22. 返信
子供は心変わりする。
生きることを辞めようとしたくなる。
大人になりたいと思いたくなくなる。
大人の前で笑顔でいることさえ億劫になる。
ということを誰にも言いたくないと思う。
強がってものを言う。
強がっていたいと思う。
だから僕は生きていた。
この何もない世界で、たった一つの願いを叶えるため。
たった一つの“本物”を探すため。
思春期を、大人は笑うだろう。
青春を、大人は嗤うだろう。
しかしその一つ一つが、その毎日が、僕等にとっては大事件で。
毎日息を潜めて暮らしている。
誰にも嫌われないように。
誰にも気づかれないように。
そうして磨り減った心に、もはやどんな言葉も刺さらない。
……そして、愛を知る。
大人は“本物の愛”を聞いて苦笑する。
“本物の愛”は美しくないのだと、分かり切ったように首を振る。
僕は愛を知っていた。
何もかもがどうでもよくなってしまうほど、ある時はその感情が怖いとすら感じる程、深く、深く愛した。
大人たちはアイを嗤う。
子供には分かるわけがないと嗤う。
果たして、大人と子供の境界線はどこにあるのか。
みんながみんな、20歳の誕生日を迎えた瞬間に大人になるのか。
そうじゃない。そうじゃないだろう。
自覚をしなければ大人にはなれない。
僕は大人になりたくない。
あぁだって、彼女のことを忘れるなんてしたくない。
恋を知って、愛を知ったあの日を。
今も、思い返しては泣いている。
バカバカしい話だと、彼女は笑うだろうか。
どんな関係にも終わりはやってくる。
別れはやってくる。
けれど僕は、そんな世界でも生きて行く道を選びたい。
幸せな日々だった。良い青春だった。
今でもそう思う。
ねぇ。
もう僕は、大人になったよ。
……僕は、君が。
15歳の僕が、望む僕になれているかな。
青年は封を閉じた。
どこにも届かないそれは、かつて自分が書いた“未来の自分へ”の手紙に対しての返信だった。
青年は今も考え続ける。
子供とは何なのか。
大人とは何なのか。
あの青春の日々を、想いながら。




