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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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魔法戦士レンレンVS脳筋戦士トルガ

カルタスがあまりにも一人で突き進む為、俺達は仕方なくエレノアと合流し、敵兵を吹き飛ばしながら前進した。


ローザと三人の近接戦闘職のギルドメンバーにカルタスを追わせ、魔術士隊は後方で生き残った奴隷兵を治療しつつゆっくり向かってきている。


「レインドロップ」


俺が適当に魔術を行使する中、エレノアは魔術の範囲外を縦横無尽に走って兵士達を斬り倒していく。


カルタスに追いつくことを優先した為、護衛をさせていた他の近接戦闘職のギルドメンバーにも手伝わせる。


俺は敵陣の奥深くまで切り込んだカルタスを探しながら溜め息を吐く。


「なんであそこまで突き進むんだよ、あいつは…まあ、確かに曖昧な指示を出したけど」


俺がそう呟くと、俺の傍に来たエレノアが口を開いた。


「ギルド対抗戦ではカルタスは切り込み隊長でしたから、思い切り暴れてから戻る癖があるのではないでしょうか。自分が先頭に立たない戦闘では的確な指示を出せるかと思われます」


エレノアにそう言われて、俺は確かにゲーム時代はそうだったと思い返した。


戦国武将をイメージして設定もされているので、軍隊の指揮などは出来るはずなのだが…。


俺はそんなことを思いながら、視線をガラン皇国軍の隊列に向ける。


見る限りでは既に戦意を失った者ばかりだ。


槍を構えてはいるが、こちらに向かってくる気配も無い。


しかし、奴隷兵などは戦わねば味方から斬られるかもしれない。


まあ、実際に奴隷兵に聞きながら歩くわけにもいかないから、運が良ければ生き残る程度の魔術を使って戦闘不能になってもらうか。


「レインドロップ」


俺が魔術を行使しながら前進し、敵陣の中を突き進んでいくと、ようやくカルタスがいそうな場所付近に辿り着いた。


まあ、単純に兵士達が吹き飛んでいる場所なんだが。


生きてるか死んでるかも分からない兵士達に黙祷を捧げながら足蹴にし、奥に進むと、カルタスと随分とデカい男が対峙していた。


甲冑姿の為顔は確認し辛いが、その豪華な鎧と、刺繍の入ったマントを見れば大将格であることは一目瞭然だ。


俺が大将格らしき甲冑男を観察していると、カルタスが両手を広げて口を開いた。


「面白いぞ、トルガとやら! さあ、一騎打ちといこうか! それとも、もう一度数で挑むか!?」


「止めんか、馬鹿」


俺はカルタスの背後まで足早に移動してカルタスにそう言った。


カルタスは俺の声を聞いた瞬間、身体が跳ねるほど驚いてこちらを振り向く。


「と、殿! い、いや、これはその…」


俺の顔を見たカルタスがモゴモゴと浮気現場を見られた彼氏のような態度を取る中、俺は気持ち悪いカルタスを視界に入れないようにしてトルガという男を見た。


「お前が将軍か」


俺がそう言うと、トルガは殺意の籠った目でこちらを睨むが、特に何も言わずにただ剣を構え直した。


その随分と分厚い両刃の剣を眺めつつ、俺は口を開く。


「無口な奴だな」


俺はそう言って笑うと、剣を肩に乗せて少し大きめの声で名乗ることにした。


「俺はエインヘリアルの国王、レンだ。今回はガラン帝国軍が許可も無しに我が領土へ足を踏み入れた為、帝国の意図を確認する為に来た」


俺がそう言うと、トルガは舌打ちをして腕に力を込める。


「ここまでしておいて何が確認だ! 馬鹿にするでないわ!」


急に怒鳴り散らし出したトルガを見て、俺は頷いた。


「まあ、そうだな。ただ、こちらは最初に話をしにきたと伝えたからな。大勢の兵達がそれを聞いている」


俺はそう言うと、肩に担いだ剣を持ち上げて、剣先をトルガの顔へ向けた。


「そして、その俺達に攻撃し、軍をぶつけてきたのはお前達だ。自業自得だな」


俺がそう言うと、トルガは唸り声をあげて一瞬押し黙り、すぐにまた顔を上げた。


「…いや、そのような事実は無かった! 我らの軍に急に襲い掛かってきたのは貴様らだ! 卑怯者め!」


トルガは何とか自軍の行動を正当化しようとしているが、恐ろしくお粗末な返答だった。多分、あまり頭は良くないのだろう。


「僅か50人の手勢で、こんな大軍相手に自分から仕掛けると? 本気で言っているのか、トルガ将軍」


俺がそう言うと、トルガは動きを止めて俺達に顔を向けた。


「…ご、50? 50人だと? 馬鹿か貴様! 子供でももっとまともな嘘を吐くぞ!」


トルガはそう怒鳴るが、信じようとも信じなくとも事実なのだから仕方がない。


まあ、軍を指揮した者としては認められない事だろうが。


俺はトルガの気持ちになって少し同情すると、肩を竦めて口を開いた。


「さて、それでは大将戦といこうか。一騎打ちで終わらせた方がスッキリするだろう? なにせ、このままだと何も出来ずに終わるガラン皇国軍と、弱い者イジメをこれでもかとやり尽くしたエインヘリアル軍だ。後味が悪い」


俺がそう言うと、トルガの口から歯を噛み砕くような音が聞こえた。


将来は総入れ歯だな、こいつ。


俺は短気なトルガを眺めつつそんなことを考えた。


と、俺が余計なことに思考力を費やしていると、トルガが腹に響く大声を出して頷いた。


「……よかろう! 剣で勝負といこうではないか!」


「お、良いんだな? 言ったからには引けんぞ」


トルガの返答に俺が確認を取ると、トルガは剣を振りかぶって構えた。


「くどい! 皇国皇から預かったこの軍を、ここまでボロボロにされたのだ! これ以上の損害は絶対に出せん!」


トルガはそう怒鳴って腰を落とした。


中々膂力のありそうな構えだ。剣も改めて見ると刀身は180センチは間違いなくあるだろう。そのうえ、厚みも2、3センチはありそうだ。


斬るというよりも、押し潰して引き千切るといった使い方をしそうな剣である。


俺はトルガの剣をそう分析すると、口を開いた。


「結果、良い選択をしたな。どちらにせよ死ぬことになるんだ。気楽にかかって来い」


俺がそう言って口の端を上げると、トルガの身体が弾けたように勢いよくこちらへ向かって飛び出してきた。


「舐めるなっ!」


トルガの怒声と共に振り下ろされた大剣が俺の頭上に迫る。


速い。


意外と馬鹿に出来ない速さで迫る剣に俺は内心で驚いていた。


自分の持つ剣でトルガの大剣を受け流しながら身を捻り、衝撃も外側へ流す。


「っ! ぬぁ!」


トルガの剣の重さと勢いから考えて地面に突き刺さるまで止まらないと判断していたのだが、まさかのトルガの唸り声に視線を戻すと、トルガは地面に剣が突き立つ前に剣を止めていた。


そして、その剣を素早く持ち替えて斜めに切り上げる。


「おっと!」


俺はまた剣の刃先を滑らせるようにしてトルガの剣を受け流し、腰を回して右足でトルガの甲冑の腹の部分を蹴った。


低く重い金属音が鳴り、トルガは地面の上を転がって倒れる。


甲冑姿にあの重そうな大剣を持って、よくもまああれだけ動けるものだ。


俺は立ち上がりつつあるトルガを眺めながら頷いた。


「中々の腕前だ。その怪力にものを言わせた剣も予測し辛くて面白い」


俺がそう言うと、トルガは剣を構え直して足をこちらに向けた。


「我輩の剣を防げる者がおるとは…世界は広いものだ。だが、剣で反撃出来ないのならば我輩の勝ちだ!」


トルガはそう叫ぶと、一気にこちらへ向かって駆け出した。


そして、剣を勢い良く袈裟斬りに斬り下ろす。


狙うは俺の肩と首の付け根のようだ。


俺は剣を持ち上げてトルガの剣と正面から打ち合わせた。


その衝撃と耳に刺さるような金属音に俺は顔を顰めるが、トルガは目を見開いて自らの剣を見ていた。


トルガの剣は半ば程から切断され、切れた剣の先は何処かへ消えていた。


「悪いが、これで終わりだな。せめて最後はちゃんと語り継がれるような死に方をさせてやろう」


俺はそう告げると、呆然と俺を見るトルガを見下ろして剣を高く掲げた。


「フレイムタン」


俺は火の属性剣スキルを行使しながら剣を振り下ろした。


トルガの頭から股下まで甲冑ごと斬り裂き、俺が行使した魔法剣スキルにより、二つに別れたトルガの身体は炎の柱に包まれた。


天まで登る炎の柱に、周囲で見ていたガラン皇国の兵達も逃げることすら忘れて、その光景を見入っていた。


「ば、馬鹿な…」


燃え盛る炎の中でトルガが何か呟いた気がするが、俺は何も答えずに剣を鞘に納めた。



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