14.実技試験(2)
「じゃあね、ユフィ。先に行っているわね。大丈夫、杖が無くなってあなたならやれるわ」
「は、はい……」
そう言って、ロゼリア様が部屋から出ていった。部屋に残されたのは後、五十人もいない。三百人近くいたのに、あっという間に人がいなくなってしまった。
それだけ、実技試験が早く終わっている証拠だ。きっと、みんなは杖を使って、実技試験を早く終わらせていたのだろう。やはり、都会の魔法は発展しているんだ。
「はぁ……どうして私、杖を作らなかったんだろう」
考えるのはその事ばかり。魔法使いは杖がなくても大丈夫だと言っていた。だから、それを信じて今まで杖無しでやってきた。
田舎ではそれで大丈夫だったけれど、やっぱり都会は別格だ。みんな当たり前のように杖を使っているし、技術も高そうだし、田舎育ちの私よりも上手そうだ。
やっぱり、私はここまでなんだろう。ちょっと期待した分、落ち込みが激しい。受かったとしてもお金の問題もあるし、そう簡単には通えない。
……ちょっとだけ、通えたらなっていう思いがあった。ロゼリア様がいて、ミレイ様がいて、アルベルト様がいる。そんな三人と一緒に通えたら、きっと楽しいだろうなって思っちゃった。
それに、レイチェル様。あんな高度な魔法を使えるのが凄いと思った。魔法のことでお話したら楽しそうだったから、お話をしてみたかったんだけど……それも無理そうだ。
「短い夢だったなぁ……」
少しだけ違う夢を見れて楽しかった。……うん、それだけで十分だ。本当に夢のひと時だと思う。
楽しかった時間を思い出してみると、扉が開いた。
「残り全員、来なさい」
試験監督の声を聞いて周りを見渡すと、残り四人になっていた。いつのまにか残りがこんなに少なくなっていた。
私は席を立ち、残った人たちと一緒に試験監督の近くに寄った。すると、試験監督は部屋を出て、私たちを誘導してくれる。
長い廊下を進んでいくと、扉の前で立ち止まった。
「では、ここの控室で待つように。時間が来たら、また呼ばれる」
そう説明されると、私たちは一室に通された。そこには簡易の椅子が置いてあり、私たちは空いている席に座る。
それから、重苦しい空気が流れる。誰もが黙って待っていると、試験監督が来て、一人を連れていった。
一人ずつ控室からいなくなり、とうとう私が最後になってしまった。そわそわしながら待っていると――。
「三千二百三十四番、ユフィ。来なさい」
「は、はい!」
とうとう、呼ばれた! 勢いよく立ち上がり、試験監督の所へ行く。試験監督は歩き出し、外へつながる扉を開いた。
外に出るとそこは中庭で、周りが仕切りで覆われている。その中央には何やら複雑な装置が並んでいた。
これは……?
「では、今から実技試験の内容を発表する」
「あっ、はい!」
「実技試験は五センチくらいの魔力の球を作成してもらい、こちらの装置の攻略してもらう。装置の壁に触れたら失格。触れないように攻略してもらう」
……なるほど。魔力の球を使って、装置を攻略する試験なのか。
「第一の関門は迷路。第二の関門は魔力攪乱領域。第三の関門は反発領域。第四の関門は平均魔力維持領域。最後の関門では魔力の球の大きさを変えて、極狭の穴を通してもらう」
その説明に私は装置を見た。まずは迷路。はば十センチくらいの通路があり、複雑な道を形成している。これには魔力の球の操作が重要そうだ。
魔力攪乱領域は魔力の球を刺激して、玉の形を壊す領域。魔力維持と操作が必要になりそうな部分。
反発領域は四方八方から圧力が加わり、魔力の球がブレて、正常に操作できない。これは、力を読んで、正しい力の入れ方で動かす忍耐が必要だ。
平均魔力維持領域は魔力の球を維持する魔力を一定にしないと、周りにある魔力の球から妨害を受けるっぽい。ここで大切なのは、魔力量の操作だ。
そして、最後。用意された穴を確認すると、様々ある。直径十センチの穴から、針の穴まで。多分小さい穴ほど得点が高いとみた。
「では、装置の確認に五分あげよう」
「あっ、その必要はありません。すぐに出来ます」
「……す、すぐ? ま、まぁ……そういうならすぐに始めよう」
装置の全体は把握したから、すぐに始めても問題ない。今、凄く集中しているから、この集中が続いている内に早くやりたい。
「ん? 杖がないようだが……忘れたのか?」
「あっ、いえ……。杖は元々ありません」
「つ、杖が……ない? 大丈夫なのか? ま、まぁ……そういう子もいるだろう」
明らかに戸惑った様子だが、気にしていても仕方がない。私は今、他の子たちよりもハンデを背負っていることになる。その中でどれだけのことがやれるのか……。
「では、魔力の球を作って」
その指示で私は瞬時に魔力の球を作った。それを装置のスタート地点に移動させる。
「この装置は魔法が掛かっている。不正は逃さないし、正しく判断も出来る。だから、思う存分挑戦しなさい。ゴールした瞬間、あそこの鐘が鳴るようになっている」
「……はい」
私は頭の中で装置の全容を叩きこむ。そして、どうやって魔力の球を動かすのがイメージする。……よし、大丈夫だ。
「それでは、行くぞ。――始め!」
その合図と同時に私は魔力の球をイメージ通りに動かした。すると――。
カーンッ!
「――えぇ!?」
鐘が鳴った。
「えっ、ちょっ、こ……これは!?」
「ゴールしました」
私なりに全力を出したつもりだけど、大丈夫だったかな?




