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XO  作者: 舞空エコル
3/7

3 親友


 お待たせしました!謎のXO第3夜「親友」の章ですよ!

 安心してください、今回は動物虐待はありません。

 それでは読んでみてくださいましー♪


 挿絵(By みてみん)

 なぜか巫女のコスプレで三味線を弾くエコルさん


「名前は高瀬泰裕(たかせやすひろ)…… ぼくはいつもヤスと呼んでいた。

 ヤスは小さい頃に父親を亡くしていて、母親が女手

 ひとつでヤスと、三歳年上の姉を育てていたんだ」

「高瀬君は、どんな人だったのです?」

「いい奴だったよ。勉強は苦手だったけどスポーツは

 万能で、みんなから人気があった。ぼくと正反対の

 キャラクターだったけど、不思議と馬が合ってね。

 将来はプロ野球の選手になりたいって夢を、ぼくに

 だけ話してくれていた…… 」

「なぜ、高瀬君は自殺したのですか?」

「集金したばかりの修学旅行積立金に、不足があって、

 調べてみたら、ヤスの机から、不足分に少し欠ける

 くらいのお金が見つかったんだよ」

「しかしそれだけでは、高瀬君が積立金を盗んだ証拠

 にはならないですよね? もしかしたら、真犯人に

 濡れ衣を着せられたのかも知れません」

「そうさ。でも、田舎の馬鹿な中学生の男子なんて、

 単細胞で陰険な奴らばっかりだからね…… いつもは

 持て囃していても、内心では女の子に人気のヤスを

 密かにやっかんでいたから、攻撃できる格好のネタ

 に飛びついた。すぐにいじめが始まったよ。卑劣で

 陰湿で度が過ぎてて、それはもう酷いものだった……

 とても見ていられなかった」

「しかし、高瀬君は実際には盗んでいないのでしょう?

 自殺なんかせず、然るべきところに訴え出て堂々と

 戦えば、また展開は違っていたかも知れないのに…… 」

「いや、それがさ…… 」

「どうかしましたか?」

「ヤスが休みがちになって、心配だったんで、家まで

 行ってみたんだよ。ヤスは一人でアパートの外壁に、

 何度も何度もボールをぶつけていた」


 軟球が壁に、繰り返しぶつかっている。


「ぼくは声をかけようとして、息を呑んだ。ボロボロ

 だったはずのヤスのグローブが、なぜかピカピカの

 新品になっていたんだ…… ぼくに気づいたヤスは、

 顔を真っ赤にして、グローブを地面に叩きつけると、

 そのまま自転車に跨って、走り去った…… 」

「ふむ…… なるほど…… 」

「ヤスが、橋の欄干で首を吊っているのが発見された

 のは、その翌朝だった…… 」

「遺書などはなかったのですか?」

「うん…… 探したけれど、結局見つからなかったな」

「おかしいですね…… では私の手許にある、これは?」

「え…… 何?」

「あなた宛になっています…… 差出人は、高瀬泰裕」

「嘘だ…… そんなはずはない! でっちあげだ!」

「筆跡が本物かどうか、親友のあなたなら一目見れば

 すぐに分かるはずですが、生憎とあなたはまだ目が

 見えない……  どうします? 私が代読しますか?」

「ああ、読んでくれ! ぜひ聞きたい!」

「分かりました」


 便箋を開く。


「では、僭越ながら…… 『良一へ』…… 」


 遺書を読む泰裕の声が聞こえる。


「良一へ…… おまえがこれを読んでいるとき、おれは

 もうこの世にはいない。集金の日の翌朝、おまえが

 誰もいない職員室から飛び出してきたのを見たとき

 も、まさかおまえが盗んだとは、思っていなかった。

 おれの机から、盗まれた金が出てきたときも、他の

 やつがやったんだと思っていた。濡れ衣を着せられ、

 どんなに責められても、いじめられても平気だった。

 真実は必ず明らかになると信じていたからだ。でも

 昨日おまえが、学校を休んでいるおれの様子を見に

 うちに来て、元気出せよと笑って、おれが欲しくて

 仕方なかったあのグローブを差し出してきたとき、

 真犯人が誰か分かってしまった。あのとき、おれが

 泣いたのは、グローブが嬉しかったからではない。

 悲しかったからだ。おれのボロボロの、色が剥げた

 ペシャンコのグローブより、おまえのあのグローブ

 は薄汚い…… おまえは、おれが真犯人を知っていて、

 おまえのことをチクると思ったのか? 自分が人を

 陥れたから、仕返しをされるかもと怖かったのか? 

 おれは、そのことが、何よりも情けないし、悔しい」


 泰裕が嗚咽している。


「心配するな。おれはおまえをチクらない。しかし、

 二度とおまえの顔は見たくない。おまえと同じ世界

 で息をし続けることに、もうこれ以上耐えられない。

 おれは死ぬ。だがおまえは死ぬな。おまえが来ると

 そこが天国でも地獄でも、あらゆるものが、汚れて

 腐ってしまう。おまえは現世で、ずっと、ずっと、

 ずーっと! 人でなしのままで、腐りつづけていろ。

 おれはおまえを、恨んではいない。おまえみたいな

 卑怯者を親友と思っていた、自分が許せないだけだ。

 だから安心しろ。化けて出たり、呪ったりもしない。

 おまえとはこれで完全に、永遠に、究極に、絶交だ!」


 縄がギシギシと軋って、欄干に擦れる。  


「だから…… これは…… これは何の冗談だ? ぼくを

 こんなふうに陥れて、一体、何が楽しいんだ?」

「…… では、覚えはないと?」

「あるもんか! ヤスは親友だったが、ぼくに盗みの

 証拠を目撃され、それを恥じて自ら命を絶ったんだ!

 こんなでっちあげは、ぼくだけではなく、自分の命

 で罪を償ったヤスの名誉をも傷つけ、愚弄している!

 いいかげんにしろ!」

「忘れていました。手紙が、もう一通あったのですよ」

「ふん! どうせまた、ぼくを極悪人に陥れるための

 でっちあげだろうよ!」

「読みますか? いやなら、破り捨てますが…… ?」

「構わない! 読んでくれ!」

「分かりました…… この手紙は、女性からのものです。

 あなたの中学時代のクラスメート、奥只見和枝さん

 からの手紙ですね」

「お…… 奥只見さんだって?」

「はい。では、読ませていただきます『黒部君』…… 」


 和枝の声が聞こえてくる。


「黒部君、お手紙受け取りました。交際の申し込みは

 きっぱりとお断りさせていただきます…… あなたも

 ご存知のように、私は高瀬君と付き合っていました。

 高瀬君はあんな悲しいことになってしまったけれど、

 私は今も、いえ、これからもずっと高瀬君が大好き

 です。誰もが高瀬君を泥棒だと思っているけれど、

 私が知っている高瀬君は、あんな卑劣な盗みをする

 人ではありませんでした。世界中の人たちがみんな、

 高瀬君を泥棒と決めつけても、この私と、高瀬君の

 お母さんとお姉さんは、これからもずっと、ずっと

 高瀬君が潔白であることを信じ続けます。ショック

 だったのは、高瀬君が一番の親友と言っていた黒部

 君までが、高瀬君を犯罪者と決め付けて、ましてや

 高瀬君のご遺族まで悪く言うことです。あなた自身

 に自覚はないでしょうが、あなたの手紙は、どれも

 高瀬君を見下して侮辱する内容ばかり。読んでいて

 腹立たしく、辛かったです。悔し涙が(にじ)む程でした。

 こんな卑劣な人のことをずっと親友だと思っていた

 お人好しな高瀬君のことを思うと、本当に可哀想で

 やりきれません。はっきり申し上げますが、黒部君、

 私はあなたが大嫌いです。金輪際、二度と私に手紙

 を出さないでください。手紙が届いたら通報します。

 高瀬君が亡くなってからあなたが執拗に繰り返した

 私へのつきまといの経緯は、警察にも学校にも既に

 報告済みですし、私の新しい移転先には、あなたを

 投げ飛ばし警察沙汰になった、柔道七段の兄が同居

 しています。兄は、またあなたが私に会いにきたら、

 今度は容赦しない、殺してやるとまで言っています。

 二度と、もう二度と、絶対に私の前に姿を現さない

 でください。あなたが嫌い。本当に大嫌い。心の底

 から嫌い。絶対に許せない。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い! 

 この世から消えていなくなって。大嫌い!死んで!

                   奥只見和枝」


 咳払い。


「…… 以上ですが…… 」

「いや…… いやいやいや、いや! 嘘だ、嘘だ、嘘だ! 

 ありえない…… これじゃぼくは、まるでストーカー

 じゃないか!」

「行き過ぎた情熱は、ときに暴走しがちなものですし」

「確かに、確かに奥只見さんは学校のマドンナだった。

 可愛くて活発で、ぼくも彼女には憧れていた。でも、

 ヤスが彼女と付き合っていると聞いて潔く諦めたよ。

 そもそも、彼女には手紙なんて一通も出した覚えは

 ないぞ! 捏造にも程がある!」

「つまり、奥只見さんが、嘘をついていると…… ?」

「だから…… 誰かのでっちあげだって! だいたい、

 奥只見さんに、柔道七段の怖い兄貴がいたなんて話、

 今初めて聞いたよ。投げ飛ばされた覚えも全くない」

「これもまた、落下の衝撃による、記憶の混乱と?」

「或いは、何度でも言うけど、悪意のでっちあげだよ」

「あなた自身が、無意識のうちに、嘘をついていると

 いうことは考えられませんか?」

「ぼくが、ぼく自身に嘘をついているっていうのか?」

「そうです。あなたの罪悪感や自己嫌悪が、あなたの

 価値観やプライドを傷つけないように、防衛本能を

 フル回転させ、ここまでの記憶から不都合な真実を

 アレンジしたり、削除したりして懸命に取り繕って

 きたのに、ここに落ちてきた衝撃で全てが赤裸々に

 晒されて、あなたの…… いわゆるレゾン・テールに、

 揺さぶりをかけているのではありませんか?」

「揺さぶりをかけているのは、あなたじゃないのか?」

「なかなか鋭いご指摘ですね」

「そもそも、あなたは何者なんだ?」

「全ては失われた記憶を取り戻したときに、明らかに

 なります」

「そればっかりだな…… 分かったよ。次は何だ?」

「あなたの高校時代の…… 」

「ひき逃げを目撃した話でいいかな?」

「そうです…… あの寒い日の朝の」

「どうしてぼくが話す前に、あなたは知ってるんだ?」

「そういうことも含めて、追々分かってまいりますよ」


 パトカーのサイレン。


 いかがでしたか?やっぱり酷い話でしたねー。しかし次回! 

 次回こそは心が癒されほっとする話になるかもしれません!

 タイトルは「ひき逃げ」ですけどね♪ 乞うご期待!

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