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帰ってきたその後で・・・  作者: ヒラゾウ
33/45

朋子完全崩壊

朋子さん最後の巻きです。いつもありがとうございます。こんな一般受けしない作品にブクマ、評価ありがとうございます。とても励みになります!!

解らない・・・解らないよお・・・お兄ちゃあん・・・


お兄ちゃんの顔が思い出せないいいいい・・・・・何度も何度も書いてるの・・・朋子のお兄ちゃん・・・一緒に寝てくれたお兄ちゃん・・・覚えてない・・・覚えていない・・・・


眼は?鼻は?口は?耳は?顔の形は?・・・・黒くなっていく・・・お兄ちゃんを描こうとすると紙が黒くなっていく。いやあ・・・おいて行かないで・・・朋子を置いて行かないで・・・・


あんなに優しかったじゃない、あんなにお話したじゃない、いっぱい手を繋いだじゃない。

どうして?どうして描けないの?


病院・・・病院であった・・・お兄ちゃん・・・違う・・・お兄ちゃんは朋子に優しいはず・・・だから朋子に顔を見せるななんて言わないはず・・・だからあれはお兄ちゃんじゃないの・・・お兄ちゃんによく似た別な人なの・・・だからお兄ちゃんは別にいるの・・・・


でも解らない・・・別にいるお兄ちゃんが解らない・・・朋子に頑張ったねって言ってくれるお兄ちゃんがいない・・・朋子の頭を撫でてくれるお兄ちゃんがいない・・・


朋子はお兄ちゃんがいないとダメになるの・・・生きていけないの・・・朋子、こんなに苦しいんだよ?傍に来てほしいんだよ?大丈夫って言ってほしいんだよ?朋子の事悪くないって言ってほしいんだよ?


・・・全部お前のしたことだ・・・・


いやああああああああ!!!!!ちがう!!!違う違う違う!!!


・・・崇がこんな目にあったのもお前が原因だ・・・

うそうそうそうそうそうそ!!!違う違う違う違う!!!朋子じゃない朋子じゃない!!


・・・屑が・・・


屑じゃない屑じゃない屑じゃない!!!可愛い妹だよ!!お兄ちゃん!!助けてよお!!


お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・・紙が・・・紙が・・・足りない。お兄ちゃんを思いだすのに・・・何にも足りない・・・


・・・子供のころ、良く家でかくれんぼしてたっけ・・・もしかしたら本当のお兄ちゃんはこの家に隠れて朋子に見つけられるのを待っているのかも・・・えへへへへえ・・・・


何かね、さっきから髪の毛がプチプチ言ってるの・・・気が付いたら私の手が髪の毛を握って頭から抜いてるの・・・だってお兄ちゃんみたいな綺麗な髪だもの、おかげで髪の毛は思いだせたよ。えらい?お兄ちゃん。褒めて、朋子を褒めて・・・えへへへへへ・・・・


きれいな髪の毛を少しづつ自分で抜きながら、どろりとした眼でよだれをたらしながら朋子は言った。


「・・・もーお・・・いーいいかああああいい・・・」


・・・・お返事がなかった。だからもういいんだね・・・探すよ、お兄ちゃん。


朋子はずるずると動き、へらへらと壊れた笑い顔を張りつけ、家の中を這いまわった。全室、天井裏、床下、全部探し回った。


「・・・みーつからなーいい・・・お兄ちゃん隠れるのうまいなあ・・・えへへへへへへ・・・」


蜘蛛の巣と油、煤にまみれ壊れた顔を浮かべながら朋子は家の中を探し回った。


お兄ちゃん・・・もうかくれんぼはいいよう・・・違う遊びをしよう?朋子と一緒に幼稚園いこう?一緒に砂場でお城作ろう?お兄ちゃんがお砂を積んで朋子が形を作ってお兄ちゃんと朋子のお城作ろう?


朋子は幼児が使うプラスチックのシャベルとバケツを物置から取り出した。


お兄ちゃん。用意できたよ・・・また一緒に幼稚園行こう?朋子、先生にお歌褒められたの。聞かせてあげるの、お兄ちゃんに聞いてほしいの。・・・おーてーてーつーないでー♪


幼児のバケツとシャベル、蜘蛛の巣、ボロボロの髪の毛、クレヨンでどろどろに汚れた手、168㎝の類稀な美少女は元の美しさもあり、無残な事になっていた。


お兄ちゃんが出てこない。お兄ちゃんが来ないといけない。朋子はお兄ちゃんの後ろからついていくの。

それが一番幸せなの。お兄ちゃんお兄ちゃん・・・出てきて・・・朋子の前に出てきて・・・待ってるから・・・ずっと待ってるから・・・えへへへへへへええへへへへへへへ・・・・・・♡


のーみーちーをーゆーけーばー♪  みーんなーかーわいいーー♪


静かだね・・・お兄ちゃん頑張りすぎだよ。朋子準備できたよ。まだ寝てるのかな?


起こしに行かなくちゃ、お兄ちゃんの部屋、机とパイプベッドしかない部屋、床いっぱいに髪と紙が散らばっている部屋。朋子の髪の毛の部屋。朋子お兄ちゃん大好きだもん。だからお兄ちゃんも喜んでくれるよね♡お兄ちゃんの絵、頑張って何度も何度も書き直した絵、顔が黒と紫で目が真っ赤で緑色の口になっちゃったけど褒めてくれるよね。


ほら、アルバムの中のお兄ちゃんてばマジックで塗られて真っ黒なんだもの。だから真っ黒なんだよ・・・

朋子頑張って真っ黒にしたんだよ・・・お兄ちゃん・・・真っ黒だよ・・・真っ黒になっちゃったよ・・・

笑ってるのか解らないよう・・・どんな顔なのか解らないよう・・・どうして大きくなってきてからの写真がないの・・・朋子と一緒に居るはずなのにどうしてないの?


・・・ああ・・・・ああああ・・・私?・・・私が?・・・だめええええ!!!・・・思いだしちゃダメ!!!死んじゃう!!!お兄ちゃんが消えちゃう!!!私がしたことを思いだしたら私が消えちゃう!!!


コートりーになーって♪ うーたおーうーたえばー♪


ぶちぶちぶち・・・・髪が抜けていく・・・痛い・・・そんな事どうでもいい・・・お兄ちゃん?お兄ちゃん?朋子のお兄ちゃん???お部屋に居ないよ???おうちに居ないよ???

お兄ちゃん朋子を置いていくはずないもんね・・・どこかで朋子を待ってるんだよね・・・


崇君・・・崇君・・・朋子のために大けがしちゃった崇君・・・お見舞い行かなきゃ・・・お兄ちゃん、お見舞い行かなきゃ・・・お兄ちゃん、朋子彼ができたんだよ。お兄ちゃんと良く似てるんだ。かっこよくて、いっつも朋子を守ってくれるんだ。朋子のせいで怪我しちゃったの。だから一緒にお見舞い行こ?


くーつーガーナールー♪ はーれたーみそ-らにー♪



プルルルルルルルル・・・電話だ・・・・


・・・崇君だ!!話せるようになったのかな!!もしかしてお兄ちゃん先に行っちゃった?ひどいよお兄ちゃん!!


「もしもし?崇君?」


「ああ・・・朋子か?」


「うん、朋子だよ!!お怪我大丈夫?」


「・・・ああ。隆文君のおかげでな。」


「そうなんだ!!やっぱりお兄ちゃん先に行ってたんだね!!さすがお兄ちゃん!!」

やっぱりお兄ちゃんはすごい!!大けがをお兄ちゃんが見て治してあげた。朋子のお兄ちゃんだ。お兄ちゃん大好き!!!


「私もすぐ行くね!!崇君に会いに行くね!!」


「・・・来るな」


「・・・え?」


「なあ・・・朋子・・・聞きたいことがある・・・」


「え?・・・なに?」


「俺を襲った都築義明・・・お前知ってたな・・・お前を殺そうとしてたな・・・」


「・・・それは・・・あの・・・」


「・あいつを中学で虐めぬいていたんだってな・・・さんざん酷い事、常軌を逸したこと、死んでもおかしくない事まで毎日毎日やってたんだってな。豚、汚い。貧乏人。ゴミ。さんざん罵っていたんだってな・・・」


「・・・それは・・・」

何も出てこなかった。全部本当の事だった。何も弁解などしようもなかった。


違うの・・・朋子は・・・朋子は・・・お兄ちゃんが・・・


「・・・その学校で虐めの頭に居たんだってな・・・皆お前のいう事みんなが聞いていたんだってな・・・ほとんどお前が指示、扇動してたんだってな・・・・」


「・・・それは・・・周りが・・・」

いつの間にか朋子に逆らえる奴などいなかった。自然とそうなっていた。


私は・・・お兄ちゃんがそうすれば・・・帰ってくると思って・・・


「義明には何をしてもいいと皆に言っていたそうだな・・・隆文君と似ているから何をしてもいいと言ったそうだな・・・」


「・・・言った・・・でも・・・」


皆の前で兄に似てるから気持ち悪い、死ねと言っていた。まともな状態ではなかった。周りの人間はその朋子に恐怖を抱いた。そのうち朋子かやっているくらいやっていいんだと皆思った。

一度良心のタガが外れた集団は善悪の区別がつかなくなった。だからどんどん過激になって行った。

朋子という劇毒に侵されてしまったのだ。



・・・私は汚いお兄ちゃんが死ねば・・・本当のお兄ちゃんが帰ってくると思って・・・


「義明にそんな事をしていたのなら隆文君にも同じようなことをしていたんだろう・・・隆文君が家を捨てる訳が分かった。家族の事を話さないわけが解った。」


「・・・・私は・・・お兄ちゃんに・・・」


「お兄ちゃんなんて言うな、隆文君はお前の事を一度でも妹と言ったか?言ってないはずだ。隆文君の中ではお前はとっくにいなかった事になってるんだ。今さらそんな事を言うな。」



・・・違う!!違う違う違う!!!朋子のお兄ちゃんはお兄ちゃんだもん!!かっこよくて頼りになっていつも朋子を守ってくれているもん!!だからお兄ちゃんが虐められるはずないもん!!だから・・・だから・・・


「・・・だって!!お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん!!朋子の一番大事なお兄ちゃんだもん!!」


「そのお兄ちゃんに自分が何をしてきたか考えてみろ。義明に言ったように豚と言っただろう。無視しただろう。暴力を振るっただろう。理由もなく、思い付きで、相手の事も考えず、隆文君が我慢してるのを調子に乗って・・・家族じゃないとかも言ってたんだろう。」


「・・・ああ・・あ・・・」



・・・だって本当のお兄ちゃんじゃないもん・・・お兄ちゃんは強くて、かっこよくて朋子の事を一番可愛がってくれるはずだもん・・・だから・・・お兄ちゃんを取った奴だったんだもん・・・


「やっぱりな・・・俺達兄弟は虐め続けられてたからそういうのが解るんだ。隆文君と初めて会った時に解ったんだ、この人は一番大切な者を無くしてしまった人だってな・・・お前だったんだな。」


「・・・ごめん・・・ごめんなさいい・・・」


なんで?なんで私謝ってるの?私お兄ちゃんのために・・・本当のお兄ちゃんのために頑張ってたのに・・・


「・・・大原由香・・・この名前に覚えがあるか?」


「・・え?・・・知らない・・・」


「そうだろうな、お前と同じ中学で同級生だった女の子だ。三年のある時から登校拒否になった。」


「・・・それが・・・どうして・・・私に?」


「レイプされる寸前だった。男に押さえつけられて上半身服を破かれて、男にのしかかられて殴られそうになっていた。俺がギリギリ間に合って最悪の事態は免れた。だが由香の心は壊れてしまった。他校の生徒を殴ったとして俺は高校を退学になった。」


もしかしたら・・・ほんとうに自分が言った事が・・・そんな・・・


「・・・大原由香、俺の世界で一番大事な妹だ・・・」



・・・嘘・・・嘘嘘嘘嘘・・・そんな事・・・嘘だああああああ!!!!


「・・ああ・ああああああ・ああああああああああああああ・・・・」


「襲った奴は朋子が指示したと言っていた、朋子の役に立てるのを喜べといった。出しても洗い流せばいいと言った。男6人で由香を徹底的に壊そうとしたんだ。」



「・・・・お前だったんだな・・・俺が学校をやめたのも、由香が一生治らない心の傷を負ってしまったのも・・・義明があんなに苦しそうに暴れていたのも・・・全部お前のせいだったんだな!!」



言ってないよおお!!!崇の家族を襲えなんていってないよおおお!!!!


「崇!!・・・違うの崇!!・・私は・・私は・・・ただお兄ちゃんが・・・お兄ちゃんが帰ってくると思って・・・・」


「お前なんかが隆文君を兄と呼ぶな!!お前と隆文君は違う!!お前が隆文君の事を言うな!!隆文君が汚れる!!」



いやあ!!!崇!!大好きなの!!!お兄ちゃんと同じくらい大好きなの!!違うの!!!これは違うの!!!話を聞いて!!私は悪くないの!!!全部勘違いなの!!!!崇!!崇!!!


「まってまって・・・崇・・・崇・・・好きなの・・・大好きなの・・・嫌いにならないで・・・何でもします・・・だから・・・」


「うすうす感じてた。お前は俺を通して隆文君を見ていたんだ。俺じゃない・・・お前の理想の男性を見ていたんだ・・・それなのに・・・俺が勘違いした・・・最悪だ・・・」


「違うよ・・・崇・・・私はあなたを本当に・・・」


「もう電話するな・・・隆文君や俺たちの前に顔を見せるな。お前はさんざん俺達や隆文君、義明に不幸を振りまいてきた。お別れだ。これ以上俺たちに関わるな・・・もううんざりだ・・・」


「崇!!!崇!!!違うの!!!話を聞いて!!お願いします!!!違うの!!!本当に大好きなの!!もう崇しかいないの!!助けて!!助けてよお!!崇!!崇!!たか」


「じゃあな」


プツ・・・電話は切れた。


朋子はそのまま気を失った。それは小松原朋子という人間の終わりだった。



・・・


・・・・


眼を覚ますとふらふらと隆文の部屋へ入った。


「わー!!お兄ちゃん、朋子の勝ちだね、朋子のほうが花火長く持ったもん!!」


「お兄ちゃんスイカの種とばすのじょうずだねえ!!朋子うまくなるかなあ?」


「お兄ちゃんかっこいい!でんでん虫掴んだ!!すごーい!!」


「お兄ちゃんスキー上手!!朋子の手離さないでよ。一緒に下まで滑ろう・・」


朋子は大学ノートに書かれていた日記の中に入っていた。もうこの世界にそこしかなかった。

ぶちぶちぶち・・・髪の毛を引きちぎりながら朋子は楽しそうにノートと会話していた。


朋子は隆文の部屋から一切でなくなった。

両親が心配して食事などを用意し、ドアの前に置いたが手を付けた様子もなかった。

部屋の中からは朋子の楽しそうな声が聞え続けていた。

何度もドアを叩いた、鍵がかかって開けられなかった。

声をかけたが笑い声と楽しそうな朋子の声しかしなかった。


三日後、声が聞えなくなった。

業者を呼んで無理やりにドアを開けた。


・・・そこには壁一面クレヨンで塗りつぶされた真っ黒な顔と、黒に塗りつぶられた画用紙が散らばり、もう髪の毛がほとんどなくなって骨と皮のようになり、大学ノートを大事そうに抱え、身体を丸めてぶつぶつと何かをつぶやいている朋子がいた・・・手首には無数の傷跡があった。


大学ノートの最後のページに書かれていた。


朋子が死にました

家族が死にました

僕も死にました


みんな消えました

朋子はまた死にました



「・・・・よーし・・・次は・・・負けないぞ・・・お兄ちゃん・・・まって・・・朋子置いて行かないで・・・」


おんなじことを何も見えない目でつぶやいていた。排泄物も垂れ流し、酷い状態だった。


朋子は窓に檻のついた病院へと入れられた。


朋子は生ける屍のように空中へむかいぶつぶつと話し続けていた。



おてーてーつーないでー♪ のーみーちーをーゆーけーばー♪ 

ミーんなーかーわいいーコートりーになーって♪ 

うーたをうーたーえーば♪  くーつーがーなるー♪ 

はーれたーみそ-らにー♪ くーつーがーなるー♪


身動きもせずぶつぶつと朋子は歌っていた。



今の所朋子さん復活は考えてませんが、本編終了後、皆さんのご意見を受けましたら家族含めてかいてみようとおもいます。よろしくお願いいたします!!

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