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クロ猫クロスのクロニクル  作者: ほしぎほし
12/24

ドワーフと新しい戦力

「まず君たちには、エルフ君の希望通りにドワーフの街に向かってほしい」


 水たまりの端っこに置いてあった木の塊をこちらに近づけながら元スライムは言う。

 小さい体では大変そうだったからか毛むくじゃらもそれを手伝っていた。


「やはり、こいつの武器調達か」

「あぁ。聞いたところ弓矢も力が無くて使えないのだろう?筋肉を付けられればいいのだが」

「申し訳ないけど、あたし筋肉つけれないみたいで、鍛えようとするとすぐに寝込んじゃうの」


 食べ物で何とかしようとしたけど吐き出したり腹痛に襲われたわ。

 と、にゃが耳は前足を軽く挙げて見せる。


「最近ドワーフの中で新しい武器を作りだした奴がいるそうでな。そいつの所に行けば武器はなんとかなるだろう」

「……元魔王さんよ、スライムの姿で情報収集していたのか?」

「あぁ。息子に魔力を封じられてからはずっとな。人型のほうが楽なんだが、息子の配下が余を探し出して殺そうとしているらしくて、一番弱いスライムの姿になっていた。まぁ、おかげで余の信頼できる奴らとも合流できない状況だった」


 流石にあいつらも余がスライムになってるとは思わないだろうよ。

 そう笑いにゃがら言う元スライムに毛むくじゃらも少し呆れたように返事をしている。

 ふと、元スライムは毛むくじゃらを見た。


「そういえば、今まで旅してきた中で猫と人間が混ざったような子はいなかったか?」


 ん?おいら見たぞ。


 毛むくじゃらが首を横に振る中でおいらがそう言うと、元スライムは勢いよくおいらを見る。


「どこにおった!?」


 トンネル抜けてすぐの街。まおさまってのを探してると言ってたけど、お前の事か?


「そうだ、自分の事をマオと言っていただろう?」


 おう。言ってた。


「よかった、マオも無事だったのだな」


 元スライムはほっと息を吐き出す。

 そんなに心配してたのか。


「マオを逃がすのに必死だったからな。あの子は余が創り出した子だから息子が手を出さないとは限らないしな」

「……まて元魔王。猫と人間が混ざった子って、そんな種族いないだろう」

「あぁ。だから創り出した」


 元スライムの言葉に毛むくじゃらは固まっている。

 話を黙って聞いていた嬢ちゃんはにゃが耳を見る。


「猫と人間が混ざった子、とは?」

「あたしも知らないわね。有翼族と似たようなものかしら?」

「うむ。人狼族とか他の動物が人型に近い種族はいる中で猫はいなかったからな。創り出してみたのだ。これが思ったより可愛くて可愛くて」

「おい待て元魔王。モンスターをそんな簡単に作り出せるのか」

「魔王だからな」


 なんだか偉そうに言う元スライムに、頭を抱えている毛むくじゃら。

 最近の毛むくじゃらは見ていて面白いにゃ。


 木の塊を移動し終わったのか毛むくじゃらがその塊に乗る。

 その後をにゃが耳も追った。


「ドワーフの街へは船で移動した方が楽だろう。余はそこまで案内できないが、まっすぐいけばいいから迷う事も無い」

「ネブラ様はまた別の所に行くのですか?」


 嬢ちゃんの問いに元スライムは頷く。


「君たちに伝えたい事は伝えたからな。余の仲間と合流しにいく。まぁ、また会えることはあるだろうから安心してくれ」


 そう言って元スライムはまたスライムの姿になってその場からいなくなった。


 まぁ、また会えるって言ってたから会えるのだろうにゃ。その時にはおいら達も鍛えられているのだろう。


 ということで、おいら達は大きな水たまりを越え、反対側に辿り着いた。

 乗ってきた木の塊は水に流されにゃいようにしてからおいら達は水たまりをはにゃれた。


 水たまりを越えてから、嬢ちゃんよりも小さい人間が多くにゃってきた。

 毛むくじゃらに聞いたところ、そいつらがドワーフという種族らしい。

 雄は毛むくじゃらよりも毛むくじゃらにゃ奴が多くて、雌は雄よりは毛は少にゃいけれど、おいら程じゃないけど毛深い印象がある。

 色んにゃ奴らがいてにゃかにゃか楽しいものだ。


 そうしている内に目的地らしい街に着いた。

 街に着いて真っ先においらが感じたのは、臭いだった。

 嬢ちゃんに会う前もたまに嗅いだことがある臭い。にゃかにゃかはにゃを捻じ曲げる臭いだ。


「リュカ、この臭いなんでしょう」


 嬢ちゃんにも感じるのか、耐えきれにゃかった嬢ちゃんは前足ではにゃを隠す。

 毛むくじゃらは気にした様子はにゃい。


「石油、ってやつだったか。人間のほうでは出回らない資源らしい。少しすれば慣れるだろうから我慢してくれ」

「……わかりました」


 嬢ちゃんの元気のにゃい声は心配ににゃるぜ。

 おい毛むくじゃら、早く用事すませようぜ。


 おいらの言葉に毛むくじゃらはにゃにも答えにゃい。

 嬢ちゃんがお前が勇者だってわかってるけど、動物とはにゃせるのはまだ秘密にしたいってか。

 他のおいらとはにゃせる奴は気にしてる様子はにゃいのに。


「リュカ、ネブラ様が言ってたドワーフの居場所は聞いてるの?」

「他のドワーフに聞けばすぐにわかるって言われたが、どうだろうな」


 にゃが耳はふうんと頷いてからちょうど傍を歩いていたドワーフに声を掛けた。


「ごめんなさい、人を探しているのだけれどいいかしら?最近変わった武器を作ったっていうドワーフがいるって聞いたのだけれど」

「あぁ、ジェマのことか」


 ドワーフはすぐにわかったらしく、目の前にある山の方を指さす。


「ここを真っ直ぐ行った鉱山の入り口の近くにある家にジェマはいるよ。大体家に籠っているから、今から行っても会えるだろうよ」

「そうなの、ありがとう」

「しっかし、ジェマに会いに行くとか物好きだな」


 そう言ってドワーフは歩いていった。

 物好き、ねぇ?


「そのジェマって子、変わり者かしら?」

「新しいものを生み出す奴はなんだかんだ変わり者が多いからな。魔女とか、元魔王とか」


 毛むくじゃらの言葉においら達は思わずうにゃづいた。


 お喋りはこの辺にして、おいら達はドワーフに教えてもらった方向へ歩き出した。

 たまにでっかいオーク(毛むくじゃらに教えてもらった)がいるが、ほとんどは小さにゃドワーフばかりで、背がでけぇ毛むくじゃらとにゃが耳はかにゃり目立っている。

 まぁ、目立っているおかげで色々美味しいものを貰っているから嬢ちゃんはご機嫌だ。おいらとしてもすごく嬉しい。

 歩いている途中でもドワーフに道を聞き、にゃんとか目的地に到着した。


 それは鉱山てやつのすぐとにゃりにあった。

 見た事にゃい物を持ったドワーフが出入りしている穴の横にその建物はあった。

 思ったよりも小さい建物だ。おいらにゃん匹分が入るだろうか。

 にゃが耳は気にした様子もにゃくその建物の入り口にあるドアを叩く。

 しばらく間が空いてから、ドアが開かれた。


「お待たせしました、どちら様ですか?」


 現れたのは雌のドワーフだ。やっぱり嬢ちゃんよりも小さい。


「ジェマって子を探してきたんだけど、ここの家で間違いないかしら?」

「ネブラ、という魔族の紹介で来たんだが」


 にゃが耳と毛むくじゃらの言葉にドワーフはにゃん度かうにゃづく。


「ネブラ様の。わかりました、今ジェマ様をお呼びします」


 こいつが探してたやつではにゃいようだ。


 おいら達は一先ず建物のにゃかに入れてもらい、お茶を出される。それからドワーフは壁にある穴に口を近づけた。


「ジェマ様、お客様です。ネブラ様の紹介だそうで」

「今行く」


 穴から別の奴の声がした。

 その穴の中にいるのか?


「そのパイプを使えば会話できるの?」

「えぇ、ジェマ様は地下工房に籠りがちで、地下と地上にこのパイプを通して会話できるようにしています」


 興味深そうに見ているにゃが耳の問いにドワーフはそう答えた。

 はにゃれてても会話が出来るのは便利そうだ。まぁ、おいらが会話したい嬢ちゃんとはにゃれることはにゃいだろうから必要はにゃい。

 ん?それ以前に会話できにゃいだろうって?

 うるせぇわかってる。


 ドワーフと会話している間に、やっと呼ばれた奴が現れたようだ。


「お待たせしてわりぃ。おらがジェマだ」


 その声に全員が声がした方を見て、全員が固まった。

 そこにいたのは丸い毛の塊だったのだ。

 先の方がにゃんだか縮れてる丸い毛の塊。いや、おいらも毛の塊だけれど、ここまで毛づくろいしてにゃいのは初めて見るぞ。


 そんなおいら達だったが、最初に動いたのはドワーフだった。

 すぐにその毛玉を掴んで部屋から出ていく。

 しばらく金属音とか水音とかが聞こえてきて大分待ってからドワーフは戻ってきた。


「大変お見苦しいものを……、用意がやっとできました」

「いえ、気にしないで」


 にゃが耳が笑いにゃがら言葉を返す。

 そんにゃドワーフの後ろから普通のドワーフが現れた。

 毛の色を見る限り先程の毛の塊だったのだろう。今は綺麗に剃られたようで、見た目は人間とほぼおにゃじだ。

 ただ、その顔がすごく不機嫌そうではある。


「おらがジェマだ。ネブラ様の紹介と聞いたが、おめぇら何もんだ?」


 不機嫌を隠す様子もにゃい声に毛むくじゃらはにゃにか言いたげではあったが、先に嬢ちゃんが動いた。


「私はライラ。こちらがリュカで、エルフがアレックス。そしてこの子は私の召喚獣のクロスです。私達はネブラ様の助言で、ジェマさんの武器に興味を持ちこちらに参りました。ジェマさんが創り出したという武器を見せて頂けないでしょうか?」

「……あんたが使うのけ?」

「いえ、こちらのアレックスの武器になればと思っております」


 にゃまえを呼ばれたにゃが耳は頭を軽く下げた。にゃが耳を上から下まで見た毛の塊はふんっとはにゃをにゃらした。


「エルフは弓矢と魔法を使うと聞いどるが、違うのけ」

「あたしは残念ながら弓矢を使える筋力がないのよ」


 にゃが耳の言葉に毛の塊は少し目を閉じ、にゃにか考えてから大きくうにゃづいた。


「使えるかどうかはわがらんが、こっちゃこ。とりあえず触ってもらうけ」


 そう言って毛の塊は部屋の端に移動する。おいら達もそちらへ向かえば、下に向かって穴が開いていた。

 薄暗いにゃかおいら達は段差を降りて下に歩いていく。するとそこはすごく広い部屋だった。

 広いのだが、にゃんかいろんにゃ物が転がっている。足の踏み場がにゃいって奴だろう。

 嬢ちゃん達はにゃんとか後ろ足をスペースに置いてるが、おいらはどうにもできにゃくて仕方にゃく毛むくじゃらの肩に飛び乗った。

 そんにゃおいら達を他所に、毛の塊はひょいひょいとにゃれた様子で足を運び、とある物を持ってこちらに戻ってきた。


「ほれ。これなんだが、使えそうか?」


 そう言って持ってきたのは細にゃがいものだった。パッと見れば木の枝だろうかと思える。


「どうやって使うの?」

「おら達はそんな魔力がないから、火薬をつかうんだが……」


 そう言いにゃがら毛の塊はにゃれたように細にゃがいものににゃにかしていく。おいらにはにゃにをしているのかよくわからにゃい。

 そのにゃにかが終わったのか、毛の塊は細にゃがいものを持ちあげる。そしておいら達とは反対の壁を向くと、ものすごい音が響いた。


 にゃんだこの音。聞いた事がにゃい。耳がキンキンする。


 嬢ちゃんも毛むくじゃらも突然の音に驚いてしばらく耳を塞いでいた。にゃが耳も耳を抑えていたが、すぐに毛の塊に近づいていく。


「火薬を爆発させて撃ち出しているのね」

「お、わがんのか?」

「音と臭いでね。でもどういう仕組みかはわからないわ。ちなみにこれ重い?」

「改良すれば軽くなるとは思うが、こんぐらいの重さだと思っとけ。鉄でできてるからさらに軽くするには技術がたりねーべ」

「なる程ね。火薬じゃなくて魔法でもいけるかしら?風で押し出すとか」

「出来るんじゃねーかとは思ってるけ。どだ?使ってみるけ?」

「そうね」


 そう言ってにゃが耳はこちらを見た。


「うまくつかえるようになるかはわからないけれど、ここでしばらくこの武器に慣れてみるわ。それでいいかしらジェマ」

「おう。使ってくれるならがっつりレクチャーするし、使いやすいように改造してやるけ」


 二人の言葉に嬢ちゃんと毛むくじゃらは顔を見合わせる。

 にゃが耳の武器がにゃんとかにゃるようにゃら、おいら達が次に行くところは元スライムに聞いている。


「では、ジェマさん。もう一つお願いがあるんですが」

「ん?なにけ」

「賢者の街へ、行かせてほしいのです」


 それは、これからおいら達がにゃがく過ごすことににゃる街だ。

ステータス紹介


名前:ネブラ・エルルケーニヒ・カイザーナハト

種族:魔族

性別:♂

年齢:62歳

容姿:紫煙の長髪 (幼年の姿だと短髪)

  黒目の中に朱色の瞳。瞳孔は猫のように縦長。

 

元魔王様であるが、人間と手を取り合う世界を望んでいた。女神とは仲が良い。

だが、息子と意見が食い違い、反対派の魔族と結託した息子により魔王の座を奪われた。

魔王に選ばれるほど強い人だけれど隙を突かれて息子に魔力を封じられ、身を隠すためにスライムの姿になり逃げていた。

猫が好きでクロスの事も気に入っている。自分が創り出した猫人に対してもそんな対応だったらしい。

勇者と敵対関係は困ってはいたが、城まで来たらとりあえず話し合おう。ついでに仲良くできたらいいなと楽しみにはしていた。なので勇者が勇者をやめた時は嬉しいような悲しいような複雑な気分だった。

名前は威厳が欲しくて単語を合わせて長くしてみました。

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