表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年達  作者: 南波 晴夏
22/33

22. 返信

子供は心変わりする。


生きることを辞めようとしたくなる。

大人になりたいと思いたくなくなる。

大人の前で笑顔でいることさえ億劫になる。

ということを誰にも言いたくないと思う。


強がってものを言う。

強がっていたいと思う。


だから僕は生きていた。

この何もない世界で、たった一つの願いを叶えるため。

たった一つの“本物”を探すため。


思春期を、大人は笑うだろう。

青春を、大人は嗤うだろう。

しかしその一つ一つが、その毎日が、僕等にとっては大事件で。


毎日息を潜めて暮らしている。

誰にも嫌われないように。

誰にも気づかれないように。

そうして磨り減った心に、もはやどんな言葉も刺さらない。


……そして、愛を知る。

大人は“本物の愛”を聞いて苦笑する。

“本物の愛”は美しくないのだと、分かり切ったように首を振る。


僕は愛を知っていた。

何もかもがどうでもよくなってしまうほど、ある時はその感情が怖いとすら感じる程、深く、深く愛した。


大人たちはアイを嗤う。

子供には分かるわけがないと嗤う。


果たして、大人と子供の境界線はどこにあるのか。

みんながみんな、20歳の誕生日を迎えた瞬間に大人になるのか。


そうじゃない。そうじゃないだろう。

自覚をしなければ大人にはなれない。

僕は大人になりたくない。


あぁだって、彼女のことを忘れるなんてしたくない。

恋を知って、愛を知ったあの日を。

今も、思い返しては泣いている。


バカバカしい話だと、彼女は笑うだろうか。

どんな関係にも終わりはやってくる。

別れはやってくる。


けれど僕は、そんな世界でも生きて行く道を選びたい。

幸せな日々だった。良い青春だった。

今でもそう思う。


ねぇ。

もう僕は、大人になったよ。


……僕は、君が。

15歳の僕が、望む僕になれているかな。



青年は封を閉じた。

どこにも届かないそれは、かつて自分が書いた“未来の自分へ”の手紙に対しての返信だった。


青年は今も考え続ける。

子供とは何なのか。

大人とは何なのか。


あの青春の日々を、想いながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ