表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
XO  作者: 舞空エコル
2/7

2 犬

 お待ちかね「XO」第二章、 ワンワンのお話です。

 どんなお話なんでしょうね? 楽しみだワン!

 ではどうぞー♪


 挿絵(By みてみん)

 本編とは本当に何の関係もないバレーボールエコルン♪


「ベス…… 」

「ベスとは?」

「子供の頃、うちで飼っていた犬だ。近所の空き地に

 捨てられていた子犬を、小学生だったぼくが拾って

 きて、父母を説得して飼い始めたんだ」

「ベスは可愛かった?」

「もちろんさ! ぼくは一人っ子だったからね、兄弟

 みたいなもんだったよ」

「…… 弟みたいだった、と?」

「いや、ベスは(めす)だったからね。妹だな。冬になると

 犬小屋が寒いって、窓の外からクンクン甘えた声を

 出すんだ。母さんに見つからないように、こっそり

 ベスを部屋にあげたら、一緒に布団にくるまって、

 仲良く寝ていたもんさ」

「そのあと、お母さんには叱られましたか?」

「そりゃもう、こっぴどくね! それから大体一週間

 くらいはおとなしく別々に寝ていた。でも、頃合を

 見計らって、性懲りもなく、また部屋にあげて……

 それを何度も繰り返していたら、ようやく母さんが

 音を上げて、部屋で一緒に寝ることを許してくれた」

「なるほど…… ベスとの思い出で、特に印象に残って

 いることは何ですか?」

「ああ、それなら、ベスがぼくの布団で子犬を産んだ

 ことかな?」

「子犬を?」

「びっくりしたよ! でもまあ、子犬が生まれるのは

 想定内だったんだけど」

「想定内だったのに、びっくりしたのですか?」

「うん。飼い始めて分かったんだけど、ベスは純血種

 の柴犬だったんだよ。それで、雄の柴犬とお見合い

 させて、妊娠が分かってからは僕の部屋の押入れに

 産室も用意して待機してたんだ。ところが、夜中に

 産気づいたベスは、産室はスルーしてぼくの布団に

 入ってきて、そのまま次々と五匹の子犬を産んで…… 」

「それは、大変でしたねえ」

「まあ、さすがに布団はもう使い物にならなくなった

 けどね、生まれたての子犬が、あんまり可愛いんで、

 ぼくも家族も舞い上がっちゃってさあ!」


 子犬の鳴き声。


「その子犬たちは?」

「みんな里親に貰われていって、幸せに暮らしている

 はずだよ…… ベスの出産はそれっきりだったけどね。

 体が弱かったから家族で相談して、早いうちに避妊

 手術を受けさせたんだ。ベスの健康が第一だからね」

「ほお…… で、その後、ベスは?」

「それがさあ…… 病気であっけなく死んじゃったんだ。

 もちろんぼくも悲しかったけど、それより母さんの

 落ち込みようがひどくて、見てられなかったな……

 母さんは、ぼく以上にベスのことを可愛がっていた

 からね…… もう、号泣しちゃってさあ」


 女の泣き声。犬の遠吠え。


「嘘よ! 嘘よ! 嘘よおおおお!」

「な、何だ、この声は? 誰か女の人がいるのか?」

「いえ、みすぼらしい雑種の犬が一匹、いるだけです」

「…… 犬が?」

「私だよ…… ベスだよお! 良一、忘れたのかい?」

「ベス? ベスならとっくの昔に死んだはずだが…… 」

「どうしてこの期に及んで、そんなに取り繕うんだい?

 良一、本当のことを話しておくれよ。私は純血種の

 柴犬じゃないタダの雑種だったし、あんたの母さん

 は私のことを、臭い汚いと忌み嫌ってたじゃないか?」

「お、おい…… これは一体、どういう仕込みなんだ? 

 説明してくれ!」

「仕込みも何も…… あなたに向かって、雑種の犬が、

 吠えているだけですが…… 」


 犬が吠えている。執拗に吠えている。


「だったら、どかしてくれ…… 何か腐った臭いがする!

 我慢できない! 吐きそうだ!」

「ひどいことをお言いだねえ。自分がやったくせに…… 」

「な、何の話だ!」

「…… 柴犬を飼っていた友達が羨ましかったあんたは、

 空き地にいた野良の雌犬を、荒縄でふん縛って家に

 連れ帰ったんだよ。そして、共働きの親には内緒で

 自分の部屋の押入れに閉じ込めた。だけど、その犬

 は妊娠していて、すぐに子犬を産んだ。うろたえて

 始末に困ったあんたは、私の必死の懇願も無視して

 子犬たちを全部段ボール箱に詰めると、裏の溜め池

 に投げ込んだんだ!」


 水音。助けを求める子犬たちの悲痛な鳴き声。


「そ、そんなことはしていない!」

「仕事から帰ってきてすぐ、臭いに気づいたあんたの

 母さんは、押入れでブルブル震えている病み衰えた

 私を見つけて、黒いゴミ袋を被せて引きずり出すと、

 二階の窓から地べたに、無造作に投げ捨てた!」

「嘘だ…… 嘘だ…… もうやめてくれ!」

「そこにちょうど帰ってきた小学生のあんたは、腰の

 骨が折れて、息も絶え絶えになった私と、凄まじい

 剣幕で二階の窓から喚き散らす母さんを引き()った

 顔で交互に見比べて…… 」

「そんなことは…… 嘘だ…… 嘘…… 嘘…… 」

「手にした金属バットで、私をぶん殴って追い立てた!

 わあわあ喚きながら…… 私は動かない下半身を引き

 摺って、必死にあんたの酷い仕打ちから逃げたのさ」

「嘘だあああああああああああ!」

「あんた…… 私とはそれっきりだと思っていないかい? 

 ところがその後に再会しているんだよ。子犬の死体

 が浮き上がってきていないか不安になって、あんた

 が溜め池まで様子を見に来たとき、水際でカラスが

 止まっていた汚いボロクズを覚えてるだろ? あの    

 ボロクズが、私の成れの果てさ。あんたがもう少し

 回り込んで覗き込めば、カラスに目玉をついばまれ、

 ぽっかり穴の開いた私の顔を、まともに見ることに

 なっていただろうに…… そうしたら、ありったけの

 恨みを込めて、牙を剥き出してやったのにさ!」


 犬の唸り声。カラスの鳴き声。羽ばたき。


「う、嘘だ…… ベスは確かに柴犬だった。子犬を池に     

 捨てた記憶もないぞ…… し、信じてくれ! ぼくも、

 それに母さんも、そんな酷いことはしていない!」

「落ち着いて。誰もあなたを、責めてはいませんよ」

「でも…… でも思ってるんだろ? ぼくが…… ぼくが、

 ベスに酷いことをしたって?」

「もう済んだ話です。それに幼い頃の記憶はトラウマ

 を避けるために、誇張されたり、美化されたりする

 ものですからね。違いがあるのは仕方がない」

「違う! 本当に違うんだって…… あっ! そうか! 

 きっと落下の衝撃で、記憶に混乱が…… 」

「まあまあ…… 失われた記憶を取り戻せたら、全ては

 明らかになりますよ。では次は、思春期の思い出を

 聞かせてください。中学生は小学生の頃より自我が

 確立しているから、記憶のゆらぎや齟齬(そご)も、ずっと

 少ないでしょう」

「分かった…… 中学生の頃、ぼくには親友がいたが…… 」


 カラスの鳴き声に重なって聞こえる学校のベル。


「その親友が…… 自殺した」

 酷い話だなあ…… しかし次の章ではさらにしんどい

 展開になるかもしれないし、ならないかもしれない。

 乞うご期待!(←乞うなよ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ