第2騎士団 2
宜しくお願いいたします。
三人は簡単に絵里を捕まえられると思っていた。絵里の城内逃走劇は、城内警備担当の第1騎士団が担当だった為、城下町警備が主な第2騎士団の皆は預かり知らぬところだったのだ。ヒースは絵里が追い詰められた庭園付近にいて、遠くから絵里が逃げてきているのを見ていた為、知っていただけだ。
「さあ絵里、好きなようにお逃げ、10数えたら追いかけるよ。」
シャベールは余裕の態度だ。数分後には何時もの色男ぶり等などなりふりかまってられなくなるとは気付かずに。
絵里の鬼ごっこが始まった。
小柄な美少女がストレートの黒髪をなびかせて、走る、転ぶ、跳び跳ねる、飛び越える、宙返る、等々逃げる逃げる。
「前の赤毛の人、太股踏ん張って! よし、いくよ」
障害物となっている騎士の一人の丁度太股辺りを蹴り上げ宙返り、後ろから追ってきたシャベールを飛び越え背後にまわる。シャベールを真ん中に左右に別れて挟み撃ちにしようとしていたが呆気なく後方に逃げられる。
わりと足の速いカイに捕まりそうになり、勢いよく手を伸ばされた時にわざと突き飛ばされたように後ろに倒れコロコロ転がる。えっ、突き飛ばしたっけと一瞬躊躇してしまったカイをほくそ笑み、素早く立ち上がり逃げる。
前方にはシャベール、後方にはカイ、右側からはバフマン。左に折れて逃げるも、左は城壁、その手前には三人組の騎士達。
「右の青髪の人、左手を挙げてしっかり力を入れてて!」
バフマンがやっと捕まえられると思ったところで、絵里は騎士の左手に勢いよく飛び付き、その腕を回転軸として勢いよく城壁まで飛ぶ。そのまま重力に逆らえられなくなるまで城壁を横伝いに走る。まるで忍者。
絵里のカンガエラレナイ様な動きに皆、釘付けだ。
そんな絵里の快進撃もヒースの終わりを告げる掛け声で終了となった。
かく汗も気持ちがいい。
「やっぱり凄い。何でそんなに動けるんだ。壁伝いに走るなんて考え付かないし、空中で身体を回転するにはどうするんだ?始まる前の手を着いて後ろに跳び跳ねる技はなんだ?絵里の身軽さには驚かされる。」
「ハアハア、え~り~、どうして君は予想外の行動ばかり起こすんだ。おとなしく僕に捕まってくれればいいのに」
「絵里様、凄いです。」
「そうだな、こんな小さな子など、簡単に捕まえられると思っていたがな」
それぞれ口々に言いながら絵里の側に近寄ってくる。他の騎士達も凄い凄いと同じく集まってくるが、皆、絵里に近づくにつれ、目付きが称賛のものから、ふと欲をはらんだ目に変わってくる。
あっヤバイかもと思った時には、一足早く絵里の元にきたヒースに優しく抱き締められていた。
焦る絵里。激しく身体を動かし体温が上昇している今の状態では、絵里の体臭の濃度が増し、ゴキブリホイホイならぬ、[男性ホイホイ]状態だ。 日本での同じ職場の人達は絵里の事情を良く理解してくれていて、絵里の体臭がしてきそうな時は、きちんと理性を働かせ適度な距離を取ってくれたり、一足早く絵里だけ別室に連れていってくれたりと色々配慮してくれていたが、こちらの世界では、まだ絵里の体質を理解してもらってはいない。
「絵里、このままで… あ~、なんか幸せを感じる。」
「ちょっとヒース、落ち着いて、取り合えずこの腕退けて」
優しい抱擁に簡単に逃れられると思い、ヒースの胸に腕を当て必死に逃れようとするも、騎士団長の力は侮れなかった。びくともしない。 するとシャベールがヒースを引き剥がした。流石副団長、偉いぞシャベール!と思ったところで今度はシャベールに抱き上げられ、鎖骨辺りに顔を埋められ、あろうことかチクリとした痛みが。
「なにすんのさ!!シャベっ」
シャベールと言い終わる前にバフマンに両脇に手を入れられ上へ、高い高い状態、後、お腹に顔を埋められる。
「この子は俺が預かる。」
「ちょっと下ろしてえな!、お腹の所でしゃべらんといて!」
「そうだ、絵里を返せ」 ヒースが詰め寄る。
「絵里は僕のものだよ」 我が物顔でシャベールが言う。
その間にも他の騎士達が絵里に手を伸ばしてくる。
「ちょっと、皆さん落ち着いて下さい!!!」
騎士団の中では、一番小柄で年若い、カイの一言がが響き渡る。
「そうですよ、皆さんどうしたんですか」
後、5,6人程の人達も次々と困惑の声をあげる。そう、この絵里の体質の影響は主に20歳以降の男性に強く表れる。
(あ~、良かった。10代の子達もいたんだ。でも、どうやったらこの状態から逃れられるかなぁ~。カイ救世主よ、何とかしてえな)
と絵里は助けを求めるべく、目に力を込めてカイを見つめた。
お読み頂きありがとうございます。
絵里の逃走劇は有り得ないような行動ですが、ご都合主義の物語とお許し下さい。