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もちもち姉さん改めナオミにケンとタカが別れを告げてから1か月が経とうとしていた。その間4人は各自思い思いに時には喧嘩もしながら楽しく過ごしていた。そんな日のある朝、彼らの住処であるビル跡前からの巨大な爆発音で4人は目を覚ます。

「今日も来たみたいだね。」とジョージがつぶやく。爆発したのはジョージのカード、“遠隔地雷”。あらかじめ巨大な壁と外をつなぐ門の近くに仕込んである仕掛けを重いものが踏めば住処の前で爆発するように用意されていたのだ。この爆発音も彼らにとっての日常である。

「じゃあ、見てくる。」と背中に改造ジェットパックを背負い飛び出しそうなシュンを「待て、忘れ物だ。」と止めるのはケン。彼は1枚、ロボットのカードを具現化しそれが持っていた小さい部品のようなものをシュンに渡す。具現化されたカードは“盗聴ロッキー”、シュンが渡されたものは盗聴器である。それを受け取ったシュンは住処を出ていく。

「さあ、今日はどうかな。」。ジョージが呟く。

「そろそろ、作戦とか言ってないで無理やりにもいかないとやばいかもな。」とタカも呟く。いつもならジョージやケンはそれを否定するが、今日はしない。最近状況が日に日に悪くなっているのを二人も感じているからだ。気まずい静寂がしばらく流れる。そしてそれをテンションの高い声が破る。発言者はここにはいない。その声は“盗聴ロッキー”の持つ機械から流れている。

「てめぇら!死神で間違いない!東の最善のポイント、Bの方角だ!抑えろ!」それを聞いた3人はとくに何を言うわけでもなく嬉しいような、興奮したような、緊張しているような表情で“盗聴ロッキー”も連れて駆け出す。すぐに「最善のポイント、Bに拠点を構えやがった!俺は位置につく!死んだやつのカードは生き残った奴のカードになるって賭け、忘れてねぇよな。カードとられたくなきゃ死ぬなよ!」と続報が入る。

それを聞いたケンが“盗聴ロッキー”をしまうと「シュンはああ言っているが、死んでも死神は倒せよ、タカ。2人とも健闘を祈る。俺はこっちだ。」と言い分かれ道で分かれていく。さらに進むと今度はジョージが「僕はそろそろ目的地だ。まあ、気楽にね。」といいその足を緩める。ジョージは一人で目的地まで走っていく。

一方そのころ、彼らに“東の最善のポイント、B”と呼ばれた場所であるそれぞれ西と南、北東から延びる大きな道の交差する少し開けた広場のような場所には1台の車両と数人の防弾チョッキのような厚さのある制服を着たオフィサーが現地住民を捕まえ、集めていた。オフィサーの数人は「カードを出せ!」と叫びながら住民をたたきつけている。死んでしまえばカードは2度と取り出せない。だからこそ暴力でカードを住民から取り上げようとしているのだ。

「ち、徴収官。死神も、いる。」

新たにとらえられやってきた住民の一人の絶望し、おびえたような呟きである。徴収官とは壁外の住民からカードを没収していくオフィサーの中の実力者で固められた集団である。

「壁外生物ごときがカードを持ちやがって。限られたリソースを人間から奪っていく害獣が。」とは徴収官の一人の呟きである。それを聞いた捕まえられている若者の一人が「お、俺も人間だ!“壁の試験”を受けさせてくれ!」と主張する。徴収官は「確かに人間なのに壁外に産み落とされた哀れな同胞は助けるべきだ。」と返しさらに「では聞くが今のわれら人間の王の名はなんだ?」と問う。試験を要求した若者はその名前がわからず答えに詰まっているとその徴収官に殴られる。「その程度もわからぬ下等生物が人間を騙るな!“壁の試験”を受ける価値もないわ!」とさらに暴力を続ける。それを止めるのは線の細い、眼鏡をかけた他の徴収官。

「無駄な暴力はやめなさい。壁外生物の生命力も、貴重なリソースなのだから。」

彼がそう言うと暴力を振るっていた徴収官はピタリと殴るのをやめ、「失礼しました!今池先生!」という。暴力がやんだというのに殴られていた若者の顔は青くなる。さらに「し、死神!やめろ!やめてくれ!」と叫ぶ。眼鏡の徴収官がその声を無視して指をはじくとそばに控えていた白衣を着た機械が片手で若者の首をつかみ持ち上げる。つかまれた若者は見る見るうちに老いて、ついには力尽きてしまう。

「良い調子ですね。“ドクター トランスファー”。この調子で壁外生物の生命力を奪い、多くの人間を救いましょう。」と死神と呼ばれる男は自分の機械に語り掛ける。このカードこそ彼が壁外の住民に“死神”と恐れられる理由。彼の機械、“ドクター トランスファー”は右手から生物の生命力を吸いつくし、左手から吸い取った生命力を他人に譲渡することで対象を治療や回復させることができる。彼らが知る限り、彼の持つ1枚しか見つかっていないカードだ。

「さて、では次はそこの子供から吸い取りましょう。どうせカードも隠し持っていないでしょうし。」と彼が呟くとドクタートランスファーは子供に右手をかざし、つかもうとする。しかしそれがかなうことはなかった。その機械の右手は野球ボールにはじかれる。

「よおよお壁の中のろくでなしもの!調子はどうだい!今週毎日来てるじゃねぇか!そろそろ年貢を納めてもらおうか!」と野球ボールの飛んできた方向から男の声がする。声の主はシュンである。

「年貢と言っても、こんな豚で納めてもらったら困るが。」と北東の道からケンの声がすると死神に向かって周辺の住民を捕まえに行っていたオフィサーの一人が死神に向かい投げつけられる。

「僕たちは優しいからね。“ドクタートランスファー”1枚で満足してあげるよ。」

西の道にいつのまにか現れていたジョージが2人の気絶したオフィサーを足元に転がしながら言う。オフィサーたちが状況を理解する前に空からシュンが広場の中心に向かい加速、ケンとジョージもそれぞれの道を守るように少しずつ前進する。壁の中で有名な3人の姿を見たとらえられていた住民も希望を見出し、力を振り絞りわずかな力で反抗する。

「くっ、我々も壁外生物などに後れは取りませんが、万が一ということもあります。奴らの狙いは先生のようです。幸い、壁の方向の道では騒ぎが起きていません。先生は車両で先に帰って報告してください。」

急襲されたオフィサーは若干苦い顔をしながら発言する。さらに「念のため、何人かつけましょう。」と付け加えるが、「必要ありません。私はこの中の誰よりも強いことをご存知でしょう。それに相手も少しはやるようです。ここはこの場の制圧に人数を割くべきでしょう。」と却下される。「本当は私も残って制圧したいところですが、上手く襲われてしまいました。仕方ありません。」と付け加えると車両に乗り込み北に向けて出発する。3人は死神を逃してしまうが、想定していたどんな状況よりも良い状況にあることを確認し内心勝利を確信する。


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