表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

19

「清水治安維持部長!お待ちしておりました!あとは私に任せて皆様はお帰りください!」

オフィサー本部にたどり着いた彼らに一人のオフィサーが駆け寄ってくる。部長は違和感を覚えながら「良い、我々で行う。」と答えるが駆け寄ってきたオフィサーも「上の方から、清水治安維持部長とそのご一行にはゆっくり休んでもらうよう、私がやれと言われております。」と引き下がる。部長のほうも引き下がらず自分たちでやるという主張をした結果、駆け寄ってきたオフィサーも手伝うという形で落ち着く。

「ところで、」部長が切り出す。「今日は妙に人が多いな。」とタカを連行しながら彼は問う。それに「いつもこんなもんですよ。」と答えるのは駆け寄ってきたオフィサー。しかし部長も、彼の部下も違和感を覚えている。手続きを済ませタカを拘置所に入れた部長は「少し、上のほうを見ていくか。」とつぶやく。その言葉を聞いたオフィサーは少し焦りながら「長官が、今日は30階以上には入らないでほしいと、おっしゃっておりました。明日にしてはどうでしょう。」と答える。

「笑えるね。お前もあいつにはめられたのか。仲よくしろよ。」と拘束されているタカが部長に言う。部長はその言葉を無視し、「君に止める権限はない!」と声を上げ彼を止めるオフィサーをどけると後方支援室を目指し上階へ向かう。

「やはり来たか、清水君。もう少しだけ、ゆっくりしていてもよかったんだがな。」

エレベーターで後方支援室のある階まで上がった部長を長官が待ち構えていた。エレベーターの前にある広い空間に座り、コーヒーを飲みながら書類を眺める長官に治安維持部長は「金山後方長官!説明していただこうか!」と詰め寄る。長官はそれに何でもないように、「トップオフィサーの本郷氏に横領の疑惑が上がり急遽調査中だ。全く、困ったものだ。」と答える。横領容疑は当然でっち上げである。部長は万が一にもないだろうが、念のため、といった口調で「これは正規の手順を踏んだ捜査でしょうか?」と尋ねる。

「いいや、こういう時は、伝統的に被疑者が証拠を破棄する前に抑えるものだ。」と長官が答える。長官は部長やその部下が本部にいればこの捜査を止められることはわかっていた。だからこそタカが襲撃するであろう今晩無理やり捜査を始めたのだ。彼にとってはタカも捕まえることができるうえ強引な捜査もできる、急ではあったがやる価値も必要性もあった。「この捜査を、即刻中止していただきたい。」と部長は彼に物申す。長官は「まあ、もう少しだ。少し遊ぼうじゃないか。」と答えゲームが始まる。

「ただの時間稼ぎだ!私は貴方の定石を知っている!」と部長が長官よりも早くカードをスタンバイする。長官は何も言わず、相変わらず表情を変えずカードをスタンバイする。

「現れろ!捜査員ネズミ!」。部長の前に機械を装備したネズミが現れる。

「特殊能力発動!ライブラリアン!」。長官の前には明らかに戦闘に向いていない機械が現れる。両方とも数字は2であり、引き分ける。「捜査員ネズミの能力も発動させてもらう。あなたの手札を一枚ランダムに確認する。」と難しい顔をしながら部長が宣言すると彼は長官の手札にあるカンフースター リバイブを確認する。

「定石を捨てたのか?」と部長はつぶやく。彼の知る長官の定石では最初は5や6のカードを使い様子見の相手のカードを倒したうえ、圧をかけてくるので疑問に思ったのだ。長官はいつもの調子でカードを補充し確認するとすぐにスタンバイする。部長も少し考えるが長官の考えていることはわからない。不審に思いながらも彼もカードをスタンバイする。

「照らせ!“サーチライトバード”!」と叫ぶ部長の前に現れるのはライトのついた機械の鳥。数字は4。

「絵にあまり強い光を当てないでくれ。こい!“殺人絵画”!」と長官の前に絵画が現れる。ライトを持つ鳥は絵を照らし、それを怪しむようにチェックしていると突然、絵に仕込まれた機械仕掛けが動きだしその中から刃でできた腕が8本現れる。鳥は逃げるまもなく腕につかまれ絵画に引きずり込まれていく。それを確認した長官は手札を補充しまたすぐにカードをスタンバイする。

「そうか、定石が1つしかないわけがなかったな。」と部長が呟く。長官も「その通り。相手が自分の定石の一つを知っている場合の定石も、相手が私の手札のカードを知っている場合の定石もどんな場合にも対応できるのが金山家の定石だ。」と答えさらに「もちろん、私が相手の持っているカードを知っている場合の定石も、ある。」と珍しく煽る。

「私に挑発が通用するとでも!来い!“まる坊”!」。部長の前に現れるのは小さくデフォルメされたいかつい警察官の機械。かわいらしいが数字は5ある。

「それもいいだろう。来い!“仕える彫刻”!」。長官が選んだカードは3の数字を持つ動く石像。まる坊のその大きさからは考えられないパワーで石像は破壊される。また同じように長官がカードをスタンバイする。部長は少し考える。彼には長官の手札に6のカンフースター リバイブが存在すること、またおそらくライブラリアンの特殊能力により切り札である8の数字を持つ旧世紀からの生存者が存在していることがわかっている。彼の手札にあるのは1枚はその2枚両方に負けるカードだが、カンフースターと引き分けの取れるザ・ジャッジ、生存者を倒せる特殊能力を持つ“弁護士フェニックス”が存在している。まだお互い一敗ずつしかしていない。普通に考えればまだ切り札を切る時機ではなく長官が定石に従っていることを考えるとまだ見ぬカードかカンフースターを切ると彼は考えカードをスタンバイする。

「ゲームに、捜査に、秩序を与えろ!“ザ・ジャッジ 100”!」部長の選んだカードは彼の切り札。

「伝統にしたがうことこそが秩序だ。そう思わんかね?“旧世紀からの生存者”!」長官の前に現れるのも同じく切り札。部長の読みは外れザ・ジャッジの頭部が撃ち抜かれる。これで彼の手札にあるカードではカンフースターに勝利することはできない。彼は今6を出したことで長官もおそらくカンフースターとの相打ちを狙っていた、つまり手札にそれに勝てるカードがないと想定するだろうと素早く考えた彼は補充したカードを一瞬だけ確認すると長官よりも早く、ゲームはまだまだ終わらないとでも言いたげな佇まいでそのカードをスタンバイする。長官は「私にそんなもの通用するわけがないだろう。」と言うとすぐにカードをスタンバイする。

「違法な捜査を止めてくれ!キープアウト!」と長官がカンフースターを選んでいないことを祈りながら叫ぶ部長の前に現れるのは黄色と黒のキャタピラのついた機械。

「キープアウトとは皮肉だな。立ち入り禁止なのは貴方だ。私の捜査の邪魔をさせるな!“カンフースター リバイブ”」と言う長官の前に人間にしか見えない機械が現れる。それが部長の機械に鋭いけりを一撃入れるとそれは破壊される。勢い余ったカンフースターは、コミカルに転んでしまうが、それだけ。長官の勝利でゲームが終わる。

「お疲れ様、清水君。まあ、1時間ほどでいい。カードも使わずゆっくりしたまえ。」と勝利した長官が言う。これはゲームの勝者の望みも兼ねている。部長は1時間カードを使えずゲームもできない。

「なぜ、こんなことをしているのですか。」と部長は長官に問う。

「もちろん、卑劣な犯罪者を捕まえるために決まっている。」と長官は答える。

「私も、トップオフィサーの本郷氏が怪しいことはわかっています。それでも、捜索を行うに足る証拠を掴んでから捜査を行わなければ、秩序が保たれないではありませんか!」と部長が言う。さらに「我々が法を守らねば、人々は何も信用して生きていけはいけない!」と加える。

「秩序は、」長官がそれに答える。「守られてきた。このような形の捜索など、歴史上何度も行われている。それでも混乱は起きていない。むしろ迅速に事件を解決できる。」と終える。

「それは偶然に過ぎない!問題があってからでは遅いんだ!」と部長も引き下がるが長官は「まあ、君は負けたんだ。証拠は出るさ。待てばいい。」とゆっくりコーヒーを淹れながらそれにこたえる。部長は長官のその態度と事実に食い下がるのをあきらめ、せめてなぜ強引な捜索に踏み切ったのか、根拠を聞くことにする。彼が長官の話を聞き始めて数分もしないうちに上階から大きな音が聞こえ始める。嫌な予感がした二人は会話をやめすぐに上階へ向かう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ