第2話 メタバース 【ユニジウム】
「それにしても、ここはどこだよ?」
マジで、ワケがわからん。草原のど真ん中に放り出されてしまうとは。
『見つけましたで、レオ・シズマ!』
なんだ? 木刀にくくりつけられているライオンが、私に語りかけてきたぞ。ワキワキと、動いている。
敵か? 第一エネミー発見か?
木刀を構えると『待ちいな』と、は武器を収めるように告げる。
『ウチは【ダリ】。ライオンの聖獣や』
ダリと名乗る聖獣が、フヨフヨと浮遊した。ドローンみたいだな。
『アンタを転生させた女神様から、アンタのガイドをしといでって、頼まれたんよ』
「転生?」
すると、ここはやはり。
「異世界?」
「そのとーり!」
ダリが、サムズアップを見せてきた。肉球まみれの指を立てるとか、器用だな。
「ちゅうても、ただの異世界とちゃうで。ある程度は、ホンマの現代そっくりに作られてるねん。文明も、それなりに発達してるで」
たしかに、ちょっと辺りを見渡すと、小さな都市が見える。割と現代っぽい。というか、近未来だな。やたら高いタワーとかあるし。
「この世界は、『現代社会に、異世界が侵食してる』って設定なんや。せやから、都市の所々が、森林化してるんよ」
「ちょっとまってよ。それって!」
「ここは異世界。その名も――』
「【ユニジウム】じゃん!」
前の事務所が、ヨソのV事務所と共同開発していたメタバース、【ユニジウム】まったく同じ世界ではないか。
「そうやねん。アンタは、そのユニジウムに転生してしまってんよ」
「よりによって、前の事務所が作った世界に!?」
「正確には、そのメタバースに似た世界な」
どうも私は、アニメの中のような仮想空間に、転生してしまったらしい。
しかも、各社共同開発を進めていた異世界型メタバース【ユニジウム】に似た世界に。
「ていうか、私は本当に死んじゃったんだね?」
トラックにひかれて転生とか、ベタすぎにも程があるよぉ。
「せやで。もうアンタは、限界やってんよ。新しいアバターを手に入れて、再デビューの準備をしている段階で、アンタは寿命やってん」
「つまり、私はどうあっても死ぬ運命だったってこと?」
「せやねん。残念やけど」
どうあがいても、私は転生デビューできなかったわけか。
それを不憫に思った女神様が、私を転生させてくれたと。作成途中だったアバターに受肉させて、このユニジウムに似た世界へ飛ばしてくれたわけか。
「やのにな、あのアホ女神ときたら、代わり映えのない転生させよって!」
トラック転生という今頃ベタで古典的な転生法を、選んでしまったという。
「ほんでな。色々と都合さしてもらうわって、女神様も言うてるねん」
それなりのチートサービスを、受けられるらしい。
「でもさ、勝手に動いたらパパが怒らない?」
自作アバターだからともかく、モーションを作ってくれているパパに申し訳ない。
「お金は振り込まれているから、心配はせんでええよ。ココは【ユニジウム】であっても、マジモンやない。元の世界とは、微妙にちゃうさかい」
たしかに、ユニジウムの世界観は『地球に環境が似た星で、居住・開発をした別の惑星』って設定だし。
で、星の開発は順調だったんだけど、だんだんとファンタジー世界観が侵食して、モンスターも湧くようになっちゃったと。
で、Vアバターのみんなが【ストリーマー】として、【リスナー】を守っているって設定だ。
【ストリーマー】ってのは、「配信者」って意味でもある。けど、ストリームは「気流」って意味もあるのだ。【流れ者】って意味も、込められている。
いうなればストリーマーとは、ファンタジー小説で言う【冒険者】と同義だ。
「で、私は、ていうかオレは、【レオ・シズマ】として活動すればいいんだね?」
「せやで。つーか、人称は『私』で統一したらええやん」
「それだと、身バレするし」
私は生前から、滑舌があまりよくない。そのため「わとし」みたいな言い方をしてしまう。こんなしゃべり方をするのは、私くらいしかいない。
転生しても、前世を特定されちゃうよ。
よって、全然違う人称を使うしかない。
「気にせんでええよ。この世界にもリスナーやストリーマーはおる。けどな、どっちもアンタの前世を知らんよってに」
「リスナーも、ストリーマーも?」
じゃあ、仲間にもう一度、会えるってことか。
こんな姿で会っても、私って認識してもらえないだろうな。認識されたら、それはそれで困るけど。
「私さ、その子たちに覚えてもらっているのかな? そもそも、『いない子』扱いになっていたりして」
「せやで。だから言うてるやん。ここは元の世界とはちゃうって。いわゆる【メタ発言】とかは、気にせんでもええんよ」
だったら、あまり気にしなくてもいいかな?
「じゃあ、『私』でいいや。というか、【二重人格】設定にしようっと」
普段は私で、戦闘とかがあったら、戦闘向きの人格が発動する! って、中二病設定ぽくていいじゃん!
[スキル表が更新されました。【戦闘用人格】が形成されます]
はあ!? なんか頭の中で、音声ガイドが発動したんですけど!?




