第20話 山田香織部長と握手
ノブは山口先生が書いた脚本を読んでいた。
そして自分が演じる鳥の王の場面のある一部分で目が留まった。
その留まったところにはこう書いてある。
獣の王と鳥の王は和解をし、がっちり『握手』をする
えっ?
握手!? やっ...山田部長と握手だってぇぇ!?
小学四年生の男子であり人一倍恥ずかしがり屋のノブにとっては女子と握手するのはとても恥ずかしい事であった。
ましてや憧れの山田部長と握手をするとなると尚更、恥ずかし過ぎて想像しただけで心臓がドキドキする。
(今の時代の小学生は一年生から男女合同で色々な事を行うので自然と、そういった男女で握手するとか手をつないで何かするという免疫がついているように思われるが昔の小学生は男女合同で何かを行うという事が少なく、ノブみたいな小学生は多かったように思う)
ノブは少しうなだれた。
「う――――――ん......」
そのノブに山田が声をかけてきた。
「ノブ君、どうしたの? 大丈夫?」
「あっ! いや......、だ...大丈夫ですよ......」
「ほんとに?」
「いや、ほんとに大丈夫です......」
ノブは作り笑いをしながら山田部長に答えると、直ぐに山田部長が
「私は今回の文化祭での演劇が小学生最後の舞台になるから悔いのないように頑張ろうと思っているの。前のドジな幽霊での悔しさも吹き飛ぶくらいにね......」
山田は少しまじめな表情でノブに言うと続けてこう言った。
「だからノブ君、お互いに悔いの無いお芝居しましょうね?」
「あっ、はい......。俺も頑張ります......」
ノブがそう返事すると山田が笑顔で手をノブの前に差し出してきた。
「えっ?」
「握手......。お互いに頑張りましょうという意味の握手よ......」
「えっ!? で...でも......。いっ...今、俺と握手するんですか!?」
「そうよ。何かおかしいかな?」
「い...いえ、お...おかしくはないんですけど......」
「それじゃ握手っ!! ノブ君、早く手を出して!! はいっ!!」
山田は大きな声で微笑みながら再び手を差し出してきた。
ノブはもう抵抗は無理だな。と観念し、心臓をドキドキさせながら恐る恐る山田に手を差し出しだした。
そして二人はがっちとり握手をする。
山田はノブの顔をじっと見つめている。
それに対し、ノブは恥ずかしさのあまり斜め下の方を向いている。
二人のやり取りをはたから見ていた高田は小声で呟く。
「なんかあの二人、とてもイチャイチャしていない? 練習中なのにさ......」
それに対し大浜が高田にすかさずこう言った。
「アレ? 瑞穂、もしかしてヤキモチを妬いてるのかしら?」
「バッ...バカな事を言わないでよ!! 何で私があの二人にヤキモチを妬かないといけないのよ!?」
高田は少し赤い顔をしながら大浜に言い返した。
「フフフ......。冗談よ冗談......。本当にイチャイチャしているってのはあの二人の事を言うんじゃない?」
大浜はそういうとある二人の方を指さした。
差された相手は四年生の木場と夏野......
その二人はノブ達の前で『ヒツジ役』の木場と『ヤギ役』の夏野がお互いに周りの目など気にせず、普通に手を繋ぎながら仲良くメェメェ言い合っていた。
「この違いは一体なんなんだっ!?」
ノブは心の中でこう叫ぶのであった。




