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続かない物語たち  作者: 海荻あなご


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少女を卒業するとき

たぶんムーンあたりに投稿しようとしたんだと思います。

12年前の文章です……(2026年現在)いや~~~~語ってばかりで「ダルっ」「長っ」と顔が熱くなりますね……

 瀬戸口 野乃、もうすぐ18歳。

 小学生の頃、私はとても明るい性格をしていた。

 男女共に友人も多く、毎日放課後は皆で集まりドッジボールや鬼ごっこなどをして遊んでいた。

 あの頃は本当に毎日が楽しかった。

 それもあっという間に崩れ去ってしまったが。


 小学6年生の運動会のときだった。

 私が通っていた小学校は学年別クラス対抗形式で運動会が行われていたので、小学生最後ということもあり優勝目指して一致団結していた。

 その甲斐あって、次のリレーで1位を取れば優勝も確定というところまで来ていた。

 そのリレー、私はアンカーを任されていた。

 当時を思い返せば、なぜ男子がアンカーじゃないんだ普通男子がかっこよくゴールを決めるのが定番だろう、と色々思うことはあるのだがまあアンカーになってしまったのだ。

 あの時は私もすごくテンションが上がっていて私なら大丈夫!と周りももて囃すのでその気になっていた。

 しかし当日、優勝が決まる一本でありアンカーという大役に私も緊張していた。ゴール目前、私は転んでしまったのだ。

 転んだ瞬間私の世界はスローになり、転ぶ私の横を他クラスのアンカー達がどんどん走り抜けていく。

 ズサッと身体が地面にぶつかる直前、2位だったはずの人が1位でゴールする瞬間を目撃した。

 そして同じクラスの友人たちは私を大丈夫かと労うこともなく、なぜ転んだんだと責め立てた。中には優勝を逃し悔しくてないている友人もいた。

 次の日からもう私は1人になっていた。

 昨日まで友人だった人達が私を無視をする、陰口を言う。

 最初は辛かったものの物を隠されたりなど酷い事はされなかったので、休み時間などはもともと好きだった読書をして過ごす事にした。

 運動会以来誰とも会話もなく卒業してしまった為、中学に上がっても新たに友人を作ることなく1人読書をして過ごしていた。

 それは高校生になっても変わらなかった。

 読書好きが祟り視力は下がって眼鏡になり、典型的な地味女子へと私はなっていた。


 私の毎日は、朝登校し授業を受け休み時間は勉強し、放課後は図書室で本を読んでから帰るという一日だった。

 父子家庭の私は、仕事で忙しい父が毎日余る程のお小遣いを置いていってくれていたのでアルバイトもすることもなく、かといって遊ぶ友人もおらず毎日1人でのんびり過ごしていた。

 慣れれば1人も楽なものだ。元々1人なら小学生の時のように昨日までの友人が敵に変わる事もない。

 進学した高校は図書室を利用する者も少ないため、1人で過ごすのにちょうどいい。

 家に帰っても1人なので家で読書してもいいが、なんとなく早く家に帰る気にはなれなかった。

 それに学校の図書室は意外にも種類が豊富で興味を惹かれるものがたくさんあった。

 何故こんなにも読書が好きになったのか、昔隣に住んでいたかっこいいお兄さんがきっかけなのだが…その人も私が小学校を卒業する前に引っ越していってしまった。


 あのお兄さん…元気にしているだろうか。


 そんな高校生生活も残すところあと半年のある秋の日のことだった。

 担任の女教師が急遽退職するだとかで臨時教員が来ることになった。なんでもできちゃったとかなんとからしいが、そんなことどうでもよくて理由は覚えていない。

 臨時教員という人が、あのお兄さんだったのだ。


 立山 茂和。シゲ兄といつも呼んでいたあのお兄さんだった。


 私はまさかの再会に驚いた。私の事を覚えているだろうかとワクワクしていたが、シゲ兄はあの頃と変わらずかっこよくて爽やかな笑顔が似合う人だったので着任早々から女生徒から囲まれる程だった。

 私はその輪に入る勇気もなく、むしろあの頃とまるっと変わってしまった私の事なんか覚えていないだろうと思い話しかけるのを辞めることにした。

 しかし、シゲ兄が来て一週間経った頃の事だった。


「俺のこと覚えてる?」


 図書室で偶然会ったシゲ兄からそう声をかけられたのだ。

 こんな地味な奴になっていたのに私に気づいていたのだ。


「…シゲ兄」


 私は嬉しくて涙が出そうだった。

 面影はあるものの話しかける事もなかったからもしかして勘違いかと思っていたとシゲ兄は言う。

 この日から私の生活に変化が起きた。

 朝登校して休み時間は勉強し、放課後は図書室でシゲ兄と会い話をするようになった。

 隣から引っ越して行ってしまった後の話も聞いた。

 シゲ兄の両親が離婚し母親について田舎に帰ったのだそう。

 引っ越し先近くの高校に編入し卒業した後は大学へ進学したため、それからは一人暮らしをしているとシゲ兄は話してくれた。

 教員免許を持っているのは大学生の頃に就職に悩んでいたときに当時好きだった女性から『先生ってかっこいいよね』と言われたからだって笑って話していた。

 それはそれは楽しいひと時だった。学校へ行くのが楽しみになった。

 まるで小学生の頃に戻ったようだった。あの頃もこんな風に色々話をして笑いあっていた。

 シゲ兄の部屋にはたくさんの本があって、漫画も小説もいろんな種類のものがあった。

 父子家庭でよく1人で過ごしていた私をシゲ兄は気にかけてくれていて、シゲ兄の部屋でたくさんの時間を過ごしたのだ。

 そのときにたくさんの本を教えてもらい私も読書をするようになったのだ。


「お前、元気に笑っている方が可愛いのに。なんで1人で過ごしてるんだ?昔はあんなに友達がいたのに」


 ある時シゲ兄にそう言われた。


「小6の時友人関係で失敗したの」


 あっけらかんとそう答えたらシゲ兄はビックリしていた。

 私は今までの事を全て話した。

 小6の運動会のときに失敗してしまいクラスの皆から無視されるようになったこと、あんなに仲が良かったのに簡単に離れていくくらいなら1人で過ごす方が楽だと思うようになってからはずっと1人だったと。

 全部話し終えると、シゲ兄は優しく頭を撫でてくれた。


「辛かったな」


 そう言いながらそれはもう優しい顔をして。思わず私は泣いてしまった。

 シゲ兄は私が泣き止むまでずっとそばにいてくれた。

 本当にシゲ兄はあの頃と変わらないままだった。

 そんな優しいシゲ兄が私は大好きだったのだ。


 シゲ兄は前の担任からしっかり引き継ぎを行っていたようで、クラスの誰が就職希望で誰が進学希望なのかをちゃんと把握していた。

 あと半年というところで担任が変わるという通常あり得ない事が起き皆も少なからず動揺するだろうと思ったシゲ兄はクラスの皆と積極的に関わっていた。

 クラス外でも何か困っている生徒がいれば助けてやったり、休み時間に共に校庭で駆け回ったりしていたのでシゲ兄に憧れる女生徒も増える一方だった。

 3学期に入り3年生は自由登校に入ってすぐの頃、2月14日のバレンタインはシゲ兄人気が凄まじかった。

 漫画の中でしか見たことないような光景、机いっぱいにチョコが載っていたのだ。

 やっぱりモテる人はモテるんだろうなぁと思いながら、自由登校になってからも変わらず学校へ来ていた私はその光景を見てチョコを渡すかどうか悩んだ。

 放課後になるとシゲ兄はいつものように図書室に来てくれていた。


「野乃、それもチョコ?」


鞄からチョコの包装紙が見えていたためにシゲ兄に気づかれてしまった。


「もしかして俺の?」


 ニヤニヤからかうように笑って聞いてくるシゲ兄は鞄に手を伸ばしてチョコを取ろうとしていた。

 私は恥ずかしくなってシゲ兄の手にチョコが取られないように慌てて鞄を背中に隠した。

 そのとき私はバランスを崩して後ろに倒れそうになった。それに気づいたシゲ兄が私を引き寄せようとするも2人で床に倒れ込んでしまった。


シゲ兄の息が顔にかかるくらい、2人の距離は近かった。


 心臓が、バクバクしていた。

 あまり近くで見たことのなかったシゲ兄の顔を、ここぞとばかりに私は見つめていた。

 意外と睫毛長いんだなーとか、目の下に小さなホクロがあるんだなーとか、唇ちょっと乾燥してるなーとかそんな事を思っていた。

 シゲ兄も私を見つめている事に気づいて、2人目が合っても逸らすことなく見つめ合っていた。

 そして瞬きをした時、2人の唇が重なった。


 それは数秒間の事だったのか、数分間の事だったのか。

 2人の唇が離れたとき、お互い我に返ったようで私もシゲ兄も顔が真っ赤になっていた。


「わ、私…初めてキスした…」


 私の初めて発言にシゲ兄は顔を青くした。


「ごごごごめん!野乃、ごめん!大事な初めてを俺なんかが奪って…!」


 シゲ兄は必死に私に謝ってきた。


「なんでか分からないけど、野乃の瞳を見ていたらなんだか…」

「キスしたくなった?」

「…!」


 シゲ兄はボンッと煙でも上がりそうなくらいまた顔が赤くなってもう土下座でもしそうな勢いでごめんを繰り返していた。私はそんなシゲ兄が面白くて笑ってしまった。


「ふふふ、気にしなくていいよ」

「でも…」

「どうしてもっていうなら、一つお願いを聞いてもらおうかな?」

「なんだ?なんでも聞きます!」

「ほんと?あのね…」


 私はもしもこの先もずっと1人で過ごしていくのなら、いつ死んでもいいようにどうでもいい人なんかではなくてこの人ならと思える人に捧げたいと思っている物があった。

 この人なら、シゲ兄ならば捧げても惜しくはない。

 昔隣に住んでいたかっこよくて優しい初恋のお兄さん。


「私の処女、もらってくれる?」

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