カナンの頭の上に手を置いた。


「カナン。お前は既に俺や俺達と一心同体だろう? 会議に出なくてもお前は俺と同じ意見なんだ。ただ信じて俺に付いて来い」


俺がそう言うと、カナンは息を呑んで自らの口元に両手の手のひらを置いた。


「そ、そこまで私のことを…! も、勿論です! 私達ダークエルフ一同、地の果てまででもレン様に付いてまいります!」


カナンが感動の涙を流しながら俺にそう言い、それを見ていたセディアが笑いながら一言呟いた。


「大将も何人と結婚したら良いのやら」


セディアのその一言に心臓を直接掴まれたような驚きを受けたが、セディアの表情には特に含みは感じられなかった。


まさか、無意識に何かを察したわけじゃあるまいな。


俺は内心かなり焦りを感じながらも何とかセディアに笑みを返した。


「な、なな、何を言ってるんだ。俺に結婚なんてまだ…なぁ? ははは…」


俺が自然な態度でそう言って笑うと、セディアやカナン、シェリーの目が細く尖った。


そして、ソアラの顔はモナリザのように完璧な微笑が貼り付けられていた。


「…そうですよね。まるで近々結婚するのを誤魔化しているような態度に驚いてしまいました…我が君?」


「ひぃっ!?」


俺はまるで一部始終を目撃していたかのようなソアラのセリフに思わず悲鳴を上げてしまった。


すると、ソアラの目は遠くを見つめるように俺の目を見据えてきた。


「な、何を言うんだ、ソアラ。俺がもし結婚するならお前らに報告しないわけがないだろう?」


「報告、ですか…そうですよね。我々は従者…我が君は主君ですから…」


「い、いや、そんなことは無いんじゃないか? ただ、惜しむらくはやはり結婚する人数がいきなり多すぎるのは他国に悪い印象を…」


俺がソアラの追求に四苦八苦しながらそんな説明をしていると、ダンの後ろに立つシェリーの目が鈍く光った。


「ガラン皇国は五十人。レンブラント王国も最低でも数人は妃を選びます。インメンスタット帝国も皇帝最初の仕事は十人以上の妃選びと聞いてますが…」


シェリーがそう言うと、ソアラは我が意を得たりと深く頷いた。


「我が君が結婚する際には、是非とも十人は結婚相手を選んでもらいたいですね。ああ、従者である我々のことは気になさらないでください。我々従者は影に控え、影から我が君を支えます。それが従者の誇りですから」


ソアラがそう言うと、セディアやイオも深く頷いていた。


「い、いやいや…別に従者だからとか、そんなものは関係無くてだな…」


俺が誰に対してだかも定かでは無いフォローを口走り、それまで沈黙していたサニーが首を傾げながら口を開いた。


「マスター、結婚するの?」


サニーのその直球過ぎる一言により、皆の目から俺を射抜くような強い視線が発せられた。


俺は皆からの視線を一身に受けながら、頷く。


「へ、へい」


俺が無意識にそんなよく分からない返事をすると、辺りは騒然となってしまった。


これで、初婚なのに嫁を何人も娶ることになってしまった。


いや、後々にそれぞれと結婚する覚悟はしてたから良いんだけどさ。


本当だぞ?



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