ローガルド要塞戦線(5)
勇者達の前に現れた御使いと、その腹心の一人である業魔将。
一見すると可愛らしい緋色髪の女性と、紫髪の女性だが、その背中からは悪魔の象徴たる黒き羽がはためき、御使いの頭からはねじれた角がでている。
はたして自分は打ち倒すことができるか、時代時代で姿形に、能力さえも違う御使い。
諸説あるが、闇の神の感情より発露した存在ともいわれる存在であり、この世界の超越者たる存在。悪の権化…
どの御使いにも共通するのが、光の神とその種族達に対する激しい怒りと憎悪であり、産みの親である闇の神の封印解放を悲願としている。
勇者は手に持つ聖剣を握り直し、改めて御使いであるリーゼにその目的の真意を問う。
「御使いリーゼ、首を落とす前に今一度聞く。お前の目的はなんだ?何故そこまで世界に憎悪を振りまくのか、それに宿願とはなんだ?」
「やれやれね、質問攻めなんて。私の目的は、私達魔族の理想郷の建設よ。それに天使達の統制された世界の打破よ、自由な意思のない管理された世界なんて、それは死んだ世界と同義よね?あんたは何がしたいの勇者?死ぬ前に教えてくれるかしら…」
「誰もが幸福を享受できる世界の礎をつくることだ!人は誰しも幸せを求めている、平和な世界を望んでいる!天使様方がいればより完成した世界となる、戯言をぬかすな、悪魔が」
「幸福を享受ね、そこに魔族がいないなら、そんな世界は願い下げね。なかなか面白い考えだけど、やはり貴方と私とでは根本が違うのね…」
「そうか、そうかもしれないな…」
二人は互いの意見を聞き終わると、剣呑な殺気をだし、得物を取り出す。
勇者は光輝く聖剣を、御使いのリーゼは青白い焔の槍を、一歩一歩歩み寄りながら術式を放ってゆく。
勇者は煌めく光の球体を乱舞させ、自身の周囲に無数に浮かべては、次々放っていく。
リーゼもまた、自身に青白い焔を纏いながら、迫り来る勇者の光球を爆発させ、霧散させていく。
そしてお互いの得物の間合いに近づくと、目にも留まらぬ速さで、接近戦を始める。リーチ差を物ともせず、より輝きを増す聖剣に対し、リーゼの焔の槍はより暗き輝きを放つ魔槍であった。
互いに全力であり、接近戦の合間にも勇者は光の弓矢を、リーゼは白い焔の息吹を浴びせていた。
「勇者、今加勢に…!」
「マーク、共に御使いをっ⁉︎」
音を立てながら辺りの景色が崩れ、付近の景色が色を無くしてゆく。白黒の現実離れした空間へと変貌しながら…
勇者の援護をしようとしていた、聖拳ソロと聖灯リューティス。
だがそれを結界により、腹心であるエンリエッサが阻止する。
それは別の場所にいた聖人の、聖鎧ヤクトバーグ、聖槍ネラフィムも同様であり、それぞれにイシュガルとバンネッタが相対していた。
「駄目だよそれは、リーゼ様の邪魔をしてはね。その代わり私が相手になってあげるよ、この【深淵】のエンリエッサが。二人同時でも、一対一でも選ばせてあげるわ」
「舐めなるなよ業魔将、勇者の側で戦い続けてきたんだ!やるぞリュー!」
「最善を尽くしますソロ!」
「あら〜、これはこれは手強そうだ、実に手強そう。聞いた話によると、人は誰かの為に普段以上の力を発揮するそうだね?限界を超えてみせてよ聖人、そうしないと私の屍人形にしてしまうよ」
クスクスとどこまでも愉快そうに嗤う、業魔将エンリエッサの姿がそこにはあった。




