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化物達の理想郷  作者: 同田貫
監視者
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夜天の間にて

ローガルド要塞でイシュガル直々のお叱りを受けて、レジーナは空中部隊の運用を転換した。

攻撃目標を集積所から、敵国の都市や街道を進む荷馬車隊に目標を変更した。目標を限定することで、偵察飛行と並行して攻撃する密度を上げた。攻撃部隊の人数を絞り、ローテーションで入れ替わり立ち代りでの爆撃を敢行した。


レジーナや、ハーピーの三姉妹達の徹底した一撃離脱戦法に加え、主要街道の地中より遊撃戦を仕掛けるムスト達に、連合軍の輜重部隊は及び腰となっていた。苦肉の策として、伝令の使う早馬に少量の物資を積載し、偽装させピストン輸送させるなど、連合軍側も魔族側も躍起となっていた。


だが会戦以降、対峙し続ける両軍に確実に倦怠気分が蔓延し、現場指揮官は士気の向上に知恵をしぼっていた。





ローガルド要塞より北に位置する魔都イールガル、そこでは陰の気が高まる満月の夜に、夜天の間に安置された大鏡の前でかしづく御使いのリーゼと、壁際に控える業魔将のバンネッタがいた。

毎月欠かさずに行っている、闇の神との交信の儀を執りおこなうため、厳かな雰囲気に支配されていた。居並ぶ魔族の神官達も緊張してその時を待つ、そして空間一帯を濃密な魔力が満ち満ちた時、闇の神の気配が大鏡から漏れ出した。


「ふむ久しいな我が娘リーゼよ、さっそくだが近況を報告せよ。なかなかに愉快な状況になってきたと感じている。今代の勇者に天使共が顔をだしたそうじゃないか、こやつらを完全に排除したならば、我らが悲願にまた一歩近づくと考えている。この大陸に呪詛をばら撒き、我らの生態圏の確立の方策を聞かせてもらおうかリーゼよ…」


「そう焦らないで下さい我が父、事態は着実に進んでおります。我らの考えに同調する国家を取り込みました。さらに周辺諸国にも働きかけ、帝国の国力を削ぐ考えでおります。来たるべき聖戦に向け、現在は元皇国に跋扈する、帝国主導の連合軍の駆逐に全力を尽くしております。会戦では奴らに先手を取られましたが、ここからは我らの行動の結果にて挽回していきたいと考えています我が父」


「左様であるかリーゼよ、お前達には期待しているぞ。我が直接干渉できればよいのだが、歯痒い事よ…今はこうしてお前達を見守ることしかできん、リーゼよ戦力を結集させよ、光の神の信徒共との聖戦にはまだまだ力不足だ。時を待ち、機会を窺うのだ」

「はい我が父、もったいなきお言葉を賜り光栄にございます!私もさらに研鑽に励み、原初の力を使いこなし我らが宿願を果たしてみせます」


「リーゼよ、原初の力はまさに一騎当千の力よ。活かすも殺すもお前次第だ、能力が成長すればさらなる技能も開花することだろう。背中の紋様が全身に広がる頃には、大天使にもひけをとらない能力者となろう。我が娘よ、困難に打ち勝ちこの聖戦の勝利者となれ、雌伏の時を乗り越え健やかでな…」

「はっ、精進し勝利を貴方様に!」



その言葉を最後に、大鏡からの魔力の波動は収まり、くすんだ鏡へと戻っていた。周りの神官達が、大鏡に丁寧に布をかけ辺りを清めてから、最敬礼をした後に退出していく。

夜天の間には、リーゼとバンネッタだけが残っていた。今やリーゼの能力発現からの後遺症は癒え、刺すような痛みは消えていた。

しかし、リーゼの後遺症を心配したエンリエッサが派遣した治癒術師が、頑なにイールガルからリーゼを出そうてはしなかった。

ただリーゼは前線の動向が気になり、どうにか抜け出そうと考えていた。またバンネッタも、長い謹慎生活に嫌気がさしてきており、リーゼとバンネッタの利害が一致した。


そこで白羽の矢がたったのは、またしても慣れ親しんだあの女性メイドであった。前回はイシュガルに簡単に看破されたが、今回は緋色のカツラにツノ、リーゼと揃いの服を用意する徹底ぶりだった。


「貴方は私の良き理解者だと考えている。私の部屋で私になりきるのよ!今の貴方はメイドではなく、リーゼなの。いい理解した?半日時間を稼ぐのよ、あの治癒術師達をどうにか釘付けにするのよ〜。では、いってくるねー」


「うむうむ、見事なリーゼ様振りだ!これは正しくリーゼ様の姿形そのものだ。お役目頼んだぞ、そなたの忠義は俺が美談として語り継がせようじゃないか、ではな護衛として付き添わねば!」


「また私なんですか、リーゼ様?」



言うやいなや、そそくさと転移魔法陣で転移する二人。案の定エンリエッサの部下である治癒術師に偽物と看破され、ホクホク顔で前線であるローガルド要塞で着いた時には、イシュガルの手厚いお叱りが待っていた。

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