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車で逃げた男は「忌々しい壁外生物めが。」と自動で走る車の中で独り言をつぶやく。ちなみに車両は珍しいカードであり彼のカード。だからこそ彼らはジョージの重い物のみに反応する“遠隔地雷”が爆発したときは十中八九死神が壁の外に出てきた時なのだと判断していた。そんな彼の走る道の目の前に急に黒い大きなロボットが現れ、それが車両を受け止め、つかみ、止める。彼が混乱していると「いい仕事だ、“デューティー ノンペイド”」と呟きながら髪の長い男がふらっと現れる。

「よお、死神も一人で散歩するんだな。意外だぜ。」

男はもちろんタカである。てっきり2、3人、最低でも1人は死神についてきているだろうと思っていた彼は心底驚いている。

「悪いな、ここは俺の庭で、通るやつからは通行料をとってるんだ。通行料はドクター トランスファー1枚さ。お前だけじゃない、みんなドクター トランスファーで払ってる。だから平等にとらないとな。」とタカは馬鹿にするような笑みを浮かべながら死神に話しかける。

「下等な壁外生物が、調子に乗るな!黙って生命力を献上するんだな!」と死神が青筋を立ててタカに言うと彼は「いいぜ、勝てたらな。」と返し、車から降りた死神とタカのアーティファクトによるゲームが始まる。

「思えば私を孤立させる作戦だったのだろう。所詮下等生物の知恵だな。私が一人になったところで壁外生物が私に勝てるわけがないだろう!」と言いながら死神はカードをスタンバイする。

「俺たちがどれだけこの時を待っていたか。知ってんだぜ、ずーっと見てたからな。お前は初手に、生物系の、数字が高いカードを出す。」

タカがそう言いながらカードをスタンバイすると二人のカードが具現化する。タカのカードは“ロックハート・メタルボディ”。

「知っていたところで意味がないな。まさか3のカードで私の優秀な生物カードたちに勝てるとでも思っていたか?理解しがたいな。行ってください、“バイオスーパー人間”!」

死神の目の前には紫の肌をした、目の充血したムキムキの人間が現れる。数字は5である。バイオスーパー人間はタカのロックハート・メタルボディに襲い掛かる。対しギターを持ったその機械はそのギターで爆音をかき鳴らす。演奏が始まると襲い掛かろうとしていたスーパー人間は突如耳を抑えてうずくまり、そのまま消滅する。

「知っているんだよ。お前の高い数字の生物系カードは全部、耳がよすぎる。」とタカが死神に教える。その言葉を聞いた死神は自分のことが知られている気持ち悪さを感じるとともに嫌な予感が一瞬だけよぎる。彼はとっさに「うぬぼれるなよ、壁外生物相手にはそもそも彼らを使う必要すらないんだ。」と口にする。心理的優位に立たれるのを防ぐためにここは黙っているのはよくないと彼は経験的に判断した。不安を振り払うように彼は次のカードをスタンバイし2戦目が始まる。

「きてください!“合体生物 兎獅子”!」死神が叫び姿を現す。ライオンにウサギの耳が生えた狂暴な見た目で数字は5である。

「“ダーツマン pro”。上手くやってくれ。」タカの前には人間の形だけを精巧にかたどったダーツを持った数字が3の機械が現れる。ダーツマンは長い耳の生えた獅子に向かって正確にダーツを投げていくが、相手はそれをものともせず飛び掛かり機械を破壊する。死神はこれで1勝1敗に持ち込めたが軽口はたたけない。それだけタカを警戒し始めている。タカも集中している。普段ならすかさず「数字の高い生物のカードは必要なかったんじゃないのか?」と軽口をたたくところではあるが、そういった挑発が通用しない相手だと短い攻防の間で感じ取っていた。2人はよく考えて次のカードを選ぶ。

「こい!“デューティー ノンペイド”!」。そういうタカの前の現れた黒い機械を見て死神はおもわず苦い顔をする。死神の選んだカードは“旧式軍用車両”、彼の手札の中で元々の数字が最も高いカードであった。しかしこれは先ほど現実で行われた対決である。その対決はやはり先ほどの焼き直し、まったく同じように突進する車両は止められる。今回はおまけに車両は破壊される。1勝2敗に追い込まれた死神だが補充したカードを見て冷静さを少し取り戻す。しかしそれを顔には決して出さない。彼も、便利なカードを所有しているからという理由もあるが、もしそれがなくともオフィサーの中のエリートである徴収官に任官されていたであろうとされる実力者。ゲームの腕前はなかなかのものだ。彼はあえて苦い顔をしながら、「ゴミクズが、調子に乗るなよ!」と誰もがそれは虚勢であるだろうという声色と表情で叫ぶ。強い手札が揃ったにもかかわらず彼は油断しない。先ほどまで壁外生物と下に見て罵倒していたタカをすでに非常に危険な相手だと認識している。

「もう一発、高級品だ。パチモンだけどな!“スーパーコピー”!」タカがそう呼びだしたのは先ほど出したデューティーノンペイドと全く同じ姿のカード。スーパーコピーは前回出したカードの数字をマイナス1した数字になるカード。故に数字は4。

「驚きはしたが、所詮、その程度か。やってください!“盲目の蘇生実験体”!」死神が引いたカードは3枚目の数字の高い生物系カード。先ほど彼が補充したカードだ。これで彼の持つ全ての高いカードを繰り出したことになる。ちなみに5のカードはデッキに3枚、6のカードは2枚、それ以上のカードは1枚ずつしか入れられない。もっとも彼は繰り出した3枚しか所有していないが。“盲目の蘇生実験体”は体が黒いものに覆われた巨大な機械ではない何か。それがゆっくり前へ進んでいきスーパーコピーを飲み込む。黒い巨大な体を持つ機械の抵抗もむなしく取り込まれてしまう。これで、2勝2敗となる。次の勝者がゲームの勝者になるという状況でタカが一人笑い出す。

「やっぱ、カードゲームはどこまで行ってもゲームだな。いろいろかかっているっていうのに、楽しくてしかたねぇな。」

あれほど目の敵にしていた死神とのゲームですらも心の底から楽しみ、そう発言するタカ。対して死神はとてもそれに同意できる心境ではなかった。彼にとってこのゲームは背負っているものの大きさと強力な敵と対峙している緊張が彼の神経をすり減らしていくだけのものだった。しかし最後のカードをスタンバイするとその緊張もわずかにほどける。対してタカは最後のカードを決めかねていた。死神のデッキには数字が低い物にも生物が多い。それが彼の頭から離れない。しかし彼はやはり、彼の切り札を信じることに決める。

「やっぱり、こういうビッグプロジェクトは俺自身で決めないとな。決着と行こうぜ。さあ、こい!俺の化身よ!“規格外高機能機械兵”!」

「ようやく決めたか。だがそれも無駄だ!現れてください!“ドクタートランスファー”!」

タカの前に現れたのは無骨でゴテゴテと様々な武器や何に使うかもわからない機械、それにひときわ目立つアンテナがとりついたロボット。数字は7とかなり高い。対して死神は壁外で最も恐れられているカードを展開する。しかしその数字は2。機械兵の数字を確認した死神は驚きながらも自身のカードの特殊能力を発動していく。

「ドクタートランスファーは私の、このゲームに勝利した生物系カードの数字を自身の数字に加算できる!“合体生物 兎獅子”から5!“盲目の蘇生実験体”から2の生命力を吸収し自身の数字を9にする!」

死神がそう叫ぶとドクタートランスファーはまず死神のそばに控えている勝利していた合体生物 兎獅子に近寄り、右手を当てる。

「まさか7のカードを持っているとはな!私でなければ破れていただろう。お前の生命力も吸ってやろうと思っていたが、そのカードで勘弁してやろう!」

ドクタートランスファーが兎獅子に右手を当てている間に死神が叫ぶように、安心しきって発言する。しかしいつまでたってもドクタートランスファーは兎獅子から右手を当てたまま離れない。不審に思った死神は「どうしました?」と自身の機械に尋ねる。

「最高に、興奮する勝負だったぜ。ああ、悪いが、規格外高機能機械兵はただ7なだけじゃない。他の機械の効果も無効化する。お前が死神でも、俺がそこにいれば誰も殺させはしねぇよ。」

タカが言い終わると機械兵は両手を前に突き出し、それを大小さまざまな銃身に変形させる。様々なサイズの弾丸やミサイルをドクター トランスファーに向かって発射、爆発が起こる。爆炎が晴れた時、そこに壁外の住民に長い間最も恐れられ、その命を奪い続けてきた機械の姿はなかった。

「まけ、たのか?」と死神が呟く。「嘘だ、嘘だ。」と続ける。タカが「じゃあ、きちんと通行料はいただくぜ。」と言うと死神の体から光の玉が一つ飛び出しタカの体に移動する。チャッカマンOOOを呼び出し一服するタカに向かいかつて死神と呼ばれた男が言う。

「そ、そうだ。お前、いや、あなたは、人間なのでしょう?人間なのに壁外に産み落とされた同胞なのでしょう?ぜひ、歓迎するので、ほかの同胞を、人間をそのカードで救っていただきたい!」

そんな彼の提案をタカは「確かに俺は人間だが、却下だ。」さらに「俺は壁外で生まれた、真っ当な人間さ。他をあたりな。」と続け一蹴する。しかし死神と呼ばれた男は食い下がる。

「そのカードの力を!癒しの力を!求めている人間がたくさんいるんです!そのカードがあれば救われる人も、そのカードがなければ最低限の健康的な生活を送れない人も!」彼は息継ぎもなしに続ける「あなたも知っているでしょう!壁外生物がどんなに下等で低能で考えなしの阿呆どもか、ここに住むあなたなら私よりも知っているでしょう!あなたは高等な人間、同胞なのだからみんな歓迎します!壁の中にはこんなところの連中よりもあなたにふさわしい友人になれる人がたくさんいる!食事だって、、」と言いかけたところで目の前の必至な男の話が長くなりそうだと感じたタカは丁度呼び出していたチャッカマンOOOに彼を殴らせ、気絶させ黙らせる。

「あまり聞いていなかったが、ここの奴らが低能で考えなしの阿呆で最高だってところは同意しておくぜ。」と気絶した男に語り掛けるとタカはその場を去る。


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