1/48
プロローグ
「……好きだよ」
その言葉が、空気の中に落ちていった。
誰もいない教室。
窓の外では夕陽が沈みかけていて、
光が彼の横顔の輪郭だけを照らしていた。
返事は、なかった。
ただ沈黙があって、遠くでチャイムが鳴った。
(やっと言えたのに、
どうしてこんなに苦しいんだろう)
彼は少し笑った。
笑っているようで、どこか痛そうだった。
あの時の彼女の瞳の色を、
彼はたぶん一生忘れない。
――この気持ちは、最初から報われないとわかっていた。
けれど、それでも、言わずにはいられなかった。




