第10話:俺たちのざまぁはこれからだ!
「久しぶりだな、なるお」
「ふん! ザコンか、忌々しい。どうやってユグドを連れ出した。どうせお前が脅したか何かしたんだろう!」
なるおが怒鳴る。まったく変わってないな、短気で怒りっぽい奴だ。
「そうよ! 私たちのパーティから抜けて、あんなみたいな無能といるなんて、おかしいわ! この変態脅迫野郎! 死ね!」
リリア、こいつも変わってない。相変わらず性格は最悪のようだ。いくらなんでも決めつけで罵倒しすぎだ。
「む。ユグド、君がいないと、正直困る。……ザコン、元気そうで安心した」
おう、ボンズ。お前も元気そうで安心したぜ。ところで……盾の件は、もう許してくれたかな?
「ユグドさん、我々にはあなたの支援が必要ですよ。我々に、なにか不満があるのですか?」
……こいつ誰? ああ、俺の代わりに入った神官か。
「ユグド! 頼む、戻ってきてくれ!」
「ね、また一緒に冒険しましょう!」
「む。頼む」
「ユクドさん、お願いします!」
『なるおたち』の面々が、口々に俺の背中に隠れているユグドに呼びかける。
「ちょっと、みなさんギルドではお静かに」
受付嬢のアイリスが落ち着かせようとするが、その声も届いていないようだ。
「……」
俺はちらりと後ろを確認すると、ユグドは俯いて体を震わせていた。
「よせ! お前ら、こんなに怯えて震えているじゃないか! こいつは俺を選んだんだ。無理やり連れ戻そうなんて、そんな可哀想なことは止めろ!」
俺は、そう毅然と言い放つと、ユグドを安心させるため言葉を続ける。
「ユグド、心配するな。お前は仲間だ。この一流冒険者たる俺が守ってやるからな」
「……わかった、戻る」
「え?」
え?
なにいってんだ、こいつ。
もしかして俺、大見得切って守ってやるって言ったのに、速攻で裏切られた?
「アハハ! ざまぁないわね! やっぱり無能より、わたしたちと一緒がいいわよね~」
リリアの笑い声が憎たらしい。ユグド、一体どういうつもり――。
「……ただし、ザコンも一緒」
なんだと!?
「「「えぇ!?」」」
ユグドの「俺も一緒」発言に元メンバーたちがざわつく。
まさか、ユグド最初からこのために……?
皆が困惑する中、ユグドはさらに続ける。
「……ザコンが戻らないなら、戻らない」
「なっ!どうしちゃったのユグド!こんなやついらないでしょ!」
リリアがユグドの肩を掴み揺らす。
「……嘘。みんな、寂しがってた。それを誤魔化すために、がむしゃらに狩りや依頼に没頭してただけ」
「っ……!!」
ユグドの指摘に、なるおたちがハッと目を見開いた。
「そ、そんな訳ないでしょ!ザコンなんか……」
「……リリア、この前魔物を倒した後『どう、このリリア様の火力!ザコン、あんたじゃ一生届かない力よ!』ってドヤ顔で言ってた。……ザコンはいないのに。あのあと間違えたとか言って誤魔化してたけど、寂しそうだった」
「ななななな!なんのことかしらっ!全然、そんなことありませんけどっ!」
ユグドの暴露に、リリアが顔を真っ赤にして否定する。まさかこいつ、ツンデレなのか?
「む。たしかに、ザコンいなくなってから、リリア少し元気ない。俺も、守る対象いないと張り合いがないと思ってた」
ボンズ。……お前、そんな風に思ってくれてたのか。壊した盾の件は、悪かったな。
「……なるおもそうでしょう」
ユグドが、じっとなるおを見つめる。
「……。あぁ、たしかに、そうかもな。なんだかんだザコンのあほさ加減には救われていたんだなって、内心思ってたよ。……それにしてもユグド、そんなに喋れたんだな」
!?
なるお……。
元メンバーたちの本音に、思わず胸を打たれる。
「あ、私は、えーと、はじめまして」
あ、はじめまして。割と普通に有能な神官さん。この人とは思い出がないだけに、お互い気まずいな……。
それにしても。
「たく、仕方のないやつらだ」
俺を追放したくせに、そんなに俺のことが恋しかったのか。不器用な奴らめ。
「……今更戻って来いと言われても、もう遅い! ……と言いたいところだが、やはり『なるおたち』は、この俺がいないと纏まらないよな」
俺は手を差し伸べる。
「ふんっ!別にそんなことないわよ!……でも、まぁ、弾除けくらいには使ってあげる。でも勘違いしないでよね!ただの弾除けなんだから!」
「む。ザコン、足引っ張るけど、大切な仲間」
「……ザコンが必要」
「ちょっと状況についていけてませんが…、えーと、よろしくお願いします」
各々がその想いを口に、その手に握手を交わしていく。
「すまなかった、ザコン。やっぱり俺たちにはお前が必要みたいだ」
「ふっ。気付けただけでも、成長さ」
「はっ、追放された側の言うセリフか? 改めてよろしくな」
そして、最後になるおが俺の手をとり、俺たちはしっかりと握手する。
雨降って地固まるとはまさにこのことだな。この一流冒険者ザコン様が戻ったからには、『なるおたち』の未来は明るいぜ!
「よし! 早速だが復帰後のギャラ交渉といこうじゃないか」
さて復帰後、初の大仕事だ。
「あぁ? ギャラ交渉?」
なるおが眉をひそめる。
「当然だろう。この俺が戻ってやるんだ。必要と言われ、仕方なくな。というわけで……今後の依頼の報酬、俺の取り分は多めで! ざっと全体の五割といったところか」
ピキッ。
「……は? 今、なんて言ったの? この役立たず」
「リリア、聞こえなかったのか? 俺の取り分は多め、五割だ。残りの五割をお前ら四人で……いや神官くんもいれて五人か。ちょうど割り切れていいな。俺が裏リーダーとしてこれからは引っ張っていってやるんだから、これくらい当然の報酬――」
ピキピキピキッ!!!
「ふざけんじゃないわよぉぉぉ! まじにぶっ殺すわよ!!」
「調子に乗るなよザコン!! その鼻を今すぐへし折ってやろうか!?」
激昂し襲い来る、蹴りの連打と激しい炎の魔法。
「のわああああ!!! だからリリア! 攻撃魔法はやめろ!! なるおも落ち着――ヘブぅ!!!」
リリアとなるおの連携攻撃をモロに受け、俺はギルドの床を転げる。
「「やっぱり、お前は追放だー!!」」
そんな俺たちのやり取りを、他のメンバー達は止めることもせずに眺めていた。
「……やはりザコンは必要」
「む。賑やか」
「か、回復はお任せくださいっ!」
完全なる自業自得。
せっかく元サヤに戻れたのに、調子に乗りすぎてしまった。
これほどの『ざまぁ』な自爆はないだろう。
そんな俺の耳に、カウンターの向こう側から鈴の鳴るような笑い声が届く。
「ああもう、ギルドであまり騒がないで……ふふっ」
「!?」
「! 氷の受付嬢が……笑った?」
まるで雪解けしたかのような、その笑顔に俺のハートが撃ち抜かれる。
……そうか。
そうだったのか!
常に勝ち続けてきた俺が見せる、珍しい敗北(逆ざまぁ)。
それは完璧すぎる男の見せる弱い一面。
それが彼女の母性本能をくすぐり、俺への愛おしさを爆発させたに違いない!
これは、負けることにより得た勝利! まさに負けるが勝ちだ!
つまり、俺は負けても勝っても、どちらにせよ勝っている! 無敵の勝利の方程式だ!!
「ふははは! またしても俺の完全勝利! お前ら全員、ざまあ!! アイリスは俺のものだ!!」
俺は床で仰向けのまま冒険者ギルドの天井に向かって勝利を宣言する。
こうしてまたも完全勝利した俺だが、まだまだ勝利の軌跡は終わらない。
俺たちの冒険はこれからだ!!
第一部、完!
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。
※この作品はAIちゃんとの共同執筆となります。




