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帰ってきたその後で・・・  作者: ヒラゾウ
32/45

義明と竹原・・・一人きりの子供

竹原君、ほぼ最後です。哀れな事になってます。グロ少しあり、ご注意を・・・

ブクマ、評価ありがとうございますいつもお読みくださっている方には感謝しかありません!!!

逃がした。やっと会えたあいつを逃がしてしまった。


・・・凄い男だった。自分の半分もない身体で必死に自分に食らいついてきた。

何故、あんな奴が朋子を守るんだ・・・朋子はそんな奴じゃない。あんな男に愛されていい女じゃない。


あんなに真っ直ぐに自分に向かってきた奴を知らない。俺の身体を見てそれでも立ち向かってきた奴なんていない・・・俺はおかしい、自分で解る。でかすぎる身体、恐ろしい顔、みんなと違う肌・・・


そんな俺にあいつは向かってきた。朋子を守る為に死ぬ気で体を張った。

・・・俺は・・・俺は、茂田さんの敵を取りたかったのに、俺のヒーローを奪った奴にお返しするつもりだったのに・・・それなのに、茂田さんのような男を殴ってしまった。半殺しにしてしまった。


・・・最後、思い切り殴ってしまった・・・

俺に思い切り殴られて無事なわけがない。今までだって本当に殺さないように加減していた。


思い切り殴ったのは粗大ごみだけだった。殺すつもりで殴った。

・・・止められなかった。無理だった。・・・いやな音がした・・・俺はあいつを殴った音を、感触を忘れられないだろう・・・死んでしまったかもしれない。


それでも大事だと思う者のために俺の前に立ちはだかった。

俺にはできなかった事をやった。

俺は間に合わなかった。母の時も・・・茂田さんの時も・・・


終わった後で現れて、そして泣いてただけだ・・・

凄いな・・・カッコいいな・・・あいつ・・・

あんな奴に昔に会えてたらな・・・もっと違ったのかな・・・


一生懸命生きている者の目だった。真っ直ぐに前を向いている眼だった。

俺はあんな目をしたことがあるか?いつも自分より弱い者を殴っていただけじゃないのか?

だとするなら・・・俺も朋子の事は言えないんじゃないのか?


俺は・・・俺はヒーローに憧れていたんだ・・・

漫画のヒーローみたいになりたかったんだ・・・

・・・どうして、・・・どうして・・・俺の目はこんなに濁ってるんだ・・・

・・・どうしてこんなにイライラしてるんだ・・・

・・・何に対してイライラしてるんだ・・・朋子だと思った。

世界だと思った。耐えてきた・・・ずっと我慢してきた。だけど・・・だけど・・・


あいつの目を、俺を真っ直ぐ見る目を見たら・・・俺がとても小さく見えた。

でかい身体の俺が小さく見えた・・・あいつの一生懸命な目に・・・逃げるように・・・あいつを痛めつけた。


あいつは俺に恨みなどなかった。俺もあいつに恨みなどなかった。


・・・そうか・・・あいつは大切だと思う者のために戦う事が出来たんだ。


・・・俺は・・・俺はぶつけていただけだ・・・イライラをぶつけていただけだ・・・羨ましかったんだ・・・あいつの事が・・・ボロボロになっても体を張れるあいつが羨ましかったんだ・・・


俺も茂田さんのために身体を張りたかったんだ・・・

母のために何かしたかったんだ・・・

それができたあいつが・・・羨ましかったんだ・・・


・・・小さいな・・・俺は・・・でかい身体なんて意味ないな・・・

俺に出来たのは・・・ただの暴力だけだったな・・・あいつとは違うな・・・

俺は・・・俺より強いものを知らない・・・だからあいつの気持ちが解らない・・・


どんな感じなんだろうな・・・大切な人のために自分より強い者に向かって行く気持ちって・・・

・・・聞きたいな・・・あいつの話を聞きたい・・・話してみたい・・・

・・・できれば・・・本当にできれば・・・俺の話も聞いてくれないかな・・・


ああ・・・俺にも大切な物があれば・・・何にもないよ・・・茂田さん・・・俺、何にもないよ・・・イライラしてるだけだよ・・・


・・・茂田さん・・・母さん・・・会いたいよ・・・



・・・


・・・・


義明はとぼとぼ街を歩いていた・・・いつもの義明からは想像もつかない程弱々しい姿で歩いた・・・

義明はいつも気を張っていた。周りの全てが敵だと思っていた。

だから義明に誰も近づかなかった。自分を慕ってくれている人はいる。


周りを殴りつけていたら、イライラをぶつけていたら勝手に集まってきた。だから近づけなかった。そいつらを衝動的に殴り殺してしまいそうになった。


世界は敵、朋子を殺す、イライラをぶつける、それだけだった。

・・・崇を見て、触れて、見られて義明は何故だろう・・・

とても自分が可哀そうな存在に見えてしまった。

・・・何にもできないただの身体のでかい子供に見えてしまった。


虚しさが吹き荒れていた。自分に対する虚しさが心の中に吹き荒れていた。


・・・寂しいな・・・俺は・・・それしかなかったのか・・・


朋子に対する殺意はある、それは変わらない。

だが・・・もう一度あの男が朋子を守ったら・・・もう俺はあいつを殴れない・・・

あいつに憧れてしまった・・・憧れは殴れない・・・


・・・朋子に何もできない。朋子一人を呼び出すなんて芸当は自分にはできない。


・・・もう・・・終わったのかな・・・俺は・・・一人でこのまま死んでいくのかな・・・寂しいなあ・・・誰かと・・・話したいな・・・


義明は虚しさを感じながらねぐらへ戻ろうとした。





・・・ガツン!!!!・・・・


いきなり後ろから硬く重い物で殴られた。気が抜けていた義明はまともに衝撃を受けてしまった。


・・・ああ?・・・なん・・・なに???


「・・・ひひひひひ・・・やっと食らわしてやった・・・ざっまあみろ!!!」


朦朧とする目で後ろを見ると・・・いつかの自分を投げようとしていた小さい男がいた。

そいつは両手にバス停の看板を持っていた。

下のコンクリートの基台で思い切り義明の頭を殴りつけたらしい。

狂っていた。そんな物で殴ったら間違いなく死んでしまう。

こいつは躊躇なく振り下ろした。

義明の並外れた身体だからまだ死ななかったが、意識は飛ばされそうになった。


・・・なんで?・・・こいつは・・・・


「せいやあああああ!!!」


男はふらつく義明に組み付き、そのまま背負いをかけ投げ飛ばした。

踏ん張りなど効かなかった。もう立ってられなかったのだ。


ぐちゃり・・・


いやな音がして頭から叩きつけられた。義明はもう動けなかった。世界が回っていた・・・

どくどくと打ったところから血が流れだした。


・・・死ぬのか・・・俺は・・・ここで・・・


「ははははははは!!!!ざまあみろおおおお!!!てめえなんかが俺に勝てるわけないんだよおおおお!!!馬鹿が!!屑が!!!ゴミが!!!お前も隆文もみんなカスだ!!やっぱり俺は強えええ!!」


何か言っている・・・何も聞こえない・・・なんだ・・・こいつは・・・なんでそんなに嬉しそうなんだ?


「この糞が!!糞が!!ゴミが!!ただの身体のでかいだけの腐れゴミが!!ぶっ殺してやる!!おら!!抵抗してみろよおおお!!!何にも言えねえのか!!ああ?この糞野郎!!!」


どご・・ばご・・どす・・ずも・・・めが・・・


そいつは狂ったように何か言いながら俺を蹴り始めた。


つま先で、膝で、足の裏で、顔をサッカーボールのように蹴られた・・・脇腹を思い切り蹴られた・・・膝を思い切り上から踏みつけられた・・・


ああ・・・同じだ・・・中学の時とおんなじだ・・・こいつはあいつらと同じだ・・・いやな音がする・・・俺の身体から・・・俺の心から嫌な音がしている・・・


ぎち・・・ごむ・・・ずぼ・・・がき・・・


「はははははははっははははは!!!!ひひひひはははははははは!!!」


・・・ああ・・・なんて嫌な顔だ・・・まるで・・・俺みたいだ・・・俺もこんな顔をして殴っていたのか・・・


そうか・・・こいつは俺なんだな・・・俺が俺を殺しに来たのか・・・朋子よう・・・俺はお前とおんなじ位嫌な顔をして殴っていたのか・・・そうか・・・


ぐと・・みちゃあ・・・ごちい・・・ぐきょ・・・


・・・ちがうなあ・・・朋子・・・いいなあ・・・お前にはあんな自分を守ってくれた奴がいて・・・俺とはちがうなあ・・・おれにはいないなあ・・・誰もいなくなっちゃったなあ・・・寂しいなあ・・・


「・・・もう終わりか?ふん・・・でかい身体してなさけねえ。ききき・・・じゃあ・・・最後に顔を潰して終りにしてやるよお・・・そのぶっさいくな顔をもっとぶっさいくにしてやる。良かったなあ?顔の傷が解らなくなって・・・ぐっちゃぐっちゃにしてやるからよお・・・」


ごりごり・・ごりごり・・・


バス停を引きずる音がする・・・あれで俺の顔を思い切り潰す気か・・・そうか・・・本当に同じだ・・・


俺を虐めていた奴・・・茂田さんをやった奴・・・母さんを捨てた奴・・・みんなお前に見える・・・そして・・・また俺を殺すのか・・・


「・・・じゃあな!!あの世でお前の家族にでも会ってこい!!どうせまともな生き方なんてしてこなかったんだろ!!俺がお前を救ってやるよ!!お前なんかを生んだ親と間抜けな周りの奴を恨め!!」


・・・ぶちん


「死ねー!!!!!」


がしい!!!


振り下ろしたバス停の支柱を巨大な手が掴んでいた。ありえなかった。

十分以上に勢いの乗った重量のある凶器である。

寝たまま・・・片手で・・・成人男子の膂力を乗せた一撃を片手で止めた・・・


ふーー・・・ふううーーーーー・・・


吐息が聞えた・・・バス停はびくとも動かなかった・・・


強烈な視線が竹原を見ていた・・・義明は瞬きもせず竹原の顔を見ていた。

いくら力を入れても動かなかった・・・


「・・・この・・・離せ!!!」


竹原はそのまま義明を蹴飛ばそうとした。

・・・バス停が動いた。義明が思い切り引っ張ってバス停を振った。握っていた竹原ごと振った。

竹原は振り落とされる虫のようにバス停から手を放し、地べたに転がった。何が起きたのか解らなかった。


がふうううううーーー・・・ぎふうううううう・・・・・


のそりと義明が動き始めた・・・巨大な暴力の塊が動き始めた。


「・・・て・・てめえ・・・え・・・ええあ?・・・」


何事もなかったかのように義明は立っていた。バス停の支柱を両手で持ち、ビキビキ・・・バキンと音をさせながら飴のように折り曲げ始めた・・・


「・・・嘘だろ?・・・なんで動けるんだよ・・・」


竹原はいまだ何が起こっているのか解らないようだった・・・


ガバアア!!!


義明はそのままバス停の基台を地面に打ちつけた。コンクリートの基台は砂糖で出来たように粉々に砕けた。飛沫が竹原の身体を打ち据えた。



「・・・くそがああああ!!!」


竹原はつっかけた。もう一度背負い投げに行った。立った。

だからどうした。ダメージは抜けてないはずだ。抜けててたまるか。

さんざん殴って、蹴ってやったんだ。身体中ボロボロのはずだ。

もうどうやったって勝てるはずだ。


掴んだ!!終わりだ!!!


「あらああああああ!!!」


ドズウウウウウンン!!!


最高の手ごたえだった!!勝った!!吹っ飛んだ!!!見ろ!!!あいつはあんなに飛んでいった!!!


・・・あれ?あいつ・・・動いてない・・・同じ場所に・・・


バゴオ!!


あだああああああああああああ!!!!なにかが・・・何かが俺の背中に・・・でっかい物が・・・

いき・・・息・・・息が・・・吸わない・・と・・・口を開けて・・・吸わない・・


ぶっ・・・あれ・・・なんで口から変な真っ赤な・・・なんだ・・・これ?・・・え?


ズキン!!バキ・・ポキ・・・


なんで・・・なんで?なんでなんでなんで?なんで俺の胸がへこんでるのおおお????バキバキ言ってる・・・バキバキいってるよおおお・・・いだああああああああいいいいい!!!!


・・・あああ・・・歩いてくる・・・ちょっと待って・・・動けないんだって・・・ちが・・血が止まらないんだって・・・痛いんだって・・・


がし・・・


頭!!あたまああああ!!!いたいいたいいたいい!!なんで片手で持ち上げられるの?なんでそんなに簡単に・・・・潰れる・・・潰れるから・・・やめて・・やめて・・・


何する・・・どうするんだよ・・・俺を壁に向けて・・・え?・・・まさか・・・まさか、嘘だろ?ごめんごめんごめんなさい!!謝ります!!!だからやめてやめて!!!それだけはやめて!!やだやだやだやだ!!!死ぬ死ぬ死ぬ・・・死んじゃうからやめてえええええええええええ!!!




ぐちょおおおお・・・・びくんびくん・・・ぶしゅ・・・どろり・・・・




思い切り竹原は顔をコンクリートの壁に叩きつけられた・・・リンゴが潰れるような音がした。


身体はバタバタと踊るように動いた。

もうコンクリートと一体化したかのような顔面からは果汁のような血液が勢いよく噴出した。


義明はそのまま片手で竹原を持ち上げて手を放し思い切り回し蹴りで吹き飛ばした。


バキイゴキゴキゴキ・・・・・どすん・・・げぼ・・・ごぼ・・・


面白いくらいにかつて竹原だった物は吹き飛んだ・・・

竹原の腕もあばらも砕け折れてタコのようになって吹っ飛んだ。

顔面だった所は平面になっていた。真っ赤でどうなっているのかは詳しく解らなかった。

そこからごぼごぼとまだ血が噴き出していた・・・



「・・・義明さん・・・これは・・・」


いつの間にか添島が来ていた。どうやら義明の様子を見にきたらしい。

身体中ボロボロの義明とかろうじて人間だったと解るような物が転がっていた。


「義明さん、あの・・・」


「来るなあああああああ!!!!!」


義明は絶叫した。ほとんど泣き声に近かった。


「・・・来ないでくれ・・・お願いだから・・・俺に近づかないでくれ・・・自分でももう何が何だかわからねえ・・・何するかわからねえ・・・」


最後に添島に向かって言った。


「・・・ごめんな・・・」


義明は顔をぐちゃぐちゃにしながら泣いていた。


・・・解らない・・・もう解らないよ・・・母さん・・・茂田さん・・・もう俺・・・解らないよお・・・


そのまま義明はねぐらへと入って行った・・・


添島はそんな義明に声をかけることができなかった。

竹原だった物を担いで・・・その場を去った。


暗い、狭い部屋の中、義明は一人っきりで泣き続けた。


ぐしゅぐしゅと鼻水を啜る音だけが響いていた。



さてさて・・・追い込みましたねえ・・・二人の邂逅が今から楽しみです。朋子?・・・いましたねそんな奴

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