第9話:すれ違い
ユグドとパーティ(タッグ)を組むことになって数日。
俺たちは、正式にパーティ登録をするために冒険者ギルドに訪れていた。
目指すは、俺の女(妄想)である受付嬢アイリスの元だ。
「こんにちは、ザコンさん。あれから体調は……問題なさそうですね、今日は依頼の受付でしょうか」
カウンターの向こう側。
いつものようにクールで淡々とした口調で、事務的に俺に対応する。
相変わらず隙のない氷の乙女だ。
「ようアイリス、この間は助かったよ。今日はパーティの登録を頼みたくてな。紹介するぜ、俺に惹かれてやってきた元パーティメンバーのユグドだ」
ほんの一瞬、アイリスの綺麗な眉がピクリと動く。
そしてその視線が、俺の後ろをカルガモのようについてくるユグドへと向いた。
「……そう、ですか。失礼ですが、何かの間違えでは」
アイリスの声が、普段の三倍は冷たい。
それになんだか……ギルド内の温度が下がったような。
「いやいや、間違いないぜ。これも俺のカリスマ性のなせる技さ。こいつ、俺に惚れ込みすぎて、報酬もいらないとまで言い出してな。全く、俺も罪な男だぜ」
「……へー、そうなんですか」
アイリスの凍てつくような眼差しが、俺ごとユグドを射抜く。
「ユグドさん。……今の話は本当ですか」
「……わたしにはザコンが必要」
「」
あれ、アイリスが固まった。
書類を持ったまま、見事な静止っぷりだ。
「おーい、アイリス。大丈夫か?」
呼びかけると、アイリスはハッと我に返ったように数回瞬きをして、再度ユグドに確認する。
「で、ですが、ユグドさんはあの有名な『なるおたち』のメンバーですよね。……なぜ、ザコンさんが必要なんですか?」
「……ザコンといると安心する」
「」
また固まった。
どうしたアイリス。完全に氷の彫像みたくなっているぞ。
「どうした、アイリス。調子が悪いのか?」
あまりのフリーズぶりに心配になり、俺はカウンターに身を乗り出して、熱があるかもしれないと手をアイリスの額に当てる。
「……っ! だ、大丈夫です!」
その手を振り払うように、アイリスが再起動した。
振り払われた手のひらに、彼女の額の心地よい熱が残る。なんだか頬もうっすら赤い気がする。
「なんだよ、照れてるのか? ふっ、それとも俺が新しい女を連れてきたことに嫉妬しているのか。隠しきれていないぜ、寂しさが」
「し、嫉妬なんて……っ! 本当に勘違いもいいところです。あなたのことなんて、なんとも……、なんとも思ってませんから」
強がってはいるが、俺にはわかる。
間違いない。アイリスは今、嫉妬の炎でメラメラと燃えている。
ならば消化するのが、男である俺の役目だな。
「本当に可愛い奴め。安心しろ、ユグドはただの仲間だ。俺の心はお前だけのものさ」
「なっ! かわ……。~~っ! はぁ、……もういいです」
アイリスは大きくため息をつき、無理やりいつもの調子を取り戻したようで、そっけない態度で俺をあしらう。
「新規パーティの件、承りました。ですがユグドさん、まずは正式に『なるおたち』からパーティを抜ける手続きを完了していただかないと――」
「「その話、ちょっと待った!!」」
バァン!! と、ギルドの扉が勢いよく開かれる。
そこへなだれ込んできたのは、見覚えのある面々――そう、俺を理不尽に追放した、元パーティ『なるおたち』のメンバーだった。
「ユグド! 探したぞ!」
リーダーのなるおを先頭に『なるおたち』のメンバーがズカズカと大股で距離を詰めてくる。
俺は庇うようにユグドを自分の後ろへ隠すと、不敵に笑みを浮かべた。
「久しぶりだな、なるお」
さて、最終決戦の予感だな。
ざまぁの予感!?
次回、最終回! 本日、18:20投稿!
※この作品はAIちゃんとの共同執筆となります。




