23.
フシミ「あなたなら司法取引でもできたはず。それなのにしなかった。私を見逃さなかったあなたが今更何を……。私に何か求めるのは虫がいいのでは?」
ニシオ「まぁ、そうかもな。悪ぃ、やっぱ話はなかったことにしてくれや。」
フシミ「分かりました。」
ニシオ「最後に一つだけいいか?」
フシミ「なんでしょう。」
ニシオ「ナゴとメイを殺したアイツをどう思ってる?」
フシミ「ナゴ夫妻の死は哀しい出来事でしたが、それを引き起こしたあの方への怒りは募らせていませんから、何とも思っていませんよ。これ以上聞かれても、返事に困ります。」
ニシオ「そうか……。」
フシミはニシオと別れた。
そして、フシミはスマホを手に取った。
フシミ「もしもし。フシミです。裁判の結果、執行猶予付きの判決を受けましてね。約二年はあなたの力添えできなくなりました。……では——。」
フシミはスマホを耳から離した。
そのまま流れるようにニュースを見ていた。タイムリーな記事を開く。
フシミ「これは悲惨な事故ですね。人はいつ死ぬか分からない。その不安から逃れる方法は——機械化しかない。ですが、その機械化すら法で否定された。」
そう言って、そのニュースを閉じた。
フシミ「人々にとって、不安から逃れる術はもう……ありませんね。残念ながら。」
◆
フシミは人の通りが少ない道を進んでいた。
フシミ(これから私は日陰者。もともと陽を嫌う私にとっては日常ですが……。)
そんな彼の目の前に一人の人間が立ち塞がる。
そんな彼女がナイフを取り出した。
スイジュ「悪いけど、逃がさないよ。」
男の人の声にも聞こえるほど、掠れた低い声が広がってはすぐ消える。
フシミ「一体、誰でしょう? 私を憎むものですか? それとも——」
スイジュ「うん。アンタはすごく憎いよ。」
フシミ「そうですか。私に復讐をしにきたんですね……。」
スイジュ「いや、復讐は関係ない。言ってしまえば、貴様は敵じゃない。が、仲間でもない。言ってしまえば味方かな。」
スイジュは左腕を前に出した。
そして、自分の腕に向かってナイフを下ろす。
スイジュ「言っとくけど、ワシ、殺し屋だから。それも、界隈で最強と名高い奴の愛弟子だ。」
——。
フシミは殺し屋から逃げ切り、病院へと逃げ込んでいた。
フシミ「外傷はなし、ですか。それはまいりましたね。」
フシミ(外傷があれば病院で措置ができる。しかし、傷がないとなれば当然回復措置はできない。それなのに、ダメージはしっかりと受けている……。)
フシミ「アサヒくんに匹敵する逸材……というわけですね。」
——。
スイジュ「逃げられた……。やっぱり、証拠を残さずに殺すって難しすぎる。」
スイジュはビルの屋上で夕日が落ちていくのをぼんやりと眺めていた。
スイジュ「はぁ……。ったく。間に合わなかった——。」
◆
N大都市に三店舗存在するアイス専門店。
そこでサカエたちはアイスを注文していた。
サカエ「やっぱり塩ちんすこうが一番です。やっぱり王道ですからね。」
ナルミ「それね! それな!」
ミズキ「わたし、ウベ!」
フジ「私は大人だし、ちょっと贅沢した塩ミルクのサンデーで……。下のアイスはショコラクッキースワールで。」
アサヒ「俺、クレープにしたわ。」
アカイ「うーん。迷う……。」
ミズキ「ウベ、美味しいよ!」
アカイ「じゃあ、俺もそれ頼も。」
中学生「では、ネオポリタンで……。」
七人はデザートを堪能した。
そして、駅のホームへと来た。
そのままN市へと向かう電車へと乗り込む。
ガタンゴトンと揺れながら進む電車。
サカエは椅子に座り、ゆっくりと目を閉じたり開いたりしていた。
サカエ(ようやく長い裁判も終わって、どっと疲れが……。眠くなってきた。)
ついに瞼を閉じた。
……。
……。
凄まじい音が鳴り響いた。
サカエ(ここは……どこ?)
周りを見渡すと、そこは赤茶色の地面や崖。空や地平線の先は真っ暗。まるでそこはこの世のそれではなかった。
サカエの近くにいるのは見ず知らずの八人。
全員が肩らへんに変な丸い機械が浮きながらついて回っていた。
さらに一人、そこに人が現れた。
眼鏡をかけた痩せこけた男の人だった。首にはカメラをぶらさげている。
???「初めまして。突然のことで、何が何だか分からないと思います……。とりあえず、言いますね。」
サカエたちはその男の方を見た。
???「ここはぼくの力で繋がった不思議な世界。こんなこと言われても信じないと思うんですけど、実はこの不思議なカードを使うとそんなことができちゃうんです。」
サカエ(異能力カードの力ね……。それなら説明はつく。後はここがどこなのか、なぜここにいるのか……。)
???「ここは言うなれば『地獄』です。さしずめ、ぼくは『蜘蛛』と言ったところでしょうか。」
蜘蛛と名乗る男が浮いている丸い機械を召喚した。
蜘蛛男?「これは地獄に存在する『番人』。そこに書かれている数字が『0』になると、喰われて死にます。」
肩ら辺についてる番人の口元に三桁の数字が書かれていた。八人それぞれ数字が違っていた。
蜘蛛男?「えと、ここにいるだけで数字は減ります。そして、リスポーンしたり傷ついたりする度に、さらに数字が減ります。」
サカエ(リスポーン?)
蜘蛛男?「ここでは番人に喰われる方法以外では死ぬことはありません。死ぬ代わりに、近くの一定区域にリスポーンします。」
サカエ(死なないからって調子に乗ってると、番人に喰われて死んでしまうってことですね……。)
蜘蛛男?「ここから脱出する方法は一つです。三つの力を集めることです。それぞれ特別な……『テント』、『服』、『食べ物』となります。あ、あと、人数制限はないので争わなくていいです。」
また、地獄の別の場所ではアサヒやナルミ、ミズキたちが全く同じ内容を聞いていた。
蜘蛛男?「では、この地獄のデスゲームを生き抜いてください。じゃあ、ぼくはこの辺で……。」
その男が視界から消滅した。
サカエ「地獄のデスゲーム……。何が何だか分かりませんが、ひとまず生き残らないといけないということだけ、分かりました。」
地獄編——開幕。
第一章おわったのでここで一旦終わりにします。




