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12 不遇だった老調薬師

たくさんのブクマありがとうございます。

すごく励みになりますが、未体験ゾーンなので色々と焦っています(汗

 

 早朝アルバイトも1ヶ月となり、今日は夜にも来てくれと言われている。


 何があるのかは知らないが、来てくれと言われたら来るしかない。

 もしかすると夜の臨時アルバイトかも知れないしね。


 日課のアルバイトと採取を終え、帰宅して朝食の後で回復薬の作成となる。

 それなんだが、今日は別に様々な種類の草を採取してみたんだ。

 気分転換に色々な薬に挑戦してみたくなったんだけど、レシピが無いんだよな。

 確かに回復薬自体もレシピは無かったけど、あれは中等部の教授が教えてくれたんだ。

 思えば教材の薬草は濡れていたし、機材もしっとりしていたな。

 使用前の洗浄済みだったのかと思うと、やはり最低でも12才スタートは妥当な線なんだな。


 それにしてもあいつもよく見えない↓矢印を見つけたもんだよな。


 ロリショタの執念なのか、下がれ下がれと念じながらひたすら押してたら下がったとか聞いたけどさ。

 βテスターにはそういう執念のある奴は居なかったのかどうなのか。

 オレは単に振り直しフリーだからあると思って探したが、後で初期値ボタンを発見しただけの事だ。

 なのでもしかしたら最初にそのボタンを知っていたら見つけられなかったかも知れない。

 偶然の産物だけど良かったと思っている。


 ◇


 とりあえず日課の回復薬をやった後、屑金属の精錬をやる。

 やはり他の薬はレシピを知らないといけないので、そのうち中等部の教授に聞きに行こうと思っている。

 とにかく今は借金の返済を第一に考え、そして金を貯めての生産ラインを確立させるのが先だろう。

 なので20株ずつ全種の草はとりあえずアイテムボックスの中に入れたままにしておこう。

 どのみちあれからもプランターは買い足しているし、余分に採取して在庫にもなっている。

 1株から薬草の葉は10枚は取れるし、20株で200枚にはなる。

 月に1500本のノルマで葉は1500枚あれば良いので、薬草の在庫はかなりの量になっている。

 なので時々休んでも良いのだけど、後々のラインの事を思えば在庫はいくらあっても足りないはずだ。


 昼食のチキンライスを食べた後、ちょっと昼寝のつもりが夕方まで眠っていた。


 まさかとは思うけど疲労が蓄積なんてマスクデータになっているのかも知れない。

 そうだよな、肩こりなんて状態異常もあるぐらいだし、疲労が蓄積しても変じゃない。

 よし、こいつを検証させようか。


 ◇


 -情報掲示板・戦闘板-


「みんな気を付けよう。連日の戦いは疲労骨折を招くかも? 」

「おいおい、ならオレが骨折したのってもしかして、そうなのかよ」

「肩こりにはマッサージだよ」

「うぇぇ、どんだけリアルなんだよ。肩が重いのはそのせいかよ」

「南地区の南の外れに銭湯マッサージのお店がある。そこでは綺麗なお姉さんが」

「おいおい、マジかよ、それは」

「行くぞぉぉぉぉぉ」

「おーーー」

「おーーー」

「おーーー」

「おーーー」

「おーーー」

「おーーー」

「どんだけ飢えてんだよ」

 ---

「くそぅ、会員制だと言われたぞ」

「ああ、オレもだ。んでよ、会員のなり方とか教えてくれないのな」

「確かに綺麗なお姉さんが居たけどよ、会員じゃないと入れないって何だよ」

「あれ、良いお風呂だよ。中は広いしさ。そんで風呂上りにマッサージしてくれるのよ、あれは良いよねぇ」

「おいおい、どうやったら会員になれるんだよ」

「あのね、申し込み用紙に書くだけでいけたよ」

「そんなの無かったぞ」

「変ねぇ、ちゃんと聞いたの? 申し込み用紙くださいって」

「会員のなり方は教えてくれなかったぞ」

「アタシが女だからなのかもね。男は審査が厳しい予感」

「ぐわぁぁぁぁ」

「うわぁぁぁぁん」

「そんなぁぁぁぁ」

「ちくせぅぅぅぅぅ」

 ---

「おかしいな、オレは男なのに毎日入っているが」

「教えろぉぉぉぉ、いや、教えてくださーーい」

「これはもしかするとクエストなのかも知れない」

「板違いは構わんから教えてくれ」

「こういうのは発見が楽しいんだと思うが」

「頼む、お願いします」

「仕方が無いな」

「早く、早く」

「あのな、まずは雑貨屋で店番をしたんだ。そうしたら福引券をくれてな。南地区の商店街の福引だったんで、そこに行って引いたんだ。そうしたら真っ黒い玉が出てな、それが銭湯の入場券だったんだ」

「確かにクエスト、それも希少クエストっぽいな」

「よくそんなの見つけたな」

「福引って事はもう終わってたり」

「ああ、そうかもな。てか、大体、雑貨屋での店番とか、どうやるんだ」

「店に行ったらちょうど良かったと言われてな、店番を頼まれたんだ」

「お前、もしかしてあのやたら丁寧なバイトもどきか」

「またのご来店を心よりお待ち申し上げます」

「やっぱりかよ。なら、あれが店番だったんだな」

「親密度とかあるんじゃね? 」

「おお、ありそうだな」

「ギルドの取引停止にして、雑貨屋で買うぞ」

「そればっかりでも無さそうだけどよ」

「まあ、かれこれ3年来の付き合いだし? 」

「待てよ、そんな事ある訳無いだろ。始まってまだ2ヶ月にもならないんだぞ」

「発見してみてね」

「あれ、内緒の話が話題になってるね」

「内緒の話はそのままで」

「あいあい、了解っす」

「お前ら独占かよ」

「そういうんじゃないんだけどね。まあ、仕様だから見つけてね」

「まあ、仕様だな」

「くそぅぅぅ」


 ◇


『てか、何やってんの。暇なの?』

『いや、情報掲示板にな、疲労のマスクデータの事を書こうと思ってな』

『ああ、疲労の蓄積ってやっぱりあんのね』

『どうやらそうらしい。オレ、昼飯食った後、昼寝で夕方まで寝ちまったぐらいだし』

『薬の作り過ぎだね』

『ああ、恐らくな』

『それで、マッサージは毎日やってんの? 』

『されるほうじゃないぞ、するほうだぞ』

『うえっ? 』

『彼女達も連日は疲れるようでな、マッサージのアルバイトやってんだ』

『あれまぁ、また珍しい事になってんのね』

『そういや、今日は夜にも来てくれって言われてんだ。もしかしたら追加のアルバイトかも』

『そんなに腕が良いの? 』

『両親も絶賛だぞ、やってやろうか』

『お願い。いくら会員制でも銭湯マッサージも安くないのよね』

『風呂で柔軟が調子良いぞ』

『ああっ、そっかぁ、それをすれば良いのよね』

『あれだけ広い浴槽だからな、中でデロンとやってるぞ』

『あはは、アタシもやろうっと』

『まあ、今夜はそういう訳で用事があるが、普段ならマッサージはやってやるからな』

『じゃあ仕入れの時にでもお願いね』

『任せろ』


 ◇


 掲示板と個人通信で時間が過ぎ、気付いたら夕食の時間になっていた。

 夕食前にシャワーを浴びて、今日の夕食は中華でした。

 父さんは仕事で遅くなるらしく、母さんはマジックフィンガーの餌食。

 なんかもう癖になっちまったのか、食後にソファに横になるんだよな。

 なのでそのままマッサージの流れになって、健やかな眠りに就くと。


 そろそろ良いかと銭湯マッサージの店に行く。


 中に入ると事務所に来てくれと言われ、行くと全員勢ぞろい。

 まさか全員に追加のマッサージかと思っていると、何か違う様子。


「君ってさ、調薬に興味ある? 」


 ピラリと見せるのは成人カード。

 そこには調薬LV.7の数値がある。


「うわぁぁ、あるじゃない、それも高レベルで」

「うんうん、大したものね。その若さでそのレベルは」

「合格ね」

「うんうん、託せるわ」

「何の事? 」


 よくよく聞けばかつて、店にはお婆さんの薬師が居たらしい。

 だけど大手の回復薬業者に押され、不遇のうちに亡くなったとか。

 それでも下町界隈ではそれなりに需要もあり、細々と薬を作っていたんだとか。

 そのお婆さんのレシピ帳を誰かに託したかったんだけど、真面目で無欲な人を探していて、何故かオレが合格したとの事。

 オレは別に無欲って訳じゃないが、どうして無欲と思ったのかな。


「だって君、この1ヶ月の間、アタシ達のマッサージのアルバイト代請求しなかったでしょ」

「あれっ、それはお風呂代でチャラかと思ってた」

「何を言っているのかな、この子は。仮にもアタシ達はプロなのよ。そのアタシ達が満足するぐらいの腕前なのに、そんな訳無いじゃない」

「そうそう、充分プロとしてやっていけるぐらいなのに、お風呂代ぐらいでチャラになるはずがないわ」

「そうなのかな」

「もっと自信を持ちなさい」

「うーん」

「まあいいわ。それよりこれ、受け取ってくれるかしら」

「ありがたいです」

「うんうん、それでね、毎朝のマッサージはこれでおしまいだけど、その中のある薬を作って売って欲しいのよ」

「ある薬? 」

「肩こり回復薬よ。お婆さんのあの薬は便利でね、仕事明けに飲んで寝たらすっかり肩が軽くなるの。そりゃマッサージしてくれたほうがありがたいけど、いつまでもタダって訳にもいかないしね。調薬をやっているならそれを作って欲しいのよ」

「どのみちレシピは調べようと思ってました。なので薬を作るのは問題ありませんが、代金は必要ありません」

「ほらほら、やっぱり無欲じゃない」

「いえ、レシピが貴重なので、そのお返しですから」

「いい? 貴方はプロとしての自信を持ちなさい。レベル7とかもうプロだからさ。そしてプロはタダでは仕事をしないものよ。分かったわね」

「はい、分かりました」

「良い子ね。なら、お願いね」

「はい、たくさん作って持ってきます」

「うんうん、ちゃんとお金は受け取るのよ」

「うっ、は、はい」

「よろしい」


 まさか一連のクエストになっていたとは思わなかったが、これであの多種多様の草が生きるな。

 早朝のアルバイトは無くなったが、お風呂は自由に使って良いらしく、たまに行こうと思っている。

 さすがにタダで入るのはちょっとな。

 なのでマッサージという名目でのんびり出来たんだよな。

 だけど無くなったらそう毎日は行けないか。


 さて、明日からの楽しみも出来たし、今日はゆっくりと眠れそうだ。

 

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