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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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朝、エルフと獣人達泣きまくり

朝が来た。


明るくなった寝室で目を覚ました俺は、顔を光から遠ざけるように横向きに寝返りを打った。


すると、前方に柔らかい感触があった。


布団の上部には顔は出ていないが、何者かが確かに布団の中に存在している。


急に布団を捲るのも失礼かと思い、なんと無く手足を動かして何者が身を潜めているのか調査を開始する。


変な所に当たったのか、くぐもった笑い声が布団の中から聞こえた。


む、胸が無い!


ツルッツルのまな板がこんなところに!


怪奇現象か!?


思ったことがバレたのか、布団の中で太ももを抓られた。


痛い。なんて酷いことをするんだ。


「随分と楽しそうですね、ご主人様?」


「そ、そんなことないぞ?」


俺は背後から聞こえてきたそんな言葉に、思わず声を裏返らせてそう返答した。






朝は少しドタバタしたが、俺はすまし顔で玉座の間にいた。


玉座の上から、エルフと獣人の皆を見下ろしていると、どうも同盟国という雰囲気では無い感じで皆が俺を見上げている。


何故だ。もはや忠臣の目の輝きをしている。


俺はそんなことを思いながら広間を見渡し、口を開いた。


「皆、昨日は良く眠れたか?」


「はい! レン様!」


俺が一言尋ねると、全員が同時にそう返事をしてくる。リハーサルでもしてたのか、お前ら。


輝くような笑顔のエルフや獣人達を眺めていると、エルフの王、サハロセテリが口を開いた。


「神々しいまでの城、最高の食事、素晴らしい音楽、想像を絶する景色の大浴場、快適過ぎる洗練された寝室…十二分に、レン様の居城を堪能させていただきました」


サハロセテリが言葉を尽くして我が城を褒め称えると、他の者達もまた大きく頷いて同意を示した。


サハロセテリが口を閉じたのを見て、獣人の王、フウテンが口を開いた。


「獣人の国、民を代表して御礼をさせていただきます。長い年月を経て、我々は神の代行者様の従者であったことは遠い過去となり、最早実感の湧かない伝説や神話の類と感じておりました。ですが、昨日、そして今日の朝に、やはり我々は神の代行者様にお仕えした者の末裔であると確信することが出来ました」


フウテンはそう言うと、一度言葉を区切り、頭を下げた。


「つきましては…何卒、我らを従者の末席に加えていただきたく」


「ダメ」


フウテンの台詞を半ば予想していた俺はフウテンの言葉を遮って断った。


すると、フウテンは顔を上げて愕然とした表情を俺に見せた。いや、だって国はどうすんの。せっかくあれだけ出来上がった国が勿体無いじゃん。


ショックを受けている様子のフウテンをサハロセテリが同情するように横目に見ていると、ダークエルフの長であるカナンがドヤ顔で二人を見た。


「ふふふ。我らダークエルフの民はレン様の従者としてお前達の分も働いてやろう。安心して任せるが良い」


カナンがそう告げると、サハロセテリとフウテンが勢い良くカナンを見て、それから俺を見上げた。


「レン様! なぜダークエルフの者達は良いのでしょうか!?」


「国があるから不可であるというのならば、せめて半数を従者としてお仕えさせてください!」


一国の王二名が怒鳴るような声で部下にしろと訴えてきた。


何かがおかしい。


俺が頭を悩ませていると、隣に立つエレノアがそっと俺の方に顔を寄せてきた。


「ご主人様。彼らの気持ちが私には痛い程分かります。どうでしょう。受け入れ可能な人数は受け入れ、その代わり、こちらからもエルフの国と獣人の国へ交代で何人か派遣しては…そうすれば有事の際にも取れる手段は増えますし、こちらで受け入れる人数が増えれば双方にとって良い結果となるのではないでしょうか」


エレノアにそう言われ、俺は腕を組んで唸る。


従者になりたいエルフや獣人達は満足でき、人手が足りない我が国には忠誠心が高い部下が大量に増える。


そう聞けば確かに両者とも良い結果が出るが、問題は急に国民が減るエルフの国と獣人の国である。


国の運営にどれだけの人が必要なのか。


モンスターの対処だけが問題ならば解決出来るが、様々な産業に影響が出るならば許可出来ない。


何故なら、エルフの国と獣人の国は空輸産業に参加する予定だからだ。


様々な商品が出回る方が新たに加わる国は増える筈だ。そうすると、国際同盟に加盟する国も増える。


国際同盟の初代盟主になる為に奮闘している俺には好材料となるだろう。


俺はそう考えて、サハロセテリを見た。


「サハロセテリ。エルフの国で生産している品物は現在、国内でどれ程生産し、消費されている?」


俺がそう言うと、頭を捻りながらサハロセテリは口籠り、暫く間を空けて顔を上げた。


「空輸の件ですね。食料や雑貨、嗜好品など大体の物は国内で消費され尽くしています。材料となる物や、武具などには在庫が多数ありますが…」


サハロセテリは言葉にしながら俺が思っていることを理解したのだろう。徐々に声が尻すぼみになって消えてしまった。


俺はフウテンに顔を向け、同じ質問をする。


「空輸で取り扱う物ですか…我が国では、革製品や木の製品、家具、武具などから、酒、食料、絵画といった物まで、様々な物を生産しております。一部は必要になったら作る物もありますが、それ以外は備蓄があります」


フウテンはそう言って期待の籠った目で俺を見た。


俺は苦笑しながら頷き、二人を順番に見る。


「エルフの国は空輸で輸出入が出来る程度には品物を用意してほしい。もちろん、品薄になっても仕方ないが、全く品物が無いのはダメだ。獣人の国は少し余裕がありそうなので、兵士として以外にも受け入れよう。後は、両国とも子供は留学生として受け入れよう」


俺がそう言うと、サハロセテリとフウテンは両者それぞれの反応を示し、声を上げた。


サハロセテリは何とも複雑な表情で頭を下げ、了解の意を言葉にし、フウテンは嬉々として返事をした。


そんな二人に、俺は笑顔で口を開く。


「よし。それでは、同盟国としての交流も済んだことだし、皆もそれぞれの国へ帰るとするか。また飛翔魔術での帰還だ。すぐだぞ」


「え、えぇええっ!?」


俺がそう言うと、エルフや獣人の者達から絶叫にも似た悲鳴が発せられた。


いや、帰れよ。


「国の運営があるだろう? 代表もいるんだ。全員一度帰り、最初に我が国に派遣される者達を選抜してこい」


俺がそう言うと、サハロセテリとフウテンが絶望を顔いっぱいに表現した。


「い、一ヶ月…いえ、せめて一週間! こちらへは中々来ることが出来ないかもしれないのです!」


「じゅ、獣人の国には飛翔魔術を使える者が…私はもう数年は確実に来れないではありませんか!」


おい、フウテン。数年内に代表を辞めようとしているな。


俺は二人の訴えに溜息を吐き、口を開いた。


「馬鹿言え。俺は忙しいんだ。空輸産業が始まれば、多くのモノの行き来が盛んになる。物だけでなく、人も然りだ。暫くはお前達は忙しいぞ。ある程度慣れたら次代の者に引き継ぎ、お前達も自由にしていいが、この国に来るかどうかは厳密に選別されてから来い。まあ、最低でも5年に一度来れるように調整すれば四年我慢して一年とか、四年半我慢して半年とかはこちらで暮らせるだろう?」


俺がそう言うと、一拍の間を置いた後、エルフや獣人の者達の目からダムが決壊したように涙が溢れた。


嗚咽や鼻をすする音が響く中、エレノアが眉根を寄せて俺を見た。


「ご主人様…具体的な年数を口にされては…将来を悲観してしまうのも仕方無いかと…」


「そこまで!?」


エルフや獣人達のことを考慮して、年に一度、順番に三国で祭りを開くことになりました。


もちろん、全てに俺が出席します。


面倒なことに…!



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