第5話 かつての同僚とエンカウント
石嶺 クラランちゃんは、金髪碧眼系だが日本かぶれの着物美少女である。
たしか、「日本の歴史に憧れて、江戸時代にタイムスリップしてきた、異国のセレブ」って設定だったっけ。
そんな超人気Vが、私の胸に飛び込んできた。
「サンキュー! あなたはゴッドでーす!」
中の人を知っている私からすると、もろ外国人なのだが。
英語と日本語を使いこなし、ファンからは「JP勢なのでは?」とウワサされている。
今でもクラランちゃんは、私の腕の中で「ヘルプ」を連呼している。
「うわ。あわあわ。どうしよう?」
『どないしてんな、レオ?』
ダリが飛びながら、私に話しかけてきた。
「私、外国語苦手!」
ただでさえ、私はコミュ力が終わっている。その上に相手が英語圏の子だなんて、うまく話せないよ。
『心配あらへん、レオ! この世界は共通言語で統一されとるさかい! スキルに【言語】の項目は、なかったやろ?』
「ついでに、【コミュ力アップ】の項目もなかったよーっ! ダリ、どうしよー!?」
『しらんがなっ! それは、あんたの手腕でなんとかせえよ!』
そうこうしている間に、私はクラランちゃんが置かれている状況が飲み込めた。
クラランちゃんの後ろからは、大量のモンスターがわっさわっさと追いかけてきている。
魔物の巣に、入り込んでしまったんだろう。
おまけに、クラランちゃんの手には刀が。
「装備が、完全に折れてる!」
『この世界の装備は、耐久値があるねん!』
使いすぎると、装備は壊れてしまう。道具があれば、修復できるそうだ。
【装備修復】は街に行けば可能だ。スキルを獲得しても、修理は可能である。
「クラランちゃん。下がってて!」
私は、クラランちゃんを後ろに下がらせる。
まずは、クラランちゃんを地上まで引っ張り上げた。
続いて、私とクラランちゃんの間を、土で埋めてしまう。
「オーッ! ノーッ! 一人であの数は危険でーす!」
クラランちゃんが土の上からなにか叫んでいる。
だが、私は気にしない。
たとえクラランちゃんが加勢に入ろうとしても、武器が壊れているのなら戦力にならない。
「ここは【オレ】に任せろ! あんたは、助けを呼びに行け!」
あれ? 私、しゃべってない!
でも確実に、ワタシのノドは震えていた。
なにこのイケボ? 声優のお仕事をしたときでも、出したことないけど? どこから、声が出とんねん?
「オーケー!」
クラランちゃんの、走る音がした。街まで行ってくれたのだろう。
「よし、バッチこい!」
木刀、『コガラシ』を構え、魔物たちを迎え撃つ。ステータス画面でも見たけど、この木刀って、『コガラシ』って名前なんだね。
敵はゾンビと、スケルトンだ。リアル感はなく、コミカルな見た目である。とはいえ、私よりちょっと強い?
私、レベル一だもんね。
「まあいい! 敵は強いほうが燃える!」
おっ? なんもしゃべっていないのに、口が勝手に開く。声も低い。
これが私のストリーマー固有スキル、【戦闘用人格】か!
「来いよ、ザコども! 【オレ】が相手だ!」
初戦闘だ。思い切りやってやろうじゃん。
「てい、てい!」
木刀を、適当にぶん回す。
敵はノックバックで、後ろに下がっていく。それでも、前進を続けた。特殊な攻撃などは、してこない。
倒した敵が、ポーションを落とす。倒すたびに、ポーションが増えていった。
「おっと!」
スケルトンが、後方から矢を放ってくる。あちらは、遠距離攻撃も可能なのか。
「うーん、厳しい!」
囲まれてしまった。
壁を背にしているとはいえ、キツいな。
[レベルが上がりました]
おっ。短いファンファーレの後に、アナウンスが。
『あっちに地底湖があるで! 避難や!』
「ありがとう、ダリ!」
私はスキを伺って、空洞へと移動した。わずかな隙間に入って、土で入口を塞ぐ。
自分の顔を、湖に映す。
「おお、目が光ってる」
左目が、黄金に輝いていた。いかにも厨二病って感じで、いいね。
ステータスポイントが、五ポイントもらえた。
ポイントを、ステータスに振り分ける。とにかく体力に大量振りだ。命は大事に。
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◎ 名前:レオ・シズマ
◎ レベル:二
◎ ステータス
体力:一二
魔力:一一
敏捷性:一一
命中度:九
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体力に大きく振って、後は一つずつ上げる。
『レオ! 【戦闘用スキル】や!』
そういえば、忘れていたな。
土をどけて、またモンスターだらけの場所へ。
「くらえ【プラズマセイバー】! てえい!」
私は、木刀を振り回した。
木刀から、金色の雷でできた刃が伸びる。黄金のプラズマは、青白いエフェクトまでまとっている。
雷撃と斬撃の同時攻撃を浴びせて、ゾンビを群れごと切り裂いた。
これ、めっちゃ強いのでは!?
まあ、私の力じゃなくて、武器の力なんだけど。
「おおお! どんどん来やがれ! もういっちょ、プラズマセイバー!」
もう数体の群れも、スパーンと退治した。
大量のアイテムが、私の体内に吸い込まれていく。
「もう、テメエだけだぜ。スケルトン」
コイツが、ゾンビたちを先導していたようである。




