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名前のない放課後  作者: えあな


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プロローグ

「……好きだよ」


その言葉が、空気の中に落ちていった。

誰もいない教室。

窓の外では夕陽が沈みかけていて、

光が彼の横顔の輪郭だけを照らしていた。


返事は、なかった。

ただ沈黙があって、遠くでチャイムが鳴った。


(やっと言えたのに、

 どうしてこんなに苦しいんだろう)


彼は少し笑った。

笑っているようで、どこか痛そうだった。


あの時の彼女の瞳の色を、

彼はたぶん一生忘れない。


――この気持ちは、最初から報われないとわかっていた。


けれど、それでも、言わずにはいられなかった。



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