第1話:追放された役立たず
冒険者ギルドにある酒場の一角。
そこには、いま話題の新進気鋭の冒険者パーティ『なるおたち』の面々が揃っていた。
自ら前線に立ち仲間を鼓舞するリーダー、なるお。
盾として戦線を支えるパーティの要、戦士ボンズ。
その華やかな外見と同じく派手な攻撃魔法を操る、可憐のリリア。
無口で無表情、だが仕事はしっかりこなす支援魔法の名手、ユグド。
そして支援魔法と荷物持ちのハイブリッド、縁の下の力持ちことこの俺、ザコン。
二年もの歳月、苦楽を共にした、そんな最高にイカした5人である。
「ザコン、お前はクビだ。今この瞬間をもって、お前をパーティから追放する」
なぜか、俺は解雇を宣言されていた。
「おいおい、なるお。どうした? いきなりそれはないだろ。俺は自分の仕事を全うしてきたぜ? 俺の身体能力向上魔法なしで、この先やっていくつもりか?」
どこか頭でも打って混乱しているであろうなるおに対して、俺は極めて冷静に反論する。
「なにが身体能力向上魔法だ! 雀の涙ほどの効果じゃねーか! というか、ユグドと役割が被ってんだよ! あとこの前、お前が独断でユグドの支援魔法を上書きしたせいでパーティ全滅しかけたこと忘れてねーだろうな!?」
顔を真っ赤にしたなるおが、唾をまき散らす勢いで怒りまくしたてる。
「大体、あんた荷物持ちすらまともにできない役立たずじゃない。せっかく集めた宝を『重いから』って勝手に全部置いてきた時、本気で殺意わいたわよ! あんたのせいで報酬の取り分が減るなんてありえないのよ!」
顔だけはいいが性格最悪のリリアが、援護射撃かのようにここぞとばかりに追撃してきた。
「む。たしかに、ザコンは……正直に言うと、何も役に立っていない。むしろ、足手まとい……いや、なんでもない」
いや全部聞こえちゃってるよ、ボンズ……。お前、そんな風に思ってたのかよ。
もしかして、勝手に盾を改造しようとして壊した時のこと、まだ根に持ってる?
「……(もぐもぐ)」
もくもくと飯をほおばるユグド。
……こいつだけは何考えてるかわからないな。
こちらからアクションしないかぎり滅多に話すことはないし、俺の追放よりも飯が大事らしい。そっとしておこう。
「なるお! このパーティは俺の存在で、奇跡的なバランスをたもっているようなもんだろ! 考え直せ!」
俺は最後のチャンスを与えんとばかりに、最終確認としてなるおに手をさしのべる。
――こいつらには、……俺が必要だ。
「ゴフぉあっ!」
だが返ってきたのは、なるおの冷たい蹴りとリリアの攻撃魔法だった。
俺はモロにそれらを受け、椅子から転げ落ちる。
「熱っ、アちゃちゃ! おいリリア! 攻撃魔法は反則だろ! ああっ、服が焦げてる! 一張羅なのに!」
パーティメンバーたちは、床を転がる俺を冷たい目で見下ろしていた。
「二度とその面見せるな。行こうぜ、みんな」
「フン、せいせいしたわ! この役立たず! べーっ!」
「む。すまん、悪いがザコンはこれから先の戦いについていけそうもない。置いていく」
各々好き勝手に言葉を残し、去っていく。
俺は一人、酒場の冷たい床に取り残された。
「…………(もぐもぐもぐ。ズズーッ。)」
……いや、ユグドはまだ飯食ってたわ。育ち盛りか。
俺はパンパンとほこりを払いながら立ち上がる。
「ま、すぐに泣きついてくるだろ。たく、仕方のないやつらだ」
~それからしばらくして~
「……くそ。あいつら、マジで追放しやがった」
冒険者ギルドの酒場の隅で、安酒をあおりながら俺はぶつくさと毒づいていた。
『なるおたち』から追放されて数日、この俺がいなくなったら立ち行かないだろうと思っていたが、どうやらそんなことはないらしい。
風の噂では、俺が抜けた後のやつらは足枷が外れたとばかりに、破竹の勢いで名を挙げているとのことだ。
今や若手たちの中で出世頭として、街中から注目を集めている。
ミーハーどもにわーきゃー騒がれ、随分と羽振りもよいようだ。
普通ならここで『ザコンがいなくて困ってるから、頼む、戻ってきてくれ!』と土下座しに来るという激熱展開を期待するところだが、どうやらそうもいかないようだ。
俺がいなくても、あいつらは絶好調。
困るどころか、俺の存在など1ミリも思い出してすらいないだろう。それこそ道端に転がっている石ころ程度にしか思っていないに違いない。
『なるおたち』なんて、意味の分からないパーティ名をしているから、どうせ追加メンバーの補充もままならないだろう、という最後のアテも外れた。
俺の代わりには、普通に割と有能な回復魔法を使える神官が加入したらしい。
「あーあ。……これからどうすっかな」
そう天井を仰ぎぼやいた時、隣のテーブルから冒険者たちのひそひそ話が聞こえてくる。
『ちっ、なるおの野郎。最近うまくいってるからって、調子に乗りやがって。むかつくったらありゃしないぜ!』
『まったくだ、最近じゃあいつらのパーティ、目立ちすぎて色んなやつらに妬まれてるらしいぜ。そのうち厄介ごとに巻き込まれたりしてな』
……ほう。
俺は酒を飲む手を止め、考え込む。
なるほど、そういうことか。
”地味な縁の下の力持ち”すなわち”ストッパー役である俺”がパーティにいた頃は、あいつらは堅実に、平和に活動できていた。
だがしかし今、そんな重要な役目を担っていた俺がいなくなったことで、あいつらは己の強さを過信し力に溺れ、ブレーキの壊れた馬車のごとく暴走してしまっている。
結果として街中の冒険者から余計な嫉妬まで買うハメになっているというわけだ。
「……ふっ」
つまり。
あいつらは今、俺がいなくなった代償として安寧を失い、同業者である冒険者から目の敵にされるという最悪のデバフを食らっているわけだ。
成功という偽りの幻に踊らされて。
それに対して俺はどうだ?
パーティを追放されたおかげで、誰からも妬まれず、誰の恨みを買うこともなく、こうして平和に安酒を飲めている。
「…………やれやれ。世の中、うまくいくことばかりが、正解とは限らないってわけだ」
肩をすくめ両手をあげる。
気づけば、俺の口角はニチャァと吊り上がっていた。
不自由な成功より、身の丈に合った自由。
そう思えば、この安酒も悪くない。いやむしろ、これがいい。
あいつらは『栄光という名の茨の道』へ。
俺は『無名という名の自由』へ。
余計なプレッシャーや、面倒な期待を押し付けられない解放感。
この圧倒的な社会的生存戦略の差。
客観的に見て、俺のほうが遥かに穏やかな安寧を手に入れている。
「……つまり、これは……実質的に、俺の完全勝利じゃないか! ざまあ!」
俺の脳内で、ド派手な勝利のファンファーレが鳴り響く。
あいつらは今、嫉妬の炎に焼かれている。まさに大炎上状態。
俺はそれを、安全圏である外側から高みの見物。酒の肴がうまいうまい。
勝った。
圧倒的に、勝っている。
まさに確定的、約束された勝利である。
「さーて、と。敗北者たちのことは忘れて、次の職場でも探しに行きますかっと」
こうして見事なまでの精神的ざまぁを完遂し、気分を良くした俺は、晴れやかな足取りで酒場を後にするのだった。
ざまぁしていきます!(隔日投稿)
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※この作品はAIちゃんとの共同執筆となります。




