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第43話 それぞれの道➀

 昭和五十六年二月


 三学期に入り市民会館での演劇も無事に終わりノブ達は安堵していた。

 因みに演劇に使われた脚本はあの田中が書いたSFものである。

 

 一度落選した自分の脚本を彼は必死で書き直し、そして佐藤次期部長が「なんか悔しいけど今回は田中君の脚本でやってみよう」ということになったのだ。

 

 結局、田中もわがままだけでなく努力家で負けず嫌いで、そして多少の才能がある少年であったということだ。


 ノブも脚本は書いたが今回は自分自身でも分かるくらい面白くない内容だったので田中の脚本が決まった時には心の中で喜んだ。ましてあの田中がこれで少しは大人しくなると思うと尚更であった。



 五年生の佐藤や福田達は来月の卒業式に向けての練習があり忙しくしているが、ノブ達四年生は卒業式に出れないので授業が終わると演劇部もしばらく休みだという事で暇を持て余していた。


 ノブ、高山、森重、大石、村瀬、田尾、浜口、石田、岸本、寿の十名はグランド端にある大きなジャングルジムにそれぞれ好きな位置に腰をかけていた。


「ところでみんな五年になったら何部に入るの?」


 珍しく大人しい浜口が最初に口を開いた。


「えっ? ああ、俺は勿論、卓球部に入るぞ!! そして俺のサウスポーを唸らせて即、レギュラーになって中学に行っても卓球をやるつもりだ!!」


 森重が自信たっぷりに言った。


「俺も森重と一緒に卓球部に入るよ。こないだから市民体育館に行って二人で練習してるんだけど、やっぱり卓球楽しいよ。それに俺は団体競技が苦手だしね......」


 村瀬が少し照れくさそうに話した。


「村瀬はどんなスポーツをやっても凄いのに勿体なくない?」


 浜口が聞き返すと村瀬は


「凄くはないよ。ただ部活するなら楽しくやりたいじゃん!!」


「そうよね...。私も部活は楽しくやりたいわ。だから私はお料理が好きだし五年生になっても家庭課部に残るつもりよ。そしてたくさん料理の勉強をして将来はお母さんみたいな女性になりたいの......」


 そう寿が笑顔で話した。


「久子も足が速いから五年生になったら運動部に入ると思ってたわ」


 岸本が少し驚いた口調で言うと寿が


「でも運動が嫌いなわけじゃないから中学生になったら運動部に入るかもよ。お料理の勉強は家でもできるから......」


「そうよね。久子なら両立できると思うし、美人だし良いお嫁さんにきっとなれるよっ!!」


 岸本がそう言うと続けて今度は自分の事を話し出した。


「私は五、六年生になっても演劇を続けるわ。山田部長とまではいかないけど、あんな堂々とした演技をやれるようになりたいなぁ...。ねっ? 浩美っ??」


「えっ?」


 石田は急に岸本に振られて戸惑ったが、ここがチャンスだと思い岸本に隠していた自分の気持ちを話し出した。


「順子ごめん。実は私......、五年生になったらバスケ部に入ろうと思ってるの......」


「え―――っ!? 嘘ーっ!?」


 岸本が目を大きくして驚いた。


「ごめんね、ずっと黙ってて......。私、中学生になったらバレー部に入りたいの。でもうちの小学校はバレー部がないし......。だから前に水井君には言ったんだけど、とりあえずバスケ部で体力とジャンプ力をつけようかなって思っていて......。順子、今まで黙っててほんと、ごめんね......」


「ノブ知ってたの?」


 高山が小声でノブに聞いてきた。


「あ...、うん......」


 一瞬沈黙していた岸本だったが笑顔で石田に話し出す。


「そっか...。浩美はバレーボールが好きだったんだ。私、全然知らなかったわ......。でも浩美ならバレーでもバスケでも活躍できると思う!! 私、応援するからっ!! でもたまには私の演技の練習相手にはなってよねっ!?」


「うっ...うん、わかった!! いつでも言ってちょうだいっ!!」


 石田は少し涙目になりながらも満面の笑みで岸本に抱き着いた。


 そして浜口が弱々しい声で岸本に話しかけた。


「あ...あの~...。岸本さん...。ぼ...僕も演劇部に残るつもりだから...。よ...よろしくね......」


「えっ!? ほんとに!? うわーっ嬉しいっ!! 浜口君、有難う!! 凄く助かるわ~っ!! 私、佐藤新部長も大好きだから私だけでもあの田中のわがままから守ってあげたいと思ってたの。でも浜口君がいてくれたら仲間がいてとっても助かるわっ!!」


「そ...そんなぁ......。ぼ...僕はそんなに役には立たないと思うけど......。それに田中君はちょっと苦手だしさ......」


「あの田中を苦手じゃない奴なんていないさっ!!」


 ノブがそう言うと全員大笑いをした。


「ところでノブと高山と大石は前から言ってた通りバスケ部に入るんだよな?」


 森重が三人に聞いてきた。


「あぁ、勿論だ!! 俺はバスケ部に入るぜ。そして五年生からレギュラーになってやる!!」


 大石が森重と同じように自信たっぷりに言った。


 大石には高校生と中学生の兄がいる。二人ともバスケ部に所属しており、いずれも身長は低いが名ガードでキャプテンをやっている。そういう環境で育っている大石なので彼はバスケ部に入る前から当時では使われていない言葉、バスケがうまいDNAが自分にも流れていると信じいるのである。


 森重が今度はノブと高山に再度聞いた。


「大石に聞く必要なかったな。で、ノブと高山の演劇部二人はどうすんだ?」


「そっ...そりゃぁ、俺もバスケ部に入るさ!! 前にも言ったけど俺は背は低いけどスピードを生かしてお父さんみたいにガードのポジションで活躍したいんだ。演劇部もとても楽しかったし少し未練もあるけど、初めから決めていた通り俺はバスケ部に入るよ!!」


 ノブが力強い声で言った。


「そうなんだ。水井君のお父さんもバスケやってたんだぁ......」


 石田が嬉しそうな顔で言った。


「水井君も足が速いから結構やれるんじゃないかな」


 岸本が納得した表情でそう言った。


「水井君が演劇部にいなくなるのは寂しいけど......、でもやっぱりやりたい事をするほうがいいよね......」


 浜口は半分寂しい、半分笑顔でそう言った。


「水井君が体育館の中をちょこまか動き回ってる姿が目に浮かぶなぁ」


 寿がそう言うとみんな納得した表情でクスクス笑いあった。


 ノブが照れ臭そうにしていると先ほどから一人黙っていた高山が重い口を開いた。


「あのさノブ......。俺ずっと考えてたんだけど、俺あと一年、演劇部に残ろうかと思ってるんだ......」

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