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転生した鬼は元クラスメイトを地獄へと誘う  作者: 月のウサギ
一章 復讐者の慟哭
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資金調達

 パリンッ!!


 宿に入った瞬間桶で食器を洗っていたスノーが皿を落とす音が聞こえる。


 まぁ、殆どこれに関しては仕方ないか。スノーは俺が鬼族である事を知っている訳だからな。


「え、エインさん……その子は……」

「……場の勢いで予定をすっ飛ばして買った。後悔も反省もしていない」


 背中に背負ったスフィアを指差しながら皿の破片を拾うという器用な事をするスノーに呆れながらスフィアを椅子に座らせる。


 奴隷市場から出て数分歩いたとき、本当に予想外な事が起こってしまった。


 スフィアが倒れたのだ。しかも、倒れた理由が過労でだ。


 基本的な情報しか取り揃えていないが、吸血鬼族は体力が著しく低いと言う情報はなかった。おおよそ、奴隷生活が長くろくに運動が出来なかったがための体力不足なのだろう。


 コンマ数秒で問題を理解した俺は倒れてしまったスフィアを背負い黒兎亭まで歩いてきたのだ。


 ―――この時、薄い生地越しに胸が当たっていたのは内緒にするつもりだ。ロリ体型で胸が真っ平らだったから油断していた。


「それで私に何か用でしょうか」

「あー……スフィアの服を見繕って貰いたい。俺はそう言った事が苦手だから」

「……何となく分かります」

「普通にヒドイな。……こう言うのは誰かに任せた方が気が楽だ」


 日光の入りかたを注意しながらマントを取りどういう状況かをスノーに理解させると用件を伝える。


 前世では爺さんらに負担を描けないために安値で買える無地のものばかり着て、今は適当な物ばかり買っていた。そのため、服選びに関しては壊滅的なのだ。


 そんな状況で素材がそこら辺の女性よりも良いスフィアの服を選べ?ムリムリ、絶対にムリ。それだったら知り合いの中で唯一の同性であるスノーに押しつ……任せる方が良い。


「分かりました。それは別に構わないですけど……鬼族なのに奴隷をよく買えましたね」

「仮面をつけてれば角をアクセサリー扱いが出来るし、冒険者だから仮面を付けても怪しまれないし裏側を見ることもない」

「確かにそうですが……私もバニーガールの服を着ようかな」

「止めとけ。絶対に止めとけ。ここは宿兼酒場だぞ」

「……確かにそうですね。風評被害は避けたいです」


 変な方向に思考が飛躍したスノーを連れ戻し辟易とする。


 この国では人族以外の他種族は差別や迫害の対象になっているが、その中に人族以外が奴隷の所有する事を禁止している。


 人族からしたら見下している他種族が一応同族である人族を奴隷として従えていると言う惨状を見過ごせないのだろう。


 自分達は好き勝手に俺らの権利を奪うのに俺らが人族の権利を奪うのはいけないとか、何甘ったれた事を言ってるんだとしか言えないが……元々、あいつらそう言った連中だった。


 人の権利と言う考えがこの世界にはない以上、前世以上の差別や迫害が起きる『土台』は作られているのだ。


 それにしても、スノー。スタイル抜群のスノーがバニーガールの衣装なんて着たらどうなるか、予想ができる。予想と言うか、ほぼ確信に等しい。知り合いが事件に巻き込まれかねないのなら止めるべきだろう。


「起きたらスフィアに食事を取らせてやってくれ。それと、シャワーにも浴びさせるようにしてくれ」

「え……ど、どこに行くんですか!?」

「ダンジョン。……出費が激しくなりそうだから少しでも金を入手しなければならない」

「分かりました……あの、貴方の事は」

「実物を見せた方が早いが……そこら辺はお前の独断で決めてもらって構わない」

「……良いんですか?」

「隠すのは無理だからな」


 スノーにスフィアの世話を押し付けると部屋に戻り整備された道具を取って宿を出る。


 休日だったのに……まぁ、体を動かしたかったし、ちょうど良いか。



 パァンと言う子気味の良い音でオークの一体の顔面を潰し、オークたちが振り返る間も無く手刀でオークたちを切り裂く。


 ダンジョンに入り十一階層に留まって一時間程、目についた魔物を狩って狩って狩りまくった。中層程度でもそれなりの量を狩ればそれなりの量の魔石とドロップアイテムになる。


 ……そう言えば、魔石って何に使ってるのだろうか。そこら辺は今度スノーに聞くか。


「さて……」


 ダンジョンに入る前に買ったサンドイッチを食べ水筒の水で流し込み置いておいたリュックを背負う。


 もう少しバックに空きがあるし狩るか。


「嫌!離して!離して!!」

「誰か!誰か助けてぇ!!」

「……おん?」


 魔物を探して階層を歩いていると少女と思われる高い声の悲鳴が聞こえそちらを向く。


 おおよそ、魔物にでも襲われて負けたか。まあ、同業者が困ったらお互い様、聞いてしまった以上助けに行くか。


「邪魔だ」


 通路を疾走しながら移動の邪魔になる魔物を蹴散らしホブゴブリンの頭を足場にして跳躍、二人の少女を担いでいたオークの顔面を蹴り飛ばす。


『ブモォ!?』


 蹴り飛ばされたオークは突然の事に驚き少女たちから手を離し、破れた服を掴み少女たちを引き寄せる。


「あ、貴方は!?」

「だ、誰ですか貴方は!?」

「同業者。……ここからは喋るな、舌を噛むぞ」

『『『ギギギギギギギギギギギギッ!!』』』

『『『ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』』』


 地面に着地し脇に抱えた少女たちに少し警告をした瞬間襲いかかってきたホブゴブリンやオークに突貫する。


 少女たちが邪魔で手刀が使えないが関係ない。せいぜい武器が二つ減った程度でしかない。


「失せろ」


 愚鈍な動きで襲ってくるホブゴブリンやオークたちを少女たちを抱えたまま攻撃を避け当たりそうな攻撃を足で逸らし蹴りだけで蹂躙する。


 全体的な筋肉の量だけなら腕よりも脚の方が多い。狼の獣人族や兎の獣人族は腕より脚の方が発達しているため蹴りが主体の戦闘方法をする事もある程だ。


 その二つの種族よりは劣るものの鬼族は極めて高い脚力を保有している。


 そのため、単純な威力だけなら拳や手刀よりも強い。単純に隙が大きくなりやすく急所を一撃で潰して殺すと言う方法が出来ないから主体にしなかっただけだ。


「さて、終わったな」

「「オロロロロロロロロロロロロロ」」


 ものの数分でホブゴブリンとオークたちを一掃し二人を離すと二人は急いで物の陰に隠れて吐く。


 まあ、二人は人族だし鬼族の身体能力と反射神経で行われる三次元をフル活用した超高速戦闘で三半規管とか揺さぶられたのだろう。


 俺の三次元をフル活用した動きに必須な鈍化した世界の正体は極めて単純だが、それ故に鬼族以外では捉えることすら難しい。そんな環境にいきなり放り込まれたんだ、吐くのは無理はない。


「はぁ……はぁ……!貴方、もう少しゆっくり闘えないの!?」

「いや、あの量をお前ら抱えた状態でやるにはそれなりの速度が必要になるのだが」

「それでも!あの変態じみた動きは何なの!?」

「慣れれば誰だってあれくらい出来るぞ?」

「身体能力強化の魔法を使っても普通無理よ!」

「空間把握と速度調整、相手の攻撃の予測、状況の把握、攻撃の知識、その他戦闘に必須な行動をひたすら反復練習をやればこれくらい簡単に出来るようになる。事実、俺がいた村だと大体の人間が出来てたぞ?」

「何よその人外魔境は!?」


 吐き終わってギャンギャンと吠えてくる金髪の少女を引き離しながら質問に答える。


 それにしても……まぁ、質が良さそうな剣を持ってるな。壊れた鎧もそれなりに品質が良さそうだし、どこかのお嬢様か何かか?


「お、お嬢様!お怒りをお納め下さい!」

「何よエミリア!この不敬な男に貴方も吐かされたのよ、何か文句の一つでも言いなさい!」

「無茶苦茶ですよお嬢様!このお方は私たちを助けてくれたのですよ!?」

「それでもよ!」

「あー……口喧嘩しているところ悪いが……そんなに騒ぐと」

『『『グルルルルルルルルルルルル』』』

「魔物を引き寄せるぞ」


 メイド服に鎧を合体させた服を着ているエミリアと少女が言い争っていると奥の道から『シルバーウルフ』の群れがやってくる。


 シルバーウルフは中層で頻繁に出現する魔物で五匹から十匹の群れを形成する銀色の毛皮が特徴の狼の魔物だ。動物型の魔物のためゴブリンよりも知能は低いがゴブリンやオーク以上に身体能力が高く連携が上手い。


 五月蝿く騒ぐと魔物を誘き寄せやすいと言う初心者でも分かる技術を何故知らないんだ?


「くっ……!いけかしら、エミリア!」

「お嬢様の命ならいつでも!」

「……いや、その心配は無さそうだ」

「えっ……!?」


 剣を抜きシルバーウルフに向かって突貫しそうな二人を制止させる。


 この気配……あいつらか。


「【雷よ、雨となり降り注げ―――サンダーレイ】!」

「おおおおおおおおおおおおおおおお!」

「はあああああああああああああああ!」

『『『キャイン!?』』』


 雷の雨が降り注ぎ猫の獣人族の青年と人族の青年が群れに切りかかり驚くシルバーウルフたちをものの数秒で殲滅する。


 見事な奇襲攻撃だな。それに、あの連携の練度のかなり良い。


「あれ、エインか?」

「久しぶりだな、キース」


 殲滅し返り血を浴びたキースに話しかけると柔和な笑顔で近づいてくる。


 殺気を向いている訳ではないし警戒しなくて良いか。


「悲鳴が聞こえたから来たけど……君の後ろにいる人たちが音源かい?」

「まぁ、そうだな」

「お二人さん、事情を説明してくれないかしら」

「分かったわ。エミリア、お願いね」

「畏まりました、お嬢様」


 妖艶な魔法使いが二人に話しかけるとエミリアが丁寧に事情を説明する。


 この二人は昨日CからBランクに上がり装備を整えた後、このダンジョンの中層にアタックした。だが、いきなりオークとホブゴブリンの群れと遭遇し抵抗したものの倒され、巣に連れ帰られそうになったらしい。


 そこに俺が登場し一掃したらしい。……流石に吐いた事は言わなかったが。


 まぁ、時系列やこいつらの実力から考えてそれくらいが納得がいく。嘘をついてる様子もないしな。


「そうか……」

「そう言えば、何故お前らはこの階層にいるんだ?」

「そりゃあ俺らはギルドの依頼でオークの巣の潰すためにだよ」

「……なる程な。あれはそう言うことか」


 オークの巣は五、六匹の群れが最低でも十個は共同で作りあげそこでオークたちは連れてきた女たちを汚すのだ。


 しかも、そこにホブゴブリンまで混ざってくるとさらに規模は大きくなりAランクの冒険者に頼まざるを終えなくなる。


 俺にはそんな話は来てないが……まあ、冒険者になってまだ一週間なのだ経験量だとこいつらより劣るから仕方ないか。


「そうだ、エインが暇なら僕らの手伝いをしてくれないかな?Aランクはなるべく多くいてくれた方が生存率が上がるからさ」

「別に構わないが……こいつらはどうするんだ?」

「……仕方ない、連れていきましょう。防具がそんなにボロボロだと」

「まぁ、そうだな。お二人はどうするんだ?」

「行くに決まってるでしょ!貴族の矜持《ノブレス・オブリージュ》、民を助けるのは当たり前よ」

「お嬢様が行くのなら私も同行させて貰います」


 二人がついてくる事が決定した時点で俺らは話を纏め巣のある方に向かう。


 やれやれ……スフィアのための必要経費のための資金集めが何でこんな事になってしまったのだろうか。さっさと潰して帰ろう


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